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平成17年3月14日
《ノート試乗レポート》
発売開始から1ヶ月強が経過し、街中でも徐々にその姿を見かけるようになったノート。すれ違い際に視線を移すと、意外なほど大きく見えるデザインはしっかりとその存在をアピールしているが、果たして毎日の相棒としての走行性能は如何なるものなのか? 主力車種一新を図った日産の新型車発表ラッシュのラストを努めたコンパクトカーの走りをチェックしてきました。
○弱点の無いことが弱点か……
試乗車は15S Vパッケージで132.3万円(オプション別)。
山崎(以下:山) 率直な感想なんですけど、日産でノートの広報車を借りて駐車場を出るまでの2、3分の間に、なんだか毎日乗ってる「自分のクルマみたい」な感覚になりました。とにかく乗り易いんです。
国沢(以下:国) 運転席からの視界や、ステアリングを握った時の姿勢が自然と身体に馴染むから誰が乗ってもそう感じると思う。これは、幅広いユーザー層をカバーしなくてはならないこのクラスのクルマにとって絶対に抑えておかなきゃいけない部分。シート形状など少々女性ユーザーを意識し過ぎているような部分もあるけれど、幅広く受け入れられるという面でノートを評価すれば、価格とデザインさえ受け入れられれば全く問題なしって感じ。もちろん、運転し易いってことは疲労感の軽減にも繋がる。
山 だからと言っては何なんですが、運転している間ず〜っとその感覚のままなんですよね。「エモーショナルな雰囲気に欠ける」なんて表現するとスポーツカーじゃないだろ! って意見が飛んできそうなんですけど、一般道だけでなく高速道路やワインディングロードのような走行条件でもフィーリングに色気がないんです。
国 その印象は間違ってないと思う。確かに日産は低迷していた時期に比べてだいぶ活性化している。でも、ちょっと良い子になり過ぎてる感じ。トータル的には良い方向に向かっていて決して悪くはないんだけれど、元気な日産車のイメージを持っている人にとっては少々物足りない感じがするかも知れない。
山 きっと始めてのマイカーがノートだという人には大満足だと思います。ただ、ある程度クルマを運転することの楽しみを知っている人にしてみると、ひたすら素直で乗り易いだけで何か一味足りない気分になるような……。
国 その「素直さ」こそがノート最大の利点だと思う。単純にクルマとしてのまとまりを考えればなかなか高レベルなところにあるよ。だからこそ今後の課題はどう「コク」を出していけるかということ。優等生だけどドライな人間よりも、表情豊かで感性鋭い人の方が付き合っていて楽しいでしょ。
○パワー感のある動力性能
インテークの取り回しなどがティーダと若干異なる。109馬力&15.1kgmを発生。
山 「走らないクルマはつまらない」という開発者の考えから、ノートは敢えて1.5リッターのみのエンジン設定らしいですが、実際のところ今の日産には1.5リッター以下に最適なスペックのエンジンがないということもあると思います。そもそもノートのベースは新開発のHR15DEエンジンを搭載することを前提に開発されたティーダですから、マーチやキューブが積む形式の全く異なる小排気量エンジンを採用するための設計はなされていません。ただ、そうした割り切りもコストダウンに繋がり、1.5リッター(126万円から)でも他社の1.3リッターモデル並(フィットの1.5リッターは142.8万円から)の価格に抑えられたと言えます。
国 ティーダより心なしかパワー感があるような気がする。車重は30kgしか軽くないのに、ノートの方がアクセルのツキがいい。低い回転域でもトルクフルだし、フルスロットルまで踏んだ時のレスポンスとスピードの伸びにも不満無いよ。まあ、相変わらず4000回転を超えたところからの音や振動の大きさは褒められないけど。
山 でも、アクセルを一気に深く踏みこんだ時に体感としてパワー感が盛り上がってくるのは4000回転から上ですよね。CVTとのマッチングもありますが、伸びのある加速に切り替わるのは4000回転辺りからです。せっかく「おっ!(オドロクベキチカラと言うほどではないが)」ってくらいパワー感があるのに音や振動が目立ってきちゃうのはちょっともったいない感じです。
