スズキ アルト

スズキ

アルト

平成16年9月23日

<アルト試乗レポート>
●基本性能の高さこそベーシック軽の魅力!

 大胆にイメージチェンジした外観デザインについては賛否両論が分かれる新型アルト。しかし、アルトを語る上で最も重要な要素は“日常のアシ”としてきちんと活躍できるか? ということ。通勤を始め、買い物や子供の送迎。場合によっては遠出なんてときにも、肝心要の走りが良くなくては“アシ”としての役割に疑問符が付いてしまう。新型アルトは歴代アルトが受け継いできた「身近な生活車」「女性のためのクルマ」という一貫したコンセプトこそ普遍ながら、シャーシは走りに定評のある現行ワゴンR譲り。ボディ形状ならアルト有利と思われるだけに自ずと期待も高まります。

街の景色との調和はまずまず。そのうちこんな光景も珍しくなくなるハズでしょう。

○わかりやすい挙動が生む不思議な安心感
山崎(以下:山) まずは売れ筋になると思われる標準グレードのG(2WD、3AT、税抜き80万円)です。
国沢(以下:国) いきなりなんだけどさ、これパッソの1リッターモデルなんかよりずっと良くできてると思うのはワタシだけでしょうか? って感じ。
山 そこまで言っちゃいますか? でも、確かに助手席に乗っての第一印象も「スピード感ないな〜」ってことなんです。結構速い流れに乗って走ってるのに、なんとなく他の軽自動車に乗っているときより景色がゆっくり過ぎていく気がしますよ。
国 運転しててもスピード感ないし、とっても落ち着いてる。意外と言っちゃ失礼だけど、なかなかやるじゃないの! と思うくらい素晴らしいかも。
山 原因は何なんですかね? サスペンションが柔らかいってことは助手席からでもハッキリ分かります。
国 物腰柔らかって感じ。路面追従性高いよ。それから、タイヤとサスペンションのセッティングが上手く合ってるね。段差のある道路の繋ぎ目を越えても、実に良くショックを吸収してる。まあ最近の傾向からいくと、殆どの人はグニャグニャだと判断するだろうけど。
山 ある種アルト独特の味付けですね。でも、これだけソフトだとコーナーが心配じゃないですか? ロールしてグラッときたら怖いですよ。
国 必要以上に安定方向に振ったセッティングに比べれば全然マシ。実際コーナーリングを試してみてもロールした姿勢のままじんわり曲がれるし、柔らかいおかげで、クルマの挙動が手に取るようにわかるから、ゆとりを持って操作できるね。当然、安心感も高い。
山 最近は頑固なアンダーステアのクルマが多くなってきてますけど、そのあたりの特性はどうですか?

ロールしながらグイグイ切れ込んでいくハンドリング特性。意外に楽しめます。

国 普通に切れば、切った分だけ曲がるし、ブレーキ踏んで荷重移動すれば、オーバーステアにも持っていける。とにかくわかりやすい動きをするね。
山 強い横Gがかかったときのリヤタイヤの接地感が、シートを伝ってお尻あたりにうまく届いてきますね。意外に楽しいんじゃないですか。
国 個人的には好きな性格のクルマだよ。素直でコントロール幅が広い。欲を言えば高速域でもう少しドッシリさせたいけど、サスペンションとタイヤの性能を考えるとトータル的な走行バランスは相当優秀ですな。

