「ウチは地味なメーカーですので、たまには派手な試乗会を開かせて頂きます!」という案内があり、なんとオーストラリアで90年型レガシィの発表が行われた。
 クルマは新たに追加されたRS−Rと、セダン4WDターボのAT、そしてターボエンジンを搭載したレガシィツーリングワゴンの3車種である。
 確かに今年はトヨタと日産の派手さに目を奪われがちで、スバルとしてもこのあたりで花火を上げたいところなのだろう。こういった派手なイベントは外国のメーカーが得意ワザだ。しかもレガシィはいいクルマの割に大人しいスタイルで、損をしている面もある。新車種が出てラインナップも充実したので、ここらでガンガン行こうという作戦なのだろう。


 オーストラリアに着いた後、1台目に用意された試乗車はRS−Rというグレード。今まであったRSの装備を簡素にして、足回りをハードにしたものと考えてよい。価格は202万4千円と案外低めの設定になっていて、ターボエンジンを搭載したフルタイム4WDの中では最もリーズナブル。
 驚いたのは試乗の際、ペアを組む相手がピーター・ナンさんというイギリス人だったこと。今回の試乗は二人一組になるということは知っていたが、よりによってまったく英語を理解しないボクが外国からのお客さんと当たるとは思わなかった。



 さて、試乗レポートをお送りするまえに、レガシィの特徴をもう一度確認しておこう。CTの読者ならすでに知っていると思うが、4WD車最大の欠点はというと、コーナーで頑固なアンダーステアが出ることである。だから4WD車は確かに優れてるけど、ハンドリングが楽しくないとされていた。
 ところが最近になって「これじゃいかん!」ということなのか、各社ともいろんな工夫をした4WDシステムを登場させている。スカイラインGT−Rなどはその筆頭で、普段は後輪駆動だから、パワーを掛ければ必ずリアが流れるという寸法。

 ファミリアは前後の駆動力配分を変えてリアが流れやすくしているし、セリカもリアにトルセンデフを採用。これまたパワーを掛けたときにリアから流れるような仕組みを採用した。
 これらのアンダー対策は、はすべてアクセルを踏んだときに効果が出るのが特徴。その中にあってレガシィはまったく違うアプローチをしている。それはハンドルを切った時のロールを利用したアンダー殺しなのだ。
 簡単に説明しよう。ハンドルを切るとクルマはロールを始めるが、レガシィはその時の車重移動を利用して、一気にテールを流すような味付けにしている。
具体的にはややオーバースピード気味でコーナーに進入し、ハンドルを切ってやればよい。普通ならここでアンダーステアが出るが、レガシィはきれいにテールが流れるのだ。

 今回のRS−Rは高性能タイアの採用や、足回りのハード化によってRSの限界をさらに上げている。となると当然ながらコーナーへのアプローチを速くしないとレガシーの特徴を味わえない。ゆっくり走ったのではレガシィのおいしい部分を試すことは出来ない。
 したがってボクは例によって突っ込まんばかりのスピードをキープしたまま、コーナーをガンガン攻めだしたのだった。しかし、だ。クルマの限界をつかみ出して、きれいなドリフトが決まりだした頃、隣に座っていたP・ナンさん大騒ぎをし始めるではないか。
 最初は舗装路で決めまくるハイスピードのカウンターがあまりに見事なものだから、喜んでくれているのかな?と思っていた。ところがその中にストップとかいう言葉が入っているのだった。

 何のことはない、恐いからやめてくれといっていたらしい。よく考えてみれば、得体のしれない東洋人の横に乗せられ、イキナリ全開でコーナーを横になって抜けられたのではたまったものではない。
 でもだからといって攻めるのをやめたら、ボクの仕事にならないから「ベリーイージー」とか「コントローラブル」とかを連呼しながら結局最後まで全開で走り切ってしまった。
 敵もプロだから怒りはしなかったが、きっとたまげたのではなかろうか。P・ナンさんは日本に1年以上住んでいるそうなので、いつか機会があったらあやまろうと思っている(その後、仲良しである)。

 話はズレたけど、RS−Rは実際のところウデさえあれば非常にコントローラブルで楽しいハンドリングを持っている。峠道のファイターとしてはトップクラスの実力といえるだろう。
 RS−Rと同時にセダンにはGTというモデルも加わった。これはRSのAT仕様と考えてよい。主なポイントはエンジンがATの特性に合わせて200馬力になったことと、装備がグッと充実したことだ。価格はエアコンも標準装備で255万円となっており、これまたライバル車のギャランやブルーバードより安いプライス。
 レガシィのATはユーザーからのリクエストが非常に多かったという。これで雪の降る地方でもパワフルな4WDをATで楽しめるようになった。ややパワーが低くなったエンジン特性もATにはピッタリで、比較的低回転からパワーが盛り上がったため、想像以上にピックアップはいい。

 次なる試乗車はツインカムターボを搭載したツーリングワゴンである。こちらも200馬力のエンジンを搭載するAT車だ。このクルマの最高速度は、リミッターを外すと200キロを軽く超えるそうで、アウディ100アバントターボやベンツ300TEに匹敵する高性能ワゴンとなった。
 試乗してみると確かに速い。高速道路でアクセルを踏むと簡単に180キロに届くし、160キロ程度のクルージングなら何時間続けても平気だと思う。 試乗コースには高速道路の区間もあったのだが、P・ナンさんもここでは相当飛ばしながら「ベリーグッド!」を連発していた。
 長距離を走ってスキーに行く場合などはこれ以上の足はないと思う。やっぱりワゴンを買うならレガシーにトドメを刺しそう。また、今まではワゴンでコーナーを攻めたこともなかったのだが、今回は箱根のようなちょうどいいコースがあって、またまたコーナーを楽しむことが出来た(隣の人には迷惑な話だろうが)。
 特性はセダンと似ていて、コーナーの入口で強めにハンドルを切り込むときれいにテールが流れる。ワゴンにはやりすぎという声もあったそうだが、いやだったら普通にハンドルを切ればいい。クルマは曲がらないより曲がった方がいいに決まっている。



 そしてレガシィで依然として優秀だと思ったのはABS。レガシーはスカイラインGT−Rと同じ高度な4系統のABSシステムを持っている。
 普通の4WDに使われる2系統のABSはセッティングが難しく、初期のギャランやブルーバードは両方とも失敗作(マイナー後のABSはまだテストをしていない)。新型セリカは採用を見送ったほど技術的に困難なのだ。
 レガシィのABSは舗装路と雪道の効きを両立させており、安心して走ることが可能である。やっぱりコストのかかったシステムはいい。