スバル R1

スバル

R1

平成17年1月25日

<R1 試乗レポート>

フォーマルからカジュアルまで様々な場面で使える。

 毎日乗るとは言っても、あまり遠出をすることもなく、稼動のほとんどの場合がパーソナルユースの軽自動車にとって本当に必要な要素とは? R1の開発背景には、必要以上に大きくないボディサイズ、親しまれるデザインとクオリティ、期待通りの優れた経済性、そして、小さいことが不利にならない高い安全性を確保するという、軽自動車としての“本質”の部分をカタチにしたいというスバルの思いがある。
 とは言っても、基本部分を共通とするR2に比べ、全長(R1:3285mm)で110mm、ホイールベース(同:2195mm)は実に165mmも短くなったことが走行に及ぼす影響は大いに気になるところ。どんな乗り味を持っているのかを確かめるべく、早速試乗チェックしてまいりました。

○車内はR1特有の世界
山崎(以下:山) 見た目はR2の2ドア版という印象を強く抱く人が多いと思いますけど、乗り込んでみるとだいぶ違う印象を感じますね。
国沢(以下:国) 成人男性がドライビングポジションをとると、その50センチくらい後ろにリアウィンドウがあるからスポーツカーみたい。

フロントからリアにかけて滑らかな弧を描くワンモーションフォルム。

山 確かにその部類の包まれが感あります。意外にドライビング気分を盛り上げる雰囲気を持ってると思いますよ。
国 コンセプト通りでしょ。特にパーソナルカーとして捉えれば、運転席から四隅に手が届くスペース設計が理想的。その点、R1はリアシートを持った4シーターでありながらも、それを実現しているってところに価値があると思う。
山 R2との差別化を図る意味でも注目ポイントとなる内装のクオリティですけど、標準とメーカーオプション(レザー&アルカンターラセレクション)を比べてどうでしょう?

R2とデザインの異なるフロントシート(写真はレザー&アルカンターラセレクション)。

国 個人的にはオプションを選びたい。ノーマルもツートンカラーでお洒落を演出しているのは変わらないんだけれど、質感を比べるとレザーの方が価格差以上の高級感がある。手触りの良い本皮巻きのステアリングなんか、長く愛着を持って乗ることを考えると絶対欲しくなる。
山 軽自動車でも自分のこだわりをしっかり表現できる感じがしますね。

国 つまりそういう層を狙ったクルマだってこと。いわゆる軽自動車というのとはちょっと趣きが違う。

左が標準で右がレザー&アルカンターラセレクション。興味のある人は実車でご確認を!

○15インチタイヤとのバランスは?

山 発表会のレポートにも書きましたが、タイヤはR2のS(スーパーチャージャー)と同じもの(155/60R15のポテンザ)を履いてるんです。同グレードとなる“R”同士で比べると、車重はR1の方が10kg軽いだけですから、10・15モード燃費が155/65R14のコンフォート系タイヤを履くR2と同じ24km/Lっていうのは、かなり立派な数字だと思うんです。

国 軽自動車は動力性能に余裕がないから普通車以上にタイヤの影響が大きい。このタイヤを履いて燃費水準を維持してきたってのは、小さいクルマとしての本質を第一に考えている証拠。

専用デザインのホイールがスポーティ。


山 気になる乗り心地面もサスペンションセッティングをしっかり煮詰めてきたようですから、ホイールベースを短縮したことによるピッチング(前後方向のゆれ)などもしっかり抑えられているんじゃないですか。具体的には、R2より前後ダンパーの減衰力を柔らくして、バネレートを上げる方向でリセッティングして、路面変化に対する柔軟性を持たせることで安定性を確保しているそうです。

大径タイヤと強調されたフェンダーアーチが軽自動車らしからぬ力強さを感じさせる。

国 デザインも大きなセールスポイントだから、エクステリアのまとまりという面からも15インチでベストなんだろう。個人的にはもう少し柔らかくできればいいと思う。
山 その辺はきっと意見が分かれると思います。ターゲットユーザー(20歳代の女性が中心)層をもっと強く意識するならもう少し柔らかくても良いような気がしますが、しっかりした乗り心地が好きな人には頼もしく感じると思います。
国 まだ出たばっかりだし、スバル内でもいろいろとやってる様子だから今後の熟成に期待して良いんじゃないかな。レガシィが乗るたびに洗練度を上げていることからもわかるように、スバルはヨーロッパのメーカー同様、年を追うごとの年改をキッチリ行うメーカーだから、今後どんどん良くなっていくと思う。

○R2との走行性能差は?
山 2WDとAWDの両方乗ってみましたが、ハンドリングなどに大きな差はないような気がしました。エンジン(54PS/6.4kgm)とミッション(i-CVT)もR2の“R”と同じなので、体感的な加速性能もほとんど変わりません。ただし、ハンドリング特性は結構違いますね。
国 そう。ハンドリング性能ははっきりと良くなってる。このあたりはR2よりもしっかりレベルアップしてる点だよ。
山 アンダーステア傾向が強いR2に対し、R1はグイグイ曲がるようになりましたよ。

R2とは異なるサスペンションセッティングで自由自在のコントロール!