○セットオプションの14インチは履きこなせません

見た目はグッと締まった印象になるのですが・・・・・・。

山 お次は唯一4速ATが採用された最上級グレードのXにセットオプションが付いたクルマです。元々税抜き90万円のXに、EBD(電子制御制動力配分システム)とブレーキアシストを持つABSや14インチアルミホイール、フォグランプ、それとドアサッシュ(枠の部分とAピラー)が外観アクセントを効かすためブラックになるといった装備が加えられて、税抜き97万5000円。他のグレードでABS(Eの4WDはABS標準装備)を付けようとすると、2万5000円のプラスです。単純に考えてそのほかの3つの装備で5万円ってことになりますね。スタイルとしては一番まとまりがあって若々しく見えますから、あえて価格的メリットの少ないXを買うような人は、かなりの確立でセットオプションを選ぶような気がします。
国 とりあえず4速ATの効果はそれなりに出てるよね。ギアのステップ比が小さいから、加速もEやGの3速ATよスムーズだし静粛性もある。
山 ミッションは5速MTも含めてワゴンRのモノをそのまま流用してるそうです(全車)。ATはXの4速のみロックアップ機構付きになります。
国 だからと言って「ゼッタイ4速がいい」ってならないのがアルトってクルマだと思う。実際街中をちょこちょこ走るなら3速ATで十分でしょ。どうせDレンジに入れっぱなしなんだから、ロックアップがアクセルのオン・オフに対する機敏さをスポイルすることだってある。10円安い洗剤を買いに幹線道路を飛ばして遠征するような人じゃないなら、4速ATの御利益少ないんじゃないかな。

山 14インチのタイヤはどうですか? 見た目のイメージは13インチと比べてだいぶ洗練度ありますけど。
国 まさにドレスアップ効果のみ! その他はまったくもって「いけません」。
山 走行中ずーっと感じるゴツゴツ感と足元のおぼつかなさは、13インチの良いイメージを180度変えちゃいますね。原因は何なんでしょう?

国 間違いなくダンパー。路面の微少な凸凹に対して頑として動かない。ダンパーが直立不動なんじゃないの? ってくらい突っ張っちゃてるからどうしようもないね。どこのメーカー使ってるんだろ?


山 実は……アルトは乗り心地に影響の大きい前輪がカヤバで、リアがショーワだそうです。ちなみに同じシャーシ使うワゴンRは前後ともショーワです。
国 出た〜っ! って感じだよ。もうメーカーの特徴そのまんま。タイヤ自体の縦バネ効果が利かない低扁平タイヤだと、ダンパーが路面からの初期入力をどういなすかってのは最大重要ポイントだよ。大きな入力に対してだけ減衰力を出せればダンパーとして合格ってワケじゃない。ハッキリ言って14インチタイヤ履いたらバツ。
山 165/55R14のポテンザですから、アルトにはかなりオーバークオリティな気がしますね。
国 つまりね。13インチだと、ダンパーのネガな部分をタイヤがほぼカンペキに補っていたってこと。
山 ロールなんかも若干大きくなっているような気がします。コレって、チューニング初心者が闇雲にインチアップしてハイグリップ履いた状態とまったく一緒ですね。タイヤが勝ちすぎて本来逃すべきコーナリング時の横Gまで掴んじゃうから余計に上体が揺すらちゃうし、ノーマルではタイヤが吸収するように設計されている範囲の入力が、動かないサスを通じてボディに響いてくる。まあ、そうやって乗り心地を悪くして始めて、トータルバランの大切さに気を使いながらクルマをイジるようになるんですけどね。
国 自動車メーカーがそれやっちゃダメでしょ。突起物が連続したとこなんかじゃちょっと異音出てるよ。同じシャーシ使うワゴンRの14インチはそんなことなかったから、ショーワのダンパーがしっかり機能してるんだろうね。
山 なんで同じダンパー使わなかったんでしょう?
国 そのあたりはスズキの事情ってとこもあるし、ダンパーメーカーを競わせることによって低コストでより良い製品を作らせようという狙いもあると思う。ただ、作る側にはワタシがどんなにトレーニングしても100mを12秒で走れるようにならないのと同じような状況があるんじゃないかな〜。
山 なんだか意味深な発言ですね。
国 いずれにせよ、ダンパーをワゴンRと同じショーワにしたらずっと良くなるだろうね。

○5MTのEは想像以上に元気!

ハッキリ言って素っ気無さ過ぎですが、足りないモノも無し。コストパフォーマンス抜群!

