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平成16年10月7日
<ティーダ試乗レポート>
○ 期待のコンパクト2BOXはマーケットを再開拓できるのか?
細かな部分にまでハイクオリティを追求したことをセールスポイントとしているティーダ。フロントシートの座り心地やインテリアなど、見た目や質感については自信を持っているポイントだけあり、止まった状態でもそのこだわりを十分に感じることができた。ただ、そういった作り手の気合を見て取れるクルマだからこそ、走りへの期待値が高くなるのもまた事実。果たして「快適なロングツーリングが楽しめる」と謳う走行性能はどんな仕上がりをみせるのか? 新開発の1.5リッターエンジンのデキも非常に気になります。
試乗日は生憎の大雨。機会があれば天気の良い日にもう一度乗ってみたいと思う。
○リップルコントロールの効果は絶大だが・・・・・・。
山崎(以下:山) 走り出してすぐに、微弱な振動がカナリ抑えられてるなぁと感じますね。誰が乗ってもリップルコントロールの効果を十分に体感できると思います。
国沢(以下:国) 路面を手でやさしくなでるような乗り味だよ。このあたりは相当ガンバッテやってきてるのがわかる。
山 そもそも「リップル」って「さざ波」とか「小波」という意味ですけど、道路の表面はささくれ立ってザラザラして部分が多いわけですから、細かな波状振動を吸収できてるのは大きなポイントじゃないですか。
国 構造的にはショックアブソーバーの内部(ロッドの出入りする部分の内壁付近)に、高周波として伝わってくる微少振動を抑える部品(ダンピングコントロールリップ)を追加しただけなんだけどね。(V35)スカイラインなんかには前から採用されていたけど全然ダメだった。でもティーダに乗るとしっかり効果出てるよ。ステアリングインフォメーションに関しても、余計なブルブルを静める効果があるから“舗装状態のイイ道”を走ってる分には高級車にも引けをとらない高い質感を持ってる。ホントにスバラシイね。
山 “舗装状態のイイ”って部分を強調する真意はなんとなく分かります。マンホールの出っ張りや橋の継ぎ目なんかを越えたときの入力が、それまでの上質な感覚を180度ひっくり返してしまうくらい違いますね。
国 その通り。リップルコントロールで吸収できる範囲を超える入力があると、なんで!? って思うくらい一気に突き上げ感が高くなっちゃう。
山 その範囲の仕事を担っているのはダンパーってことになりますけど・・・・・・。
国 間違いないね。まったくもって動いてない。
山 そこまでの領域が「スバラシイ」だけに、なんだかすごくもったいない気がしませんか?
国 大いにそう思う。ティーダほどは微弱振動を抑え切れていないクルマも含めて、突起物を越えたときなんかに「ダンパー良ければ一気に評価高くなるのになあ」って国産車は結構多いのよ。最近はボディ剛性の高いクルマ作りができるようになったから、一昔前のユルユルボディゆえに伝わりにくかった(ボディが動かないダンパーの代わりにたわんでた)突き上げ感が目立つ傾向にある。クルマの進歩ほどダンパーのクオリティは上がってないと言わざるを得ないね。
山 現状でこのダンパーの特性を今以上に初期からソフトにストロークする方向へリセッティングしたら、グニャグニャのアシってことになりかねないですよね。特に縮み側の減衰力の立ち上がり方がネックですから、コーナーでステアリング切るとグラッとするようなハンドリングになると思います。
国 きっと、日産らしい気持ちのいいハンドリングを持たせようと試行錯誤した妥協点が今の乗り心地なんだろうね。これ以上柔らかくすると「走りの楽しさを持ってます」とは言えない特性になっちゃうんじゃないかな。
○コンセプトの近いベリーサと比べると・・・・・・。
サスペンションの取り付け剛性はかなり高い
山 コーナーを抜けたときの感じなんか、少ないロールでハンドリングも素直な印象が強いですよね。4輪の接地感も相当高いと思います。
国 リバウンドスプリングが採用されてるんでしょ?
山 そうです。リアにリバウンドスプリングが採用されています。前後のサスペンション剛性もだいぶ上がってるとのことです。
国 横方向のGに対する強さはカナリのもんだよ。コーナーでもクルマが一体感のあるフラットな動きをする。残念ながら雨降がっててドライ路面の状況は想像の域を出ないんだけど、おそらくコーナーリング性能は相当高いよ。
山 限界特性も優秀な感じですか?
国 多分コントロール幅広いと思う。いずれ晴れの日にテストコースで試してみるよ。
山 今日の試乗した段階で全体的な乗り心地を評価すると、ティーダは同じようなコンセプトのベリーサと比べてどうですか?
