日本人が飽きやすいのか自動車メーカーの方針なのか解らないけれど、日本車というのは短い周期で変更を行ってきた。4年に一度のフルモデルチェンジだけでは足りず、2年周期のマイナーチェンジでさえ、外観の手直しをするケースまで当たり前になろうとしている。そういった”世間常識”からすると、おそらく「マイナーチェンジしたレガシィはどこが違うの?」になるかもしれない。でも乗ってビックリ、でございます。エクステリアの変更点はほとんど無いものの、ハンドルを握ってみれば「こりゃいいぞ!」の連発状態。ヨーロッパ車みたいな雰囲気に仕上がっているのだ。
具体的に説明しよう。最近になってセルシオのように「変化ではなく進化」というテーマをフルモデルチェンジの際にアピールするクルマもあるが、それだって真の狙いは大幅なコストダウンをしたいため。純粋な進化じゃないと思う。だって旧型に負けている部分も目立つのだ。対してヨーロッパ車が行うモデルチェンジは、文字通り”進化”である。それまで確立した技術をキッチリ煮詰め、さらにレベルを高めていくという手法だ。レガシィのマイナーチェンジは、まさしくヨーロッパ流。さて。どんな内容か?
ステーションワゴンの本家であるレガシィは、ライバルが続々と登場するなか、依然として好調な販売状況を見せている。とはいえ、秋にはギャランワゴンや日産のラージクラスワゴンが登場するなど、決して安心出来ないのも事実。富士重工もそのあたりは解っているのだろう。マイナーチェンジを行い、大幅なテコ入れを計ってきた。改良ポイントは驚くくらい多く、スタイル以外、ほとんどの項目にわたっている。簡単に記してみよう。
@一番大きいのはエンジン。全ユニット見直され、それぞれ10%くらいの性能向上を果たした。A足回りはリアサスを中心に剛性アップを行う。B安全水準を最新のアメリカ基準に引き上げた。Cリアシートをワンタッチで倒せるように変更。D全車に運転席エアバック標準装備化。E4WDは全車ABSを標準装備。Fそれで価格は引き下げられた。というもの。富士重工にとってレガシィは虎の子的存在。ライバルに負けるワケにゃいかない!
GTに搭載されるツインターボの2リッターエンジンは、250馬力から260馬力になった。しかし乗ってみると、もはや高性能エンジンの扱いにくいイメージは皆無。むしろ250馬力仕様で感じた、低速側ターボと高速側ターボの切り替え時に発生するトルクの落ち込みもなくなっているなど扱いやすくなっている。もちろん絶対的な性能は文句ナシ! アクセルを踏み込むと、1460sのボディを軽々スタートさせ、イッキに速度リミッターが作動する180qまで(テストコース)持っていく実力を持つ。100q巡航時からアクセルを踏んだ時の追い越し加速も素晴らしく、まるで3、5リッタークラスのノンターボエンジンに匹敵するパワーフィール。なにしろレジェンドに搭載されている3、5リッターV6(2**馬力/トルクは****sm)より高い性能を持つのだ。
足回りも一段と良くなった。これまでのレガシィだって決して悪くなかったと思う。仕事柄、他のメーカーのステーションワゴンとの比較試乗をよく行うのだが、その度にレガシィのハンドリングに感心させられたもの。ワゴンボディはボディの剛性を出そうとすると難しい面も出てくるけれど、ライバル車を圧倒していたのだ。ま、それでも厳密に4ドアセダンのレガシィと比べれば、少しだけリアサスの剛性不足はあった。ただ大きな改良を加える必要もなかったかもしれない。でも富士重工は妥協しない方を選ぶ。リアサス回りのボディ剛性を一段とアップさせ、納得出来るレベルまで持っていったのだ。
この補強、普通に走っていればホンのわずかの違いしかないのだろうけど、ボクは強烈に効いたと思う。こういった変化は数字に表れにくいものだが、体ではキッチリ解るもの。ベンツやBMW、VWといったドイツ車に乗ると、動き出した瞬間に「やっぱりガッシリしてるなぁ!」と感じる。このガッシリ感、どうしても数字に表れないのだという。今までの日本車が一番ニガ手としていた”官能”の部分。走り込むと違いは明確になる。富士重工のハンドリングコースでスポーティカーのように攻めてみたが、新しいレガシィなら、自由自在に、しかも楽しく走れる。このあたりはWRCラリーで活躍するインプレッサ譲りの元気さといってよかろう。
