まずは試乗といこう! 売れ筋になると思われるFF(今度のセレナはステップワゴンと同じFFなのだ)に乗り込み、Dレンジをセレクト。アクセル踏む。するとどうだ! けっこう元気でないの! ボディが大きく、重くなった分だけ遅くなるかと思ったものの、そうでもない。理由は二つあると思う。一つ目がエンジンの改良。考えてみれば旧型車に搭載されていたエンジン、カンペキ時代遅れだったと思う。8年前のママ、と言ってよかろう。その間、エンジン技術も向上し、格段にトルクの出方など改善された。驚くのが低回転域での使いやすさ。アクセルを踏むと、不満なく加速してくれる。最高出力も130馬力から145馬力に。
 二つ目はCVTを採用したAT。CVTというAT方式、重量のあるボディにとっちゃ非常に有利な変速機だと言われてきた。なぜか? 普通のATの場合、1速で4千回転まで回り、2速に入ったとしよう。すると一旦2千回転近くまで回転数は落ち、パワーも低くなる。2速から3速へのシフトも同じ。CVTのバアイ、加速するのに必要な回転数をずっ〜と使う。交通の流れをリードしようとするなら、4千回転くらいをキープすれば楽チン。経済的に行くとすれば2千回転くらいのまま加速していけばよろしい。



 一方、高速道路での100H巡航は2200回転くらいまで下がり、非常に静か。そこからアクセルを踏む込むと、スムースに回転が上昇。ドライバーの期待する加速度をキープしたままスピード上げていく。車重のあるミニバンだと、登り坂じゃ4速のままだとパワー不足。かといって3速に落とすとウルサイ、というケースが珍しくない。こんな時、CVYなら4速と3速の中間という回転数を選んで走ってくれるちゃう。ミニバン用ATとして評価するなら、モンク無いでしょう。10・15モード燃費も12H/リッターと優秀。マイナーチェンジで改善されたステップワゴンを引き離す。
 4WDもキビキビ走る。CVT使うだけでなく、4WD方式まで変更されたためだ。従来型は4WDを選ぶと110kgもの重量象。これだけ重くなると走りや燃費に影響してしまう。新型セレナなら4WDでも60kgしか増えず、動力性能的に2WD+ニンゲン一人分とほぼ同じ。このシステム、通常走行時はFFで、滑った時だけ後輪にも駆動力を伝えるタイプとなった。また、ステップワゴンより駆動トルクの伝達量が大きいとのこと。本格的なフルタイム4WDに近いというので、冬場になったらぜひとも試してみたい。

 ハンドリングはこのクラストップ、と評価しておく。乗った瞬間から解るのがボディのガッシリ感。ボディ剛性が上がった結果、騒音や振動面でも有利になったらしい。乗用車と比べても負けないくらい質感あるのだ。旧型だとけっこうウルサかった100H巡航も、キモチよく過ごせるのだから嬉しい。「運転して楽しい」という日産車に共通する特長もキチンと持っていた。峠道などハイペースで走って面白いだけでなく、街中だってキビキビしていてキモチよい。シャープさを快適と感じるのはニンゲンの本能みたいなものか?

 これまで「いっちょミニバンでも買ってやろかい!」という意欲が湧いたとしても、おそらく日産の関係者でない限りセレナというチョイスは無かったと思う。本来ならセレナというクルマ、ミドルクラスのボンネット付きミニバンでは元祖ともいえる存在なのに……。迫力ないスタイルや、ウルサイ騒音、バンみたいに荒っぽい乗り味に足を引っ張られ、デビュー当初からスタイリッシュなライバル、エスティマ・エミーナ/ルシーダに負け。さらにステップワゴンがデビューすると、もう存在感まで薄れてしまった。今年に入ってからの販売台数をチェックしてみたら、月平均約千台。ライバル車の10分の1という月さえ少なくない。トホホ、ざんす。
 世の中不景気ながら、今や200〜250万円クラスのミニバンなら、キチンと作れば絶対売れると思う。しかもこのクラス、月間2万5千台〜3万台くらいのマーケットがある。魅力的なモデルさえ作ったならば、1万台以上売れるってこと。こらメーカーにとっちゃオイシイでしょう! なのに日産は”出せば売れる”ミドルクラスミニバンを8年もほったらかしてきた。日産のファンとしちゃ「ヤル気ないのか!」と言いたい。おっとハナシがズレてちゃいましたな。なぜ遅れたのか聞いたトコロ、日産商用車部門のモデルチェンジサイクルは8年なんだそうな。先代セレナのデビューは平成3年6月。ありゃりゃ! ちょうど8年だ。そんなこんなで、やっと新型セレナの登場となったワケ。