国 単にホイールベースが短いのもあるけれど、それだけじゃない。ステアリングを切り込むと穏やかなロール発生させるおかげで、ほぼニュートラルステアの状態になる。ブレ−キングやタックインで割と大きな姿勢変化を起こしても、コーナーリング中のクルマの状況が非常に掴み易くて安心感がある。独立懸架を採用するリアサスのストローク量も十分確保されているから、唐突にリアが抜けてスピンしやすいということもない。
山 タイヤの横剛性がもう少し低くてグリップレベルが一段下なら、よりコントロール幅が広がると思いますが。
国 でもタイヤのグリップ力があるからコーナーリングスピード速いよ。サスペンションのセッティングはR2よりも絶対的に楽しめるようになった。リアの流れ方も意外に穏やで、この付近の味付けは15インチのポテンザと足回りとのバランスのとりかたがうまい。
山 大きなうねりみたいなところを通過すると多少ピッチングが出ますけど、一発でヒタっと収まるので直進安定性も申し分ないと思います。
国 R2に比べてセンター付近のステアリング剛性感が若干上がってるのも直進安定性の高さに繋がっているし、電動パワステ(車速感応式)もより自然なフィーリングの制御になった。
山 個人的にはR2のグレード展開のように、現在の“R”をもう少しマイルドな乗り心地のベーシックグレードとして、その上に15インチタイヤのスポーティモデルとして、過給器の付いたエンジンとマニュアルミッションを組み合わせたモデルを置くようなグレード展開を望んでいる人が少なくないと考えています。将来的にはヴィヴィオRX-Rのような元気なモデルも仲間入りして欲しいですね。
国 まずは新しいコンセプトを市場に送り込んだという兆戦を評価したい。もちろん、ワングレードで終わるようなことはないだろうから、今後もスバルだからこそ完成させられたR1をしっかり育てていって欲しいと思う。

 R1のサブネームには往年の名車スバル360の愛称であった『てんとう虫』が与えられている。ご存知の通り、スバル360は自動車文化そのものが未熟であった1958年、大人4人が乗れるRR方式の軽自動車という画期的なコンセプトに加え、軽量ボディを活かしたハイレベルな走行性能を持ち合わせるという、クルマとしての本質を追求した画期的なモデルとして誕生。小型車でさえ高嶺の花であった日本のモータリゼーション創世期にベストマッチのクルマとして大ヒットした。それはまさに、当時の日本人の生活レベルに相応しいクルマだったのだ。

L2990×W1300×H1380 HB1800(全てmm)

 そして現代、環境負荷の大きいクルマを取り巻く状況が大きな転換期を迎え、小さいクルマに対する意識も大きく変化した。人々のライフスタイルは多様化し、その結果“ニッチ”と言われる比較的狭いマーケットがさらなる細分化のもとに数を増やしつつある。
 そんな時代に新しいコンセプトを持って誕生したR1に科せられた使命。それは、“本質を極めた軽自動車”という潜在マーケットの開拓なのだ。時代が変わっても『てんとう虫』に宿る強いパイオニア精神は変わらない。

Text:山崎 裕正   


平成16年12月26日

<R1 発表速報>

●スバルのクルマ作りを具現化した現代版“てんとう虫”

※発売は1月4日からです


竹中恭二社長とR1。キャラクターカラーはベリーレッド・メタリック。

○開発テーマは“My Best Mini”
 苦労して開発したクルマが、「小さい」、「狭い」と言われたら、自動車メーカーにとってはあまり良い気分がしないだろう。特に軽自動車となると、“規格(全長3400mm以下、全幅1480mm以下、全高2000m以下)”という絶対的なサイズに縛られるため、限られた領域を有効に使わないと、ライバル他車に対して基本的な部分で負けてしまう。昨今の軽自動車(それ以外もか)が皆同じようなカタチになってしまったのは、そういった理由によるところが少なくない。ところが、スバルは敢えてその呪縛とも言える型枠に逆行するようなクルマを世に送り出してきた。

飛行機の翼をイメージしたスプレッドウイングスグリル。R2よりもハンサムです。

 “小さいこと”に価値を求めたという『R1』の全長は3285mm。この数字は現代の軽自動車のほぼ全てが採用する3395mmの全長に対し、実に110mmも短い。完全なる2人乗りと割り切ったツイン(全長2735mm)は例外だが、実際にR1を目の前にすると、確かに普段見慣れた軽自動車が大きく見えるほどコンパクトにまとまっている。
 ただし、全幅はしっかり1475mmを確保しているから、頼りない印象は一切なし。兄貴分の『R2』と比べても、クルマ全体としての凝縮度が増しており、独自の雰囲気を持つ品質感はかなり高いレベルにあると言っていいだろう。しかも、新環状力骨構造ボディという軽量・高強度を実現する技術の投入により、レガシィと同等の安全性能を誇っているのだ。