国 そういったところも含めてドライバーの高揚感を盛り上げるような味付けが欲しいんだよ。きちんと進化させれば日産だってホンダに負けないようなエンジンに仕上げることができるはず。CVTの制御技術が上がってダイレクト感のある気持ち良い加速を得られるようになったからといって、肝心のエンジンが重たいフィーリングじゃ目の肥えたユーザーは納得しない。相乗効果があってこそ心に響いてくるんだから。
山 ハーモニーがイマイチってことですね。でも、ヒドイってわけじゃないですからこれから熟成されていけばきっとクリアできると思います。特に新しいエンジンに関してはエンジニアの方も「ティーダ発表当時より工作精度が上がっているのに加え、日々の研究で確実に進化させている」と言っていました。目に見える進化ではないのでアナウンスこそされないと思いますが、1年後に乗ったら見違えるほど良くなっていることを期待してます。ただ、そんな中でも、低中速域の力強さについては高速走行時に余裕を感じましたね。
国 100km/hで巡航している状況だとエンジン回転は2200回転程度だから静粛性も高い。ロングドライブに対する適性は大合格。ちょっと前まで車線内をキープするための微少な操作対する反応に違和感のあった電動パワステも相当良くなった。ロングホイールベースの恩恵もあって直進安定性に不安は無い。
○ティーダとは異なるハンドリング特性
明るく清潔感のあるインテリアは各部の操作性も抜群。
山 ベースはティーダっていうことですけど、ワインディングやテストコースでの印象はティーダとはちょっと違いますね。実はノートの発表会の時にチーフエンジニアを務めた方に伺っていたんですが、ノートはティーダより安定志向だそうです。
国 大きく違うのはリアサスの踏ん張りが利くってところ。ティーダはいい感じでロールしていくんだけれど、ある一定のレベルまでいくと意外に簡単にテールが流れ出す。でも、ノートはティーダと同じようにロールしていきながらも、ティーダよりもリアがドッシリと粘る。横方向のGに対する剛性感があって、常に安定した姿勢を保つ方向のセッティングだよ。一言で言うと「バランスが良い」。
山 エンジニアの方もまさにそうおっしゃってましたね。ティーダは若い時にクルマ遊びを楽しんだ世代もターゲットユーザーにしているため、ある程度操る楽しさを残しているとのことでした。しかし、ノートは比較的自動車に対する思いの小さい若い世代人達をメインに開発したので、初心者がステアリングを握っても安全に楽しめる特性にしてあるそうです。ボクも含めたいわゆるクルマ好きにとっては、もう少しシャープな挙動の方が好みなんですが、時代背景を考えるとこの辺りが落としどころなんじゃないでしょうか。そういう意味ではティーダは意外にも往年の日産車らしさを持っているということになりますが。
国 ノートのメインマーケットとなるユーザー層にクルマ好きが少ないのは悲しいけれど、自動車開発の方向性としてはより安定しているに越した事はない。ノートの基本姿勢は正しいんだよ。もし、どうしてもノートじゃなきゃ駄目って言うのなら、昔に比べて車外品の足回りなどは豊富にあるわけだから、その気になればそれぞれの好みに近いセッティングに変える事だってできる。15インチタイヤの割りに少々突き上げ感がある乗り心地だってもっとしなやかな乗り味にできるはずだよ。
山 ボディがガッチリしているせいでサスペンションの動きがしっかり伝わりますから、ノーマルならもう少し初期入力に対する当たりをソフトにしても良いかと……。なんだか17インチタイヤを履いているような感じなんですよね。きれいに舗装されているところではリップルコントロールが効果的に効いているんですが、そうでない所だと多少ゴツゴツ感じます。ティーダも同じような乗り味なんですが、シートの違いを除いてももう少しソフトタッチだと思います。
国 リアのスタビリティを確保するために足回りを引き締めているから余計にそう感じるかも。でも、ティーダはきれいな路面状況では良しとしても、ちょっと舗装が荒れてたり突起を乗り越えたりすると急にドタバタしちゃう。例えるなら「ジキルとハイド」で、良いところと悪いところがはっきり別れる。その点、ノートは凄く乗り心地が良いというわけじゃないけれど、乗り心地の変化が道路状況に左右されにくい。つまり、常に同じような状態で足が動いてるってこと。サスペンションセッティングとしてはノートの方が正当派だよ。ただ、ライバルとなるフィットは剛性感こそ一世代前でも、正確な動きのサスペンションに加え積極的に楽しいと感じるレベルの“クルマの味わい”を持ってる。ノートは総合性能高くても、ちょっと“味わい”が薄いところが残念。