見えない部分では、安全に対するマージンが大幅に上がったことに注目したい。これまでのボディも決して悪くなかったものの(だからこそマイナーチェンジで良くすることが出来たのだろう)、マイナーチェジで97年から施行されるアメリカ基準をクリア出来るボディになっている。これはトヨタのGOAに匹敵するもので、56qからの正面衝突や、オフセットクラッシュ、さらに56qからの側面衝突も想定。全方位からの衝突に備えたボディになった。さらに全グレード運転席エアバックを標準装備化。ちなみに助手席エアバックは子供に対して危険があるということで、オプション設定となる。「助手席に子供は乗せない」というコンセンサスのない日本では、正しい見識だと思う。
これまた従来通りでも不満はなかった。しかし富士重工はライバルと横並びになることをよしとしなかった様子。写真を見てもらえば解るように、リアシートの折り畳み方法が大きく改良された。一般的なリアシートの場合、倒そうとするとリアシートのヘッドレストを取り外さねばならない。ステーションワゴンに乗ったことのあるヒトなら知っているだろうけど、こいつが意外にめんどくさいもの。ついついヘッドレストを外したままにしたくなってしまう。これは追突された時を考えると、非常に危険。それなら、と考えたのが、ヘッドレストを装着したまま倒せるシステムだ。これだと簡単&気軽に安全性を確保したままリアシートを倒せる。
それだけじゃない。「どうせならトコトンやっちゃえ!」と開き直ったのか、リアシートのシートベルト位置まで変えてしまった。普通のシートだと、倒した時シートベルトの受けがすき間に入ってしまう。したがってついついリアシートのベルトを装着しないケースも出てくる。これでは困る、ということから、ボルボのような固定式シートベルトアンカーに変更。「マイナーチェンジでここまでやるか?」というような大きな改良を行った。他にもラゲッジスペースのフロアを見直し、一段とクオリティアップを行うなど、使い勝手も、仕上がり具合でも、ライバルの追随を許さない。もはやステーションワゴンとしてはカンペキだ。
今や自動車のテーマは安全と環境。そこでレガシィにもリーンバーンエンジン(薄い燃料を燃やす)を搭載する燃費重視グレードが加わった。ノーマルの2リッター車と比べ10馬力のダウンとなる反面、燃費は10%向上。10・15モードで2輪駆動まで含めた2リッター車最良の数値になっている。乗ってみると意外にもリーンバーン車特有の”頼りない感じ”がしない。カルディナあたりだとリーンバーンから普通の燃焼(リーンバーンエンジンもアクセルを深く踏み込むとパワーの出る普通燃焼モードになる)に切り替わる際の不快な段付きがあるのに、それを感じないのだ。これなら気分良く運転可能。ただATは無し。今後追加されるようだけれど、それまでは絵に描いたモチになりそう。早くATを出して欲しい。
レガシィと同時にグランドワゴンもリニュアルされている。改良ポイントはレガシィと同じ。大きな違いは2、5リッターエンジンのパワーが1**馬力から175馬力に強化されたことだろう。乗ってみると確かに元気なった。これまでも中低回転域のトルクはタップリあったのだけれど、高回転まで引っ張った時に多少物足りない感じがしたもの。同じエンジンを搭載する250Tも、パワーはイマイチだったように思う。
175馬力のエンジンは主として高回転域の伸びを重視。Dレンジでフルスロットルにした時の加速性能は10%以上がった感じ。高速道路に流入する時の加速や、追い越し加速などはスポーティカーと比べても見劣りしないものになった。高く評価したのは静粛性や、エンジンの回転フィール。エンジン内部の工作精度を高めたり、素材を見直すことによって高い質感を持つエンジンに仕上がっている。250Tも同じエンジンを搭載。
レガシィもグランドワゴンも、エクステリアはフロント部分がホンの少し変わっている。レガシィの場合、フロントグリルを高さ方向に大きくし、バンパー形状の変更を受けた。パッと見ると見分けられないかもしれないけれど、従来型と並べればずいぶんイメージが変わったことに気づくだろう。現在のエクステリアも評判いいので、大きく変えなかったのだと思われる。従来型に乗ってるヒトも、古く見えないので一安心か?
グランドワゴンのフロントマスクも少し手が加えられた。どちらかと言えば、ひときわ派手になったと思う。元々グランドワゴンのマスクはアメ車のようにコテコテだったので、そいつをさらに濃くしたワケだ(グランドワゴンはアメリカでも大人気車種)。インテリアの改良ポイントはレガシィと同じ。リアシートがヘッドレストを付けたまま折り畳めるようになり、シートベルトのキャッチャーは常時キチンと表に出ている。