大分空港横のターミナルから、エイのようなスタイルしたホーバークラフトに乗り込む。バタンとハッチが閉まってエンジン回転数高まると、フワリと1m以上浮き上がる。こいつぁ妙な感覚。続いてプロペラノイズ高まり、魔法の絨毯のような不思議な乗り物がフワフワ動き出す。「S字コーナーでフェイント掛けたドリフト決めるから楽しんで欲しい」と船内放送がある、というウワサはウソだった。でも「ホーバークラフトの特性上、横滑り走行しますが安全上問題ありません」だって。ドリフト宣言だよこりゃ。
 ジツは試乗する前に、ここのS字コーナーまで写真取りに行った。ホーバークラフトを公共の交通機関として使っているケースは決して多くないけれど(ムカシは数カ所あったものの今や日本じゃココのみ)、中でも陸上を長く走るケースは珍しいそうな。しかもS字コーナーがある例など世界的に無い。ホーバークラフト作ったメーカーでさえ「よくコントロール出来ますね」と驚くのだそうだ。なぜか? ホーバークラフトって、極めて操縦するのが難しいから。100%ドライバーのカンに頼らねばならぬ。

 写真で説明しよう。海上航走してきた機体は、滑走路端の進入路でガバと上陸。そこから200mくらい走ったトコロから左コーナーが始まる。S字でカメラを構えていると、おいおい! 真横向いたドリフト状態で飛び込んでくるじゃないの! ラリーカーみたいだ。しかもイン側のカベと機体の距離ときたら3mくらい。ドリフトのお手本みたいなイン攻めしてる。で、最初のコーナークリアすると、今度はフェイントモーション掛けて再び激しいドリフト。またしてもピタリとイン攻めした見事なフルカウンターだ。ライン取りはカンペキに近いです。
 面白過ぎるぞ! 「ぶわ〜っ!」っと轟音立てつつ目の前を通過した機体は、真横向いたままずっ〜と滑りっぱなしでホーバー乗り場のターミナルまで行ってもうた。ちなみに機体の全長は対角線長で26mくらいある。一方、狭いブブンのコース幅34mほど。インに3mまで寄せても、後ろの余裕5mしかないのだ。車内から見ると一段と興味深い。ほぼ満席(105人定員)の背広姿のオジサン達乗ったまんまドリフトしてんだから。室内から見える景色ときたら、これまたドリフト中のクルマと同じ感覚。

 さて、ホーバークラフトという乗り物、おそらく仕組みについちゃ皆さん知ってると思う。機体の下から空気を吹き出して浮上。プロペラで前に進む。操縦系統は3つ。1)プロペラのピッチ変えると、風の向きを前と後ろに出来る。前進とブレーキ、左右のプロペラを逆方向にすれば、その場で向きを換えられるワケ。2)高速走行中はプロペラ後部にあるラダーで左右のコントロールを行う。3)細かい動きが必要な時は、フロント部の穴から空気を噴出させ(スラスターと呼ぶ)、横方向のバランス取る。といった具合。
 S字コーナーでドリフト走行してる時は、右手で2つのプロペラのピッチ制御し(写真参照)、さらにハンドル/ラダーにより細かく姿勢をコントロール。加えて鼻先ブレたら両足で操作するスラスター使う。4つの手足同時に全部別個に動かすんだぞ。こら難しいに違いない。自衛隊がホーバークラフトを導入する際、ココのS字コーナーで操縦方法のレクチャー受けた模様。船長サンに「難しいですか?」と聞いたら「風の強い時なんか難しいですねぇ。ま、ブツかることはないですけど」。狙ったラインを50cmと外さなかったような時は嬉しい、と言っていた。

 メカニズムも興味深い。浮上用と前進用のエンジンを二基ずつ計四基搭載。全てドイツ製の空冷V型12気筒のインタークーラーターボディーゼルで(タービンはポルシェなどに使われるKKK)、19,1リッターから最大570馬力を引き出す。高性能のバスに搭載されるディーゼルは、16リッターで400馬力くらい。エンジン見せてもらって驚く!冷却フィンときたら、まるでオートバイのように精密。エキゾーストパイプの取り回しなども3気筒づつの集合管になっており、ほとんどスポーツカーのエンジンだ。
 機体はオールアルミ製。航空機のような軽量設計らしく、四基の大きなエンジン込みで自重32トンしかない。全長22m。全幅1?mもあるボディサイズからするとメッチャ軽いと思う。そういや小さい方のホーバークラフト(75人乗り)は、1050馬力のジェットエンジンを搭載している。やっぱりホーバークラフトというのは相当に特殊な乗り物かも。妙に盛り上がってホーバークラフトのラジコン(キチンとプロペラ2つある)など買い込んで操縦してみたら、猛烈に楽しく夜中まで遊んでしまった。
 今回試乗したホーバークラフトは三井造船製。性能を少々解説しておくと、最高速度50ノット=約93km(1ノット≒1.852km/h)出して海上を突っ走り、その状態からラダー操作すれば、ドリフトしまくって回転半径900mでターン。ブレーキは通常ピッチを逆にして行うが(逆噴射みたいなもの)、緊急停止しようとしたバアイ、浮上用のエンジン切って着水するとクルマと同じくらいの距離で止まる。ただコレやるとスカートと呼ばれるゴムが壊れるので試したことないんですよ、と言っていた。皆さんも大分に行ったらぜひとも乗ってみたらいかがか。運賃は片道2750円。