張り出したフェンダーラインが安定感を強調するリアスタイル。
「コンパクトのフレキシビリティをシフトする」そう銘打たれて登場したノートのアピールポイントは「確かな走り」「くつろぎの車内空間」「使い勝手の良さ」の3つ。つまり、クルマに求められる要素を全て満たしたコンパクトカーが開発コンセプトなのだ。乗ってみると、確かにその欲張りな理想は“ほぼ”実現できていると思った。それでいて、コストパフォーマンス抜群と言える価格設定なのだから魅力的でないはずがない。
しかし、そんな多岐に渡る頑張りも“走ることを楽しむ”というクルマの本質的な部分にまで届いていないような気がする。このことは無個性が叫ばれる現代の自動車社会において、ノートに限った事ではないかも知れない。ただ、日産車特有のファンな乗り味を期待していると、少しばかり裏切られた感が大きくなってしまう。多様性を持たせることも大事だと思うけれど、日本には「器用貧乏」なんていう言葉もあったりする。すべてに平均点以上を取る非凡さに加え、乗り味を決定付ける日産味のスパイスが欲しいと思います。
Text:山崎 裕正
平成17年1月20日
《ノート発表速報》
○一斉お披露目のトリを飾る新型コンパクトモデル
「連携の取れた開発チームによって妥協のない理想的なコンパクトカーに仕上がった」とのこと。
「これからの商品展開をユーザーにアピールする」との目的で、昨年9月2日に行われた『ムラーノ』の発表会に、その後短期間内に順次発売する5車種(フーガ、ティーダ、ティーダラティオ、ラフェスタ、ノート)の新型車が同時お披露目されていたというのは記憶に新しいところ。そして、それらのトリを飾るのが“SHIFT_compact
flexibility”(コンパクトのフレキシビリティをシフトする)とのキャッチコピーを与えられて登場した新型コンパクトカーの『NOTE(ノート)』だ。
『NOTE』は現在の日産ラインアップの中において、4番目のコンパクトカーとなる。かわいいベーシックカー的なマーチ、大胆なデザインと広々室内のキューブ(キュービック)、クラスにない上質さを追求したティーダ(ラティオ)と、それぞれに個性的なコンパクトモデルを揃える中にあって、『NOTE』の目指すところは誰もが「爽快に走れて、多目的に使える」という守備範囲の広さ。つまり、これまでのコンパクトカーが持つ概念を打ち破るべく、性別や年齢、さらにはステイタス性も含め、どんなユーザーとも調和することを目指したクルマ作りが行われているのだ。
ティーダと同じHR15DEエンジン(109馬力・15.1kgm)だが、細かな部分を改良しているという。
日産のコンパクトクラスという位置付けだから、ベースとなっているのはマーチ。ただし、ホイールベースを見ると、マーチの2430mmに対し『NOTE』はキューブキュービックやティーダと同じ2600mm。しかもエンジンはティーダと同形式の新型。『NOTE』のベースはティーダだと考えていい。
パワートレーン自体はティーダの1.5リッターモデルと同じ、HR15DEとエクストニックCVTの組み合わせ(e・4WDは電子制御4速AT)。開発責任者自ら語る「何よりも、走らないのは疲れますから」という判断により、ライバルとなるフィットやイストなどのような排気量の少ないモデルを投入する予定は無いそうだ。逆にティーダにある1.8リッターモデルは? と伺うと「今のところまったく考えていません」とのこと。排気量差でのグレード構成は今後もなされないと考えていいと思う。
ルーフ部分にまで繋がるリアコンビネーションランプが外観デザインの特徴。実寸よりも大きく見えます。
しかし、同じBプラットフォームなのに、なぜマーチやキューブは中途半端な排気量ともとれる1.4リッター(CR14DE、1.2リッターはCR12DE)のままなのか? という疑問が残る。そのあたりを聞いてみると「キュービックだって走るに越したこと無いですよねえ」。1.2リッターメインのマーチはともかく、キューブが1.5リッターエンジンを積む日は近いかもしれない。考えてみると、HR型とCR型ではエンジンがまるで違うので、ティーダを開発する際、Bプラットフォームのエンジンマウントを大きく変更している。コスト意識の高い企業なのだから、設計の古い1.4リッターエンジンを無理に生かすこと(現状だと2種類のエンジンマウントを持つBプラットフォームが存在する)が、得策でないことくらい分かっているのだ。