山 エアコン、パワステ、ラジオ、エアバッグなどの基本装備が付いて65万円(5MT、税抜き)という安さ自慢のEですけど、もし自分がアルト買うとしたら、間違いなくEの5速MT車にすると思います。決め手は700kgという軽量ボディを活かした走りの「楽しさ」ですね。
国 クルマを走らせるということの原点に返った気分になるのかな。遅いけど元気いっぱいで楽しい。人間の操作にこれだけ素直で忠実な動きをするクルマって貴重だよ。
山 12インチタイヤ(135/80R12。4WDはG、Xの標準と同じ13インチ)なんて絶滅危惧種ですけど、もしかしたらこのクルマ、ドラテク修行に向いてたりしません?
国 もう少しロール剛性上げて、ワンメイクラリーなんかやったら盛り上がりそうな気がするね。基本的なボディ剛性はなかなか高レベルだから素質は問題ナシ。燃費も良い(24.5km/L)からランニングコストだって安い。
山 ボディの曲げ剛性は旧型比2倍ってことですから、軽自動車全体で見てもトップクラスにあると思います。それに、開発担当の方も走りの楽しさにはチカラを入れたみたいで、シフトストロークなんかラパンSSより短いんですって。カチッっとまで全然いかないですけど、この節度感十分のしっかりした操作性が、女性(おそらくMT支持者は年配の方に多い)をターゲットにしたアルトだけでしか楽しめないってのはもったいない気がしますよ。
国 Eをベースにロールバーなど入れて競技車を作れば100万円くらいで販売できるんじゃないかな。JWRCでイグニスが活躍してることだし、スズキならではの超リーズナブルなモータースポーツを提案するってのも面白いかもね。

狭すぎず広すぎず。程良さ加減も選ばれる理由です。

 昨今の軽自動車市場を賑わしているモデルタイプと言えば、誰もが背の高いボディを持った車種を挙げるだろう。限られた空間を最大限活用することで、リッターカー以上のスペース効率を誇るクルマも当たり前になっているし、足回りの熟成が進み走行安定性もしっかり確保されてきている。現状を見る限り、もはや一般人の考える軽自動車のスタンダードは、アルトのようなボディタイプのクルマではなくなっていると言っても過言ではないかもしれない。
 しかし、こうして6代目アルトが生まれ、そのステアリングを握ってみると、素直に「なるほどなぁ」と納得させられてしまった。理由を一言で表現すると「ムリがない」のだ。無闇に背を高くしないことが、スタビリティ確保に躍起になる傾向を抑え、凝ったシートアレンジに代表される機能・装備を必要にして十分なレベルに留めることで、安全性を大きく向上させながらも軽量に仕上げている。その結果、限りあるエンジンパワーで不足のない動力性能を確保すると共に、ステアリング操作に忠実な動きを見せるクルマが完成。気軽に乗れることはもちろん、少々大げさかもしれないが、ドライビングを学ぶ素材にピッタリな特性まで持ち合わせているのには正直驚いてしまった。団体スポーツの例を挙げるなら、ヒーローインタビューの機会はないけれど、堅実なプレーがチームを支え、長年に渡りレギュラーで居続ける選手。新型アルトはそんなクルマだと思います。

Text:山崎 裕正

平成16年9月13日

《新型アルト発表》

●6代目は「街をアルトでSKIP!」

 新型アルトが発表になった。まずは外観を見ていただきたい。ビックリするくらい雰囲気が変わっている。これまでのような、どちらかというと地味なイメージは消え去り、スタイリッシュとさえ思えるほどメリハリのあるデザインを採用してきたのだ。

標準仕様のG。サイズはL3395mm×W1475mm×H1500mm。

○女性の意見を積極投入
 ターゲットユーザーは30歳代の女性。日常生活での使いやすさを徹底追求するため、社内に既婚女性のプロジェクトチームを作り、女性が使うことを前提とした細かな気配りを特徴にクルマ作りがなされている。ベージュ基調の和やかなインテリアにも、女性らしいアクセントが利かされ、シート表皮にパズル柄のパターンを採用するなど、遊び心のあるあたたかい空間演出にも抜かりはない。
 大きく変わったスタイルから想像できるように、車内スペースも旧型に比べ明らかに広々している。Aピラーをより垂直方向に立てるとともに、センターピラー上方の絞りをゆるめ、絶対的な空間確保に有利なボディ形状を採用。さらに、車内高が旧型比30mm増えたことも手伝い、ヒップポイントを上昇させながらも、ゆとりを感じられる広さを実現している。また、センターピラーは旧型に比べ50mmも後退。フロントドアの開口スペースが広がり、乗降性の向上も図られた。

○走りの確かさはワゴンR譲り

ベースはワゴンRと言うなれど、リアサス周辺は旧型アルトと同じ。コスト削減!