 スタイルはデザイナーによれば「ライバルと同じようなスタイルにしたくなかった」。ま、ノアはあんまり評判良くないし、FR車で古い。参考にするとしたらステップワゴンだろうが、似たようなカッコだと目立たない。独自路線を選んだのは正解だろう。なかでもカッコいいと感じるのはサイドとリア。サードシート用のウィンドゥが後半に行くに従ってハネ上がっていくあたり、個性的で好ましい。リアビューもベンツのVクラスをイメージさせるドッシリ感。最近の日産車としちゃ高得点である。フロントはヘッドライトと、その上に位置するランプ類との組み合わせで個性を出す。
 全長は4520mmで、5ナンバーワクの4695mmに届いていない。ノアの4435mmと、ステップワゴンの4605mmの中間といった具合。車高はノアの1935mmより大幅に低い1825mm(ステップワゴン1835mm)。ノアだとちょっと短いし、ステップワゴンになると大きいと感じることもある。新型セレナのサイズで室内スペース確保出来ているなら、使い勝手からしてジャストサイズかも。最小回転半径を調べたら、ノアが5、4m。新型セレナ5、5m。ステップワゴン5、6mという数値。従来型セレナの2WDは5、2mなので、半径30cm分だけ大回りだ。従来型の4WDに乗っているなら、新型も5、5mで同じだが……。

 運転席に座ると、かなり乗用車的なポジションになっており、床がグッと低くなった。ノアや従来型セレナのフロアは普通の乗用車より一段高い。ヨジ登る感じになるだけでなく、重心が高くなるためハンドル切ると左右に傾きやすい挙動になってしまう。いわゆる1BOXカー特有の不安定な走行フィールになるワケ。乗用車と同じフロアの高さで作られたステップワゴンや新型セレナは、1BOXカーと全く異なる走行感覚。こいつが取り回しの素直さになって現れる。セダンと同じような自然さで運転可能。また、ライバルと大きく違うのがスライドドアの数。このクラスだと左側だけが普通ながら、新型セレナは両側に付く。便利でイイ。
 居住性はどうか? 最も大切なのは、誰が何と言っても「絶対的なスペース」だと思う。いくらシート形状よくたって狭いとイヤだ。逆にステップワゴンのようにシート形状悪くたって、広ければ満足出来る。といった観点で新型セレナをチェックすると、大いに満足出来ると思う。3列のシート全部がキッチリとした居住スペースを確保しているのだ。効果絶大だと思ったのが、80pも前後にスライドさせられるセカンド&サードシート。積みたい荷物の量によって、お好みのレッグスペースを確保可能。ラゲッジスペースミニマムの状態なら、身長183pのワタシが3列シートにユッタリ座れるほど。

 これまた技術屋サンに聞いたのだけれど、ミニバンを作るにあたってイチバン悩むのがシートアレンジらしい。広さを確保することはもちろん、どうやってラゲッジスペースを確保するか? とか回転対座はどうする? 等々。アチラを立てればコチラが立たず、になってしまう。シート形状もコンセプトによって異なる。例えばフルフラット。室内で寝る、という目的のためには、なるべくフルフラットにした時に凸凹しないほうがイイ。しかしシート形状を平たくすると、今度は通常時の座り心地が悪くなってしまう。新型セレナの開発陣は、多少フルフラットにした時にデコボコしても座り心地の良い方を選んでいる。賛成だ。
 誰が数えたか知らないけれど、シートアレンジメントはスプリットタイプで162通りに登るそうな。現実的に考えると、よく使うのってサードシートの収納くらいのモンなんだけど……。対座モードはどうだろう。ミニバンで対座状態に出来ないのって、大きなマイナスポイント。そこでスプリットタイプに限って取り外し式にして、後ろ向きにセットすることも出来るように作っている。ワタシは対座モードにしないが、好きなヒトも存在すると思う。取り外して対座モードにしてみたら、けっこうな重労働。クルリと回すだけ、という気楽さでない。おそらく新型セレナを買った100人中、2回以上対座モードにするヒトは、2〜3人だろう。

 サードシートの収納は「チップアップ」と呼ばれるタイプ。背もたれと座面が蝶のハネみたいに畳まれる。その状態のまま一杯に前までスライドさせれば終了。マキシマムなラゲッジスペースは、意外なことにベンチタイプのセカンドシート&サードシートをチップアップにした状態じゃない。スプリットタイプのセカンドシート外し、サードシートを一番後ろにセットした時、容量最大になる。もし大物を積みたいなら、左右ハネ上げ式サードシートのキタキツネバージョンを買えばよい。このクラスのミニバンで最も”大物”を積めるのは、ステップワゴンのポップアップシート仕様だ。