動力性能面での変更点は、車中がティーダ(15M、15G)より70kg軽い1070kg(15S)となることから、CVTのプログラミングを最適化している程度。体感的な加速力はティーダ同様、CVTと中低速のトルクの太さの相乗効果を使った息の長い感覚を持つ特性だろう。高回転域での気持ちよさに欠ける感のあるHR15DEエンジンだが、「エンジンも随時改良を重ねているので、新開発として積んだティーダの初期型よりも確実に軽快になっている」とのこと。きちんと体感できる程であれば、もともと軽量コンパクトという素性の良さを持っているだけに、HR型エンジンの将来性も期待できると思う。
視認性と操作性を重視した実用的な雰囲気のインテリア。ナビは全車オプション。
インテリアは非常にシンプルなまとまり。ややキューブの印象に近い文字盤を使うメーターなどに、もう少し独自性があればとも思うけれど、エアコンの操作パネルなどはとても使いやすくデザインされている。シートはしっかりと厚みのがあり、体を沈めたときのフィット感が抜群。サイズも標準的な大きさが確保されており、ドライブを楽しむ上でまったく不満のない仕上がり。シート調節レバーは一般的な外側タイプとなる。
座り心地の良いジャージ地のシート。キャラクター的にはブラックとのことだがベージュも悪くない。
また、『NOTE』の大きな特徴の1つとして、必要以上のシートアレンジを持たないことが挙げられる。日産内で独自調査した結果、多彩なシートアレンジを持つクルマを所有しているにもかかわらず、ほとんどのユーザーが有効活用する機会のないまま乗っているというのがほとんどだったという。ならば、「アレンジは最低限の機能性だけにとどめ、シート自体の性能を第一に考えよう」というのが、『NOTE』のリアシートを作る上でのコンセプトになったとのこと。その姿勢は徹底しており、座面の大きさと厚み重視するため、ティーダで取り入れたリアシートのスライド機構までも排除するという潔さ。
実際に座ってみると、「ソファの様な」と言われるキューブのリアシートに近いふくよかさと、より贅沢な前後スペース効率がもたらすゆったり感があり、確かにライバル勢よりも一歩進んだ懐の深さを備えている。個人的には、多機能化を優先するがゆえに、シートを薄くしなければならないなどというしわ寄せが起こるより、『NOTE』のように移動体としての快適さを大切にするクルマの方が、今後のトレンドをリードしていく存在になると考えている。必要以上の機構を装備しないことは、前述した通り、ティーダより70kgも軽い車重を実現させているという理由の1つにもなっているのだ。
ゴルフバッグ4つはイケそうなラゲッジ。この下に深さ250mmのアンダーボックスを備える。
そうした上で、純粋にラゲッジとして配分したスペースを無駄なく利用するための、「2段マルチトランク」を装備。通常状態ではフタ(リッド)となっている2枚のボード活用することにより、状況に合わせて4つの収納モードを選択することができる。
お馴染み“ライダー”もラインアップ。スカイラインに近いイメージのフロントマスクがスポーティ。
『NOTE』の登場により、日産としては現行の“Bプラットフォーム”を使うコンパクトモデル体系が完成したことになる。『NOTE』が主なターゲットユーザーとするのは、30歳代から40歳代のファミリー層(ちなみにティーダは40歳代以降を中心に考えられている)。マーケティングによると、現在のコンパクトカークラス販売増の最大の要因は、それよりも大きいクラスに乗っていた人がコンパクトカーに乗り換えることにあるとのこと。つまり、少し前なら、若い世代の人たちがクルマのカテゴリーランクを下げることは、あまり見栄えのする行為でなかったかもしれないけれど、既にそういった時代が終わり、本格的なコンパクトカー志向の流れが出来てきているということ。「高級なもの」が尊ばれる世の中から、「本当に必要なもの」が残る時代に“SHIFT”しているのだ。
今後の生き残りを掛けた各社のコンパクトカー開発競争からますます目が離せなくなってきた。
Report:山崎 裕正
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