 1979年5月にデビューした初代アルトのキャッチフレーズは「街はアルトで歩こう」だった。今回それを「街をアルトでSKIP!」としていることからもイメージできるように、新型アルトはドライビングを楽しめる軽快な走りも得意なのだという。ベースとなったプラットフォームは現行型のワゴンR。ハンドリングに定評のあるワゴンRをベースとしたことにで、先代よりも正確かつ安定したコーナーリングを実現するとともに、乗り心地や静粛性の面でも格段にレベルアップを果たしているとのこと。加えて、車台を共通としたことにより、J−NCAPにおいて☆5つを獲得しているワゴンRと同等の安全性を確保できたということも見逃せないポイントとなっている。

信頼性の高い「K6A型」ツインカムエンジン。54ps/6.2kgmを発生。

 エンジンはスズキの主力機である「K6A型」を全車に搭載する。熟成の進んだユニットを細部に渡りリファインし、フリクションロスを出来る限り排除しているので、3気筒ながら滑らかな回転フィールを楽しむことができるという。組み合わされるミッションは最もベーシックなEと標準的な装備を持つGに5速MTと3速AT、上級グレードとなるXには4速ATのみを設定。燃費性能を高めるため、従来よりも全体的にハイギアードなセッティングが施されており、Eの5速MT車(2WD)で10・15モード24.5km/L(3AT車は20.5km/L)という軽自動車トップクラスの低燃費を誇っている(ただし、ATモデルだけで比較すると、唯一4速ATを搭載するXが21.5km/Lと最も良い数字)。車重が約30kg重くなっているので、動力性能的には大きく進化していないが、電子制御スロットルを採用したことにより「出足は上々」とのこと。後日、試乗でチェックしたい。

○気になるワークスの存在は?

上級グレードのX 14インチアルミホイールやフォグランプはセットオプション

 さて、我々クルマ好きが「アルト」と聞いて思い出すのが「ワークス」の存在。当然、「新型にワークスはあるのか?」というのはとても気になるところ。しかしである。開発担当者の方によると「現在のところ発売の予定はありません」。「アルトはあくまでベーシックな軽自動車としてやっていくつもりです」とのお応え。非常に残念ながらワークスの復活は無いと考えていいだろう。今のところ、ワゴンRやラパンで好評なマイルドターボエンジンを搭載する予定さえ無い(エンジニアの方によると、搭載したいがやはりコストパフォーマンス優先のためできないらしい)という話だから、アルトはあくまでミセスのシティムーバーとしての道を選んだということ。ちなみに、旧型アルトをベースとしているラパンのモデルチェンジスケジュールはまだ決まっていないそうだ。

○最低価格65万円ナリ

コチラが安さ番長のE。3速AT車でも70万円ジャスト!(税込み73万5000円)

 アルトを語る上で経済性の高さについて無視することはできない。新型アルトでもっとも安い価格のモデルは、エアコン、パワステ、AM/FMラジオ(スピーカー内蔵)、運転席・助手席エアバッグなど、最もベーシックな装備が付いたEの5速MT車で、なんと税抜き65万円。消費税込みでも68万2500円というバリュープライス。まさに、気軽に使えて経済性が高いという、軽自動車の王道を行く価格設定だと言える。ただし、ライバルであろうダイハツミラの価格を見ると、本当に安いのはEのみという感じ。アルトの標準グレードであるG(2WD、5速MT)とミラのベーシックモデルL(2WD、5速MT、5ドア)を比べてみると、両車消費税抜きで、アルト75万円、ミラ73万9000円。なんとミラの方が安いのだ。しかもアルトはオーディオがメーカーのセットオプションになってしまう。このあたりは価格の安さに加え、AM/FM(ステレオ)ラジオ標準装備のミラに軍配が上がると言わざるを得ない。

ベーシックという言葉がピッタリの作りです。が、ドアの開閉音はしっかりしてます。

 月間販売目標台数は6000台。旧型アルトが3000台位で推移していたことから考えると、カナリ強気だとも思えなくもない。しかし、それは「軽自動車のあるべき姿」と言わんばかりに基本性能を磨き上げた新型アルトに込める、スズキの期待の大きさ以外の何ものでもない。

Report:山崎 裕正