国 どうしても厳しく評価しちゃうけど、現状ならベリーサ。テネコのダンパー使うベリーサの方がよりコンセプトに近い上質な乗り心地が出せてるよ。
○新開発エンジンは?
動力性能はまずまず。素性は良いので気持ちよさの演出が欲しい。
山 新開発のエンジンはどうでしたか?
国 低回転域のドライバビリティは高いよ。それに、CVTと組み合わされている(試乗グレードは15M)から、15.1kgm(109馬力)というトルク以上の力強さを感じるね。ただ、5000回転を超えたあたりから少しずつにフィーリングにザラつきが出ちゃう。
山 中低速域のトルク特性を重視したセッティングだから、高回転域が多少苦手になるのは仕方ないかもしれませんね。
国 せっかくフリクションロスの少ないオールアルミエンジンを作るんだったら、全域で軽快な気持ち良さを味わえるエンジンじゃないのは残念だよ。
山 「いいエンジンができた」って話を聞いてますけど・・・・・・。
国 いや、エンジン技術者のホンネはもう少しやりたかったと思うよ。もう一歩ツメれば、数段良いフィーリングを出せたと思う。欲張ったクルマなんだから、中途半端だと思われちゃ悲しいでしょ。
山 確か来年追加予定の1.8リッターもオールアルミ製です。
国 より高い価格で売るんだから、1.5リッター以上の完成度を求められて然り。しっかりこだわって気持ちの良いエンジンに仕上げて欲しいね。
○成功のカギはマーケットの復活にあり
山 メッセージ性の高いデザインが多い最近の日産車ですけど、ティーダに関して言えば外観的な特徴は少なく感じますね。ポイントは中身にあるクルマですから、より多くの人に受け入れられるデザインの方がいいでしょうが・・・・・・。
国 確かに上質なクルマを作ろうと頑張ってるのは分かる。ただ、それじゃ分かりにくいんだよねえ。トヨタの強力な販売力を持ってしても、ランクスやアレックスが苦戦する分野でしょ。いくら、「インテリアにこだわりました」ってアピールしても、そんなに多くの一般人が内装の良さを理由にこのクラスの2ボックスを買うとは思えない。
山 日産の方の話によれば、ランクスやアレックスにはない質感の高さを実現できたので、本当に“良いモノ”を求めている人ならティーダを理解してくれるハズだと。
国 大きなマーケットがあると読んでるワケね。でも、ワタシは月5000台の目標には及ばないと予想しておきます。
山 これからの時代を考えると、オシャレなモノ選びをする若いカップルや、子離れした団塊の世代が年々多くなるので、ティーダがターゲットユーザーとするマーケットの拡大も期待できるとのことです。
国 ホントに若い人はティーダみたいなクルマに興味あるのかなあ? 20歳代から30歳代前半の人に大ウケするようなら、ワタシの感性がオカシイってことになるけど、もしそうなったとしてもなんだか寂しい気がするね。夢がないというか、冷めてるというかさ。それに、団塊の世代の人たちは子供に手が掛からなくなったら、好きなクルマとか憧れだったクルマに乗りたいんじゃないの? 決してシーマやセルシオ乗ってるからって威張れる時代じゃないけれど、ただ「いつか乗れたらいいいなあ」って思うクルマを超えるほどの魅力がティーダにあるかというと、コレっ! ていうポイントが見当たらない。
山 室内空間的には大型サルーン以上を確保してますし、ラゲッジスペースもウィングロード並に使えます。全体的なクオリティの高さも含め、必要なモノは全て揃ってますよね。やろうと思えばスパシオみたいに3列シートにすることもできたと思いますが、そこまでするとワゴンっぽくなって、また子供の影が見え隠れしてしまう。つまり、広すぎるっていうことです。そういう条件を総合的にまとめ上げたクルマだから、仮想したターゲットに対する訴求力は高いと考えているんだと思います。
国 それはあくまで理想論。“良いモノ”ってのは、1つでも他にない魅力を持っていればそれだけで十分だったりする。プリウスってカッコ悪いけど大人気だし、輸入車で考えるとゴルフ。サイドエアバッグやESPなんかを装備してホンモノのヨーロッパ車の走りが240万円で買えるのはカナリ魅力的。方やティーダの標準グレードの15M(157.5万円)に純正ナビやカーテンエアバッグを付けると200万円台確実なうえ、こちらはESPみたいなスタビリティ制御装置の設定がない。そうなると国産車という選択肢の中じゃ160万円台から買えるウィッシュみたいなコストパフォーマンス高いミニバンが魅力的に見えてくる。しかも、ウィッシュなら場合によっては20数万円の値引きだって期待してイイ。そんな具合だから、ティーダクラスのマーケットって衰退しちゃってるんだよ。
山 むしろ後から出る『ティーダ・ラティオ』なるセダンモデルの方が、サニーユーザーなんかの支持を集めやすいかもしれませんね。
受け入れやすいデザインでもマーケットが無ければ・・・・・・。
国 ワタシはその線の方が可能性高いと思ってるよ。販売目標数自体が少ないだろうけど。
山 来年には1.8リッターモデルも出る予定ですよね。そうなるとセダンモデルのラティオはシルフィとのバッティングが考えられます。さらに言えば、下にはキューブのプラットフォームを延長したコンパクトカーだという『ノート』のデビューも控えてます。ティーダの立場ってやっぱり厳しくなりますかね?
