このクラス、激戦区である。強豪シビックがど〜んと存在。価格コンシャスのユーザーは、衝突安全性の低さを気にしなければデミオというメチャ安モデルも選択可能。さらに絶好調のトヨタからはランクス/アレックスという新型車まで出てきた。果たしてスズキに勝算ありや? その点、開発担当者に聞いてみた。すると意外な答え。曰く「シビックやランクスなどと勝負するつもりはありません。ワゴンRからの乗り換えユーザーを少しでも逃がさないようにするのが狙い。ですから目標台数も2千台くらいに設定しています」。
 う〜ん! 二つの点で驚いた。トヨタもホンダも1500ccクラスのクルマを開発するときは真剣だ。なんせ世界戦略車種なのだから。それこそフロントバンパーの先からリアバンパーの最後まで総力を込めて開発する。むろんライバル社から乗り換えてくれるように。二つ目が「2千台で利益を上げられる」という技術力。正確に言えば輸出分もあるだろうけれど、それを含めても4千台くらいか? 年間生産台数5万台のために1車種を立ち上げられるというのは、逆の意味で凄い技術だと思う。カローラなんて月間5万台だもの(しかもセダンのみで)。



 その代わり、仕上がりという点で厳しいだろうことは容易に想像出来る。だってそうでしょ。トヨタやホンダが総力をつぎ込んで開発したクルマと同等の完成度だったら大変です。その予想は走り出した瞬間「当たり」だと思った。試乗会場だったホテルの駐車場から、ハンドル切って国道1号線に出ると、すでに違和感タップリなのだ。具体的に書く。ハンドル切って曲がった後は、クルマが勝手にハンドルをセンターに戻そうとする特性を持たせる。手を離しても直進状態になると思う。その特性。もちろんワザとそうなるように設計されたもの。
 このクルマ、そいつが強く出来過ぎるのだ。グワッと戻ろうとする。しかも操舵力そのものが不自然。後で聞くと、燃費をよくするため特殊なパワステを使っているという。シビックもカローラも燃費向上のため電動パワステを使う。こいつは電動でないものの、油圧のまま抵抗を減らしているそうな。ただ新技術の開発というのはお金と時間が掛かる。やっぱり煮詰め切れていないな、と感じた。ま、スズキの軽自動車から乗り換えたユーザーなら気にならないかもしれない(スズキは軽自動車もやや違和感あるステアリングフィール)。

 乗り心地もイマイチ。おそらくロールオーバーしないように、という安全策なんだろうが、あまりに堅すぎる。ホンダやトヨタは「ロールオーバーしないだけでなく乗り心地も重視」という開発目標を立てた。これ、実現は難しい。ブッシュやダンパー、そしてサスペンションのアライメントなど微妙に絡んでいるから。机上の計算(おっと最近はコンピュータですね)だけでなく、試作モデルをたくさん作らねばならないワケ。エリオの場合、そこまでお金を掛けられなかったに違いない。とりあえず安全性を最優先した。だから乗り心地が二の次になってしまったんだと思う。
 エンジンやミッションは「十分に実用性あるも、質感の評価になると厳しい」。これまたコストの問題か? ザラついた回り方をするエンジンはムカシながらの日本車。ミッションもあまり感心せず、そればかりかギアの音まで車内に入ってくる。これでシビックやカローラよりウンと安ければ納得出来るのだが、そうでもない。ただエリオの開発目標は「毎月2万台前後売れるワゴンRから上級移行するユーザーの10%くらい取れればいい」という内容だった。それならこのくらいで十分かもしれないな。スズキファンのためのクルマです。