編集部の中田クンから電話が掛かってきて「イーエフロクジュウサンどうでしょう?」だと。なんなのそれ? と聞き返したら、電気機関車だという。中田クン、テッチャンだったのね。ちなみにテッチャンというのは鉄道ファンのこと。自動車と同じく立派な趣味だと思うのだけれど、なぜか皆さん隠したがる。「隠れテッチャン」というコトバまであるくらいなのだ。電気機関車動かしたいとなれば、こらもう立派なテッチャンでしょう。じゃお付き合いしようか、と思ってスケージュル聞くと、丸2日間掛かるらしい。
 1日目は座学というか講習で、2日目にやっと短い直線を***mだけ走れるのだという。場所はEF63という機関車が走っていた碓氷峠のふもとにある群馬県の横川。こら厳しい修行じゃないの! テッチャンなら万難ハイして行くだろうが……。あいにくワタシも他とスケジュールバッティングしてる。じゃ今回に限り師範代が乗ってきなさい、ということでテッチャン中田選手の出場となった。しっかりホンモノの電車、いや『機関車でGO』を堪能してもらおうか!

 まず今回試乗するEF63の説明をしておく。この機関車、6,6%という碓氷峠の急坂上るために開発されたそうだ。6,6%と聞いてもピンとこないだろうが、100m走って6、6m上る勾配を示す。自転車だとひぃひぃ言ってしまうほどキツい。9両編成の特急列車引っ張ると最後尾まで210mある。機関車と最後尾の標高差14m。つまり14mの高さまで自重40トンくらいある車体を持ち上げているのと同じこと。猛烈にパワーあるに違いない。
 お次にスペックを。モーターは直流電源使い2550kw=3468馬力を発生(1両に578馬力のモーター6個積む)。必ず2両でペアを組むから、トータル7千馬力ということになる。凄いんだろうけど、全然想像出来ない数値。EF63のモーター使って電気自動車作ったら、レーシングカーみたいに速いんだろうなぁ。また、調べてみたら、あまり馬力あるモーター積んでも意味無いということが判明した。理由は簡単。グリップ低い鉄の車輪なので、パワーあってもホイールスピンしちゃうのだ。

 講習内容は主として車体構造とか碓氷峠の歴史、実際動かすときの注意点、始業前にしなければならないチェックポイントなどがメイン。たかが***mと思う無かれ! ホンモノの機関車を線路の上で動かにゃ、そのくらいの知識を必要とするのだった。確かにオーバーランしてしまい、脱線したら一人で起こせないもんなぁ。テッチャンにとっちゃ素晴らしい内容ばかりだったとか。講師は実際蒸気機関車まで運転した経験持つベテラン。往年のレーシングドライバーにいろんなハナシ聞くようなもんだろう。
 いよいよ試乗といく。最初にやらなくちゃならないのがパンタグラフを上げる作業。この作業、テッチャンにとっちゃ感涙モノと聞いた。フェラーリの12気筒エンジンを始動するようなモンか? トグルスイッチを操作すると、空気圧でパンタグラフは上がる。もし空気圧足りないときは、竹の棒使って上げる、とマニュアルに書いてあった。あらら。パンタグラフが架線に接触すると同時に、様々な計器やコーションランプが作動し始める。背後にある機器類から「キューン」的な音。

 マニュアルにそってメーター類をチェック(主としてブレーキ関係の空気圧など)。OKであれば、電車でGOのように、マスコン(マスターコントローラー)を引っ張る。マスコンの形状は電車でGOと全然違う。アッチはタダのレバーながら、EF63についてるのゴツい。レバーに沿ってミゾが1〜6速まで刻まれており、好みのポジション(ホントは荷重や速度によって違うんだろう)を選ぶ。今回は4速とした。マスコン動かすと同時に二つの音がする。
 一つは冷却系のファンのノイズとのこと。「ぶわーっ!」という音質なのですぐ解る。も一つが抵抗器の断続音。ミゾ1つ動かすと、回路から抵抗一つ抜ける。この音、けっこう大きく「ガチャン!」と響く。4ミゾ=通っぽく表現すると4ノッチ動かすと、ガチャン×4回。思ったよりスムースに動き出す。ノッチ動かしてガチャン音すると、クルマのシフトアップみたいに明確なショックが。ここまで読んで気付いたヒトもいるだろうけど、機関車動かすにゃ、パンタグラフ上げてマスコン操作すればいいのだ。

 考えてみれば電気で動くものなど全部そう。難しい手順などいらない。でも教官は厳しい! もはやワタシらがお客さんで、お金出して乗っている、という雰囲気でなかったりして。ほとんど新入りの運転助手みたいな扱いだもの。ちょっと間違えると「こないだ教えたでしょ!」と厳しく注意される。ま、テッチャン中田クンにとってみれば、この厳しさが快感だったりするようだけどね。鉄道ファンならぜひとも運転しい行ってみたらいかがか?