国 一般人がクルマを買おうと考える価格帯が拮抗するところだから境界線が曖昧になるし、それによってクルマの持つキャラクターまで薄れて見えてくる。だからこそ「ココは絶対!」っていうモノを持ってないとダメ。もし、ノートにティーダと同じ1.5リッターエンジンが搭載されて内装のクオリティもまずまずだったら、価格を安く設定するであろうノートはきっと売れると思う。
山 ティーダがターゲットユーザーと仮定する範囲に含まれない立場にあるボクなんかは、外装をちょっと衣替えしてエクストレイルに搭載されている2リッターターボを移植したモデルなんかあってもイイかなあと思ったりもします。パルサーGTi−Rじゃないですけど、活きの良さをアピールして成功した例だってあるんですから。
国 活気の無くなったマーケットを復活させるには、そういう話題性のあるトピックスも必要だと思うよ。
師匠とのやり取りの中ではカナリ厳しい評価に映るであろうティーダの印象だけれど、どんなに良いクルマが出来上がったとしても、マーケットを見誤っていれば宝の持ち腐れになりかねない。今現在、ランクスやアレックス、シビックなどが売れまくっているという時代背景だったら、ティーダが月販5000台をクリアし続けるのは難しいことではなく、さらにこのクラスを牽引していくような存在になることは間違いなかっただろう。後出しの利こそあるにせよ、ライバル勢にティーダほど凝った造りのクルマはないし、価格的な面からもユーザーの満足度を向上させる資質を多く備えていることが評価され、常に予想以上の販売台数を記録したと思う。
しかし、そもそも“良く売れる商品”が際立つのは、注目されるマーケットがあるからに他ならない。需要の少ないマーケットに多くモノを供給しても、売れ残りが増えるばかり。そうなると、最終的には店じまいという末路を辿ることになりかねない。現在のコンパクト2ボックスカー市場はまさにその状態で、言わばニッチな分野なのだ。ティーダが日産の販売台数を押し上げるクルマになるためには、ユーザー側の価値観の変化が絶対条件だと思う。
*1.8リッターモデルの試乗レポートはコチラ。
Text:山崎 裕正
平成16年9月30日
《ティーダ発表》
●コンパクトへのこだわりがセグメントの枠を超える
○モダンリビングの流れを汲むインテリア
ティーダ最大のセールスポイントは、高級なインテリアとクラスを越えた居住性、走行性能の高さだという。早速自慢の車内はどうか? と覗いてみると、想像以上に落ち着きのある雰囲気。すぐに他のコンパクトカーとは明らかに違うホンモノ志向を感じることができた。ティアナから始まった「モダンリビング」の思想が、ティーダにもしっかり受け継がれているのだろう。資料によるとインテリアのテーマは、「コンフォート&スパイシー」とある。まず、フロントシートに座ってみると、座り始めはソフトでお尻をきちんと収めると何となくコシのある感じが伝わってくる。担当の方に聞くと、座面に低反発ウレタンを使っているからとのこと。確かにこのシートなら個々の体型の違いをだいぶカバーできるから、体格差に関係なく高い快適性を感じられるハズ。サイズもティアナとほぼ同じ大きさと言うだけあり、コンパクトクラスとしては最大級と思えるほどゆったり。リアシートは240mmのロングスライドが可能で、座った状態で最も後退させると腰の位置から前席のシートバックまで650mmという、シーマを越えるスペースを確保できる。実際に座ってみると、足を組んでも余裕。頭上高は大型サルーン以上に開放的な広がりを持っていた。
立体感のあるメーターパネルとメッキ素材のアクセントなど、こだわりを感じる内観です。
コンフォートが「快適」なのは呼んで字の如く分かったけれど、スパイシーとは何か? 「特に刺激的な部分は見あたりませんけど…」という問いに「味にピリッとアクセントを効かせるように、細部に締まりのある処理を施し凝縮感のある質感を追求しました」とのお答え。なるほど、改めて見てみると、メーター周りもきちんとデザインされているし、パネルの繋ぎ目や表面処理に気を使っていることがハッキリと分かる。高い居住性との相乗効果で、運転席からの眺めは2リッタークラスのクルマに近い感覚を持っているのだ。
○エンジンは新開発の1.5リッター
エンジンは今のところ1.5リッターのみ。2005年初頭に1.8リッターを追加予定。