○質感高いインテリア

 車内に乗り込んでみると、R1のコンセプトが2名乗車を基本としたパーソナルカーであるということを改めて確認できる。運転席から手を伸ばすとリアウィンドウまで届いてしまうほどの空間だから、リアシートはスポーツカーで言うところのプラス2程度のスペースしかなく、成人男性が座るには相当な我慢が必要。その分フロントシートの座り心地が追求されており、適度な弾力を伴って身体にフィットする感触は、軽自動車とは思えないほど上質。剛性の高い構造を感じさせるガッチリとした立て付け具合にも好感が持てる。

基本部分はR2と共通だが、大幅な質感アップが図られている。

 インテリアはレッドとブラックでコーディネートされ、クルマのキャラクターに相応しいオシャレな装い。インパネ表面をマット地としていることも効果的で、見た目だけでなく手触りからもあたたかさを感じられる質感を持っている。R1ならではの個性を出すため、メーターには新規デザインの独立3眼式を採用。イグニッションオンで全ての指針がMAXまで振れる凝った演出が施されているあたりからも、このクルマに懸ける開発者の意気込みが並の軽自動車の域を超えていることを伺わせる。
 しかしながら、運転中はやや左前に視線が注がれるのだから、タコメーターは左側に設置した方が自然。R2にも言えることながら、右端ギリギリにある現状だと、意識して見ないとなかなか目に入ってこない。ATのみの設定ということもあり重要度が低いとの判断かもしれないが、クルマとの対話についてもう一歩踏み込んだアプローチが欲しい。

○パワートレーンはR2と共通

いまのところスーパーチャージャー搭載モデルの設定はなし(MTもなし)。

 エンジンとミッションはR2(Rグレード)と全く同じ(★★★:平成17年度基準排出ガス50%低減レベル)。スーパーチャージャー付きのハイパワーモデルも用意されるかと思われたが、今のところ発売の予定はないという。試乗前なのであくまで想像だけれど、R2に対して10kg軽いだけだから、体感的な動力性能はほとんど変わらないだろう。ただ、155/60R15のポテンザ(R2のSと同じ)という燃費に厳しいタイヤを装着していることを考えると、R2同様24km/L(平成22年度燃費基準+5%クリア)の10・15モード燃費を達成していることは立派だと思う。
 全長が短縮され重量バランスが若干変化したことにより、サスペンションセッティングも変更された。概要としては、前後ともダンパーの減衰力を上げてバネレートを下げる方向で煮詰め、R2よりも確実な路面追従性を目指したとのこと。「R2よりもしなやかな足になっています」ということなので大いに期待したい。

○『R1e』の登場は?

開閉の支点となるところに注目! 上部の方が大きく開き乗降性を向上させている。

 このほか細かなところでは、ドアのヒンジを前傾させて取り付けることで、ドアを大きく開けられない場合でも上部の開口幅を広くできる構造としていたり、運転席から後ろを振り返ってバックする際に視界に入りがちなリアワイパーの停止位置を、一般的な左ではなく右に振った状態にしてあるなど、日常生活での扱い易さを第一に考えた気配りが随所に見られるあたりも大きなポイント。
 なお、03年の東京モーターショーに参考出品された電気自動車『R1e』について取材したところ、「今のところ具体的な方向性は決まっていません」との回答。どうやら、バッテリーやインバーターといった、電気自動車を成立させる上で核となる部品が日進月歩で進化している現状だと、「技術として高度なものを提供できない可能性がある」というのがその理由らしい。時期を見計らいながら「今後も前向きに取り組んでいく」そうだ。

○価格は126万円ナリ

 さて、気になるR1の価格は126万円(2WD。AWDは136.92万円)。「まずは流行に敏感でオシャレな女性に乗ってもらうことが第一歩ですね」というスバル役員の言葉からは、きっと気に入ってもらえるはずだという自信が垣間見えた。ただ、100万円を切る価格でも十分な総合性能を備えたクルマがある中での売り込みは簡単ではないかもしれない。

リアハッチは樹脂製の一体成形モノ(R2はスチール)。全体的に結構コスト掛かってます。

 月間販売計画は800台。一般的な軽自動車に比べるとかなり少ない目標値となるも、堅実に売れ続ければ、小さなクルマに対する価値観を変える存在になり得るだけの実力を秘めていると思う。偶然にもR1の全長と全高(1510mm)の関係は、“小さくても”大ヒットした往年の名車『スバル360(L2990mm×W1300mm×H1380mm)』とほぼ同じ比率。現代版“てんとう虫”が大先輩の偉業にどこまで迫れるか注目である。

                         Report:山崎 裕正