ティーダのプラットフォームはマーチやキューブと同じ。ただし、搭載される1.5リッターエンジンは新開発のオールアルミ製となる。109馬力というスペックだけを見ると、ごく普通のエンジンだが、トルク特性に優れた静粛性の高いさが最大のウリだという。組み合わされるミッションは2種類あり、ベーシックグレードの15Sと4WD車(e4WD)に電子制御4速AT。標準グレードとなる15Mと高級仕様の15Gには、キューブで実績を積んだエクストロニックCVTを採用し、より上質感ある走りとリッター18.2km(15Sは16.8km/L)の低燃費性を実現している。
ただ、キューブの場合ATとCVTを4WD以外の同グレードで選択でき、価格差が5万円少々だったのに対し、ティーダの15S(142.8万円)にCVTは設定されていない。CVTが欲しいとなると必然的に15M(157.5万円)以上を選ばなければならず、15Sとの価格差は最低でも14万7000円。おそらくキューブ同様CVTの方が格段にスムーズな走りを見せると思うのだが、これだけ価格差があると結構割高に感じる。是非とも15Sに5万円プラスくらいでCVTを選べるようにして欲しい。ちなみに、シートやステアリングに本革が用いられる15Gは172.2万円。ウィッシュの18Xが177.24万円ということを考えると、やや価格競争力が弱いと思う。
走行性に直結する部分では、細かな振動を抑えるために有効なリップルコントロールショックアブソーバーや、エルグランドなど一部の高級車に採用されてきたリバウンドスプリングを採用。不快な微少入力を取り除くとともに、フラットな姿勢維持と高い操縦性を両立しているという。
○新たなコンパクトカー像を提案する日産流の挑戦
立体感のあるリアビュー。上級車と同じ塗装品質を確保しているという。
「正直、結構冒険なんですよねぇ」とは、日産の超上層部の方から伺ったお言葉。クオリティの高さを追求することには成功しているが、コンパクトクラスを購入対象とするユーザーがどう評価してくれるのか未知数とのこと。確かに一概にコンパクトというのは簡単だけれど、ティーダは全長4205mm×全幅1695mm×全高1535mmと、「小さいクルマ」というには少々語弊のある大きさ。実際に目の前にするとさらにボリュームがあるように映り、日本には市場がないと言われることも多いランクス(全長4175×全幅1695×全高1470)やシビック(全長4285×全幅1695×全高1495)などと同じような存在感だから、総合的に見ても一般的なコンパクトカー購入層をマーケティングしたデータにそぐわない部分が多いかもしれない。
一方、開発した立場の方の言葉を借りると「ティーダはコンパクトカーストレスからの解放を目指した」という。あえて明確な購入対象こそ設定していないが、子供が手を離れた50歳代の夫婦や、まだ子供のいない若いカップルの人達に魅力を感じてもらえれば理想的とのこと。それはティーダを「一度大きなクルマに乗ってしまうと小さいクルマに満足できるか不安」とか、「小さいクルマじゃカッコ悪い」などの理由で二の足を踏まれがちなコンパクトカーとは全く異なるレベルのクルマに仕上げることができたという自信があるからに他ならない。しかし、このコンセプトはマツダがベリーサで打ち出したものと同じ。奇しくも購入ターゲット層まで一緒となっている点については、「社会的に見てマーケットの拡大が期待できるところを狙っている」という見解だった。
シート調節レバーを内側に配置。これも空間を最大限活用するための工夫です。
ただ、ティーダがデミオベースのベリーサと大きく違うところは、日本人の生活スタイルと日本の道路事情の研究から開発が始まっているところ。これまでのようなセグメント論ではなく「ヒトに合わせた尺度」を元にクルマを作ることで、経済性や運転のしやすさにウェイトが置かれがちなコンパクトカーとは違う、高いクオリティと十分な室内空間を基本に据えた新たな基準を打ち出そうとしているのだ。参考までにミス・フェアレディのお姉さんにティーダの印象を聞くと、「写真で見るよりずっとオシャレ」。若い独身男性が乗っていても? 「マーチとかだとちょっと窮屈そうだけど、ティーダなら大歓迎」とのこと。月間販売目標5000台。ティーダとは沖縄の言葉で太陽を意味するそうだが、冷え込んでしまったこのクラスの販路を復活させることができれば、まさに“太陽”という呼び名にふさわしい存在となり得るだろう。
Report:山崎 裕正
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