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平成16年11月15日
《新型スイフト発表&試乗レポート》
ソリッドなボディカラーが似合う躍動感溢れるエクステリア(1.5XS)。
「スイフトが新型になった」。ただ、こう言い切ってしまうと、少々語弊があるかもしれない。何故なら、これまでのスイフトもカタログモデルとしてしっかり継続販売されているから。このあたりをメーカー広報の方に伺うと、「ディーラーサイドでも“旧スイフト”と“新スイフト”と呼び分けているようです」。どうして旧型も売るのですか? とストレートに尋ねてみると、「今までのスイフトは“スポーツ”を除くと意外に年配の方のウケが良かったんです。実際に販売実績を見ても、40歳台から50歳台のお客様がメインで、60歳台ということも珍しくありません。しかし、新型スイフトは20歳台から30歳台の方をターゲットに考えております。安さがウリだった旧型とは全く別の、走りとデザイン性を追求したコンセプトのクルマなんですよ。当然特別安くもありません。となると、コストパフォーマンスの高い旧型スイフトをバッサリ切ってしまうのは市場の要望に反してしまいかねないとの判断です」との弁。当然、じゃあ何故「スイフト」という車名にしたんですか? ということになるのだが、「今後は旧型スイフトを大々的に宣伝していくことはありません。新型のイメージがしっかり定着したと判断された時点で新型に一本化します」とのこと。
クルマは軽自動車以外なら走ればいいという保守的な人に支持された感のある旧型スイフトだが、スズキにとってある意味“保険”のような立場になってしまった。今後、両車の販売動向が非常に気にかかる。
○テーマはデザインと走りの融合
ボトムの張り出しを強調した低く安定感のあるスタイリングが特徴。
さて、そんな“新型”スイフトのポイントを見てみることにしよう。エクステリアを見て感じた人も多いと思うけれど、フェンダーラインを強調したグラマラスさと前後灯火類の一体感ある配置は、どことなくヨーロッパのコンパクトカーに似た雰囲気を持っている。個人的にはシトロエンのC2あたりカナ〜とも思うし、他からはMINIにも似ているという声も聞かれたりした。「デザインは大きなアピールポイントです」という開発者の方の話しもあったが、確かに気密性の高いフォルムはVWルポなどと比べても見劣りしない質感を持っていると思う。JWRCでは“イエロー・ブレット(黄色い弾丸)”の愛称で親しまれていることもあり、ヨーロッパ市場においての新型スイフト(欧州名:イグニス)への注目度は高い。力強い出で立ちにはその期待を裏切らないというスズキの意思を見ることができるだろう。
土台となるプラットフォームは完全なる新設計。『Kei』をベースにしていた旧型に比べ、ねじりで1.3倍、曲げにおいては実に2.3倍もの剛性アップが図られており、走りを予感させる外観に見合った強靭な骨格作りが行われている。剛性確保に不利となるリアハッチの開口面積をあえて小さくしたこともこだわりのひとつだ。また、クラストップレベルのワイドトレッドを支える(前1470mm、後1480mm)前後の足回り関係も新設計。フロントには新たにサスペンションフレームを採用(旧型はロアアームをボディに直付け)することで、操縦安定性と静粛性を大幅に向上させた。
| エンジンは旧型と同じ1.3リッター(91馬力)と1.5リッター(110馬力)の2種類。内部に大きな改良こそないものの、吸排気系を中心に手を入れ、インテークマニホールドはスイフトスポーツと同じ大容量の樹脂タイプ。中低速域をより粘りのある特性にすると同時に、触媒を効率良く機能させるエキゾーストマニホールドを採用し、どちらも★★★★(1.5XS
4WDを除く)と平成22年度燃費基準をクリアした環境対応型に進化している。 |

アーシングは2本。バッテリーの右側にECUを配置。
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●試乗レポート
2002年のパリ・モーターショーでデビューした『コンセプトS』から始まり、昨年の東京モーターショーではオープンモデルの『コンセプトS2』として話題を集めたクルマが、新型『スイフト』として結実した。激戦区のコンパクトカー市場で生き残るため、スズキの新たな世界戦略車として開発されたこのクルマは、日本での発売を皮切りに、ヨーロッパ市場に向け12月からハンガリー工場(マジャールスズキ社)でも生産を開始(発売は来年初頭から)。そのほか、インドや中国でも同一品質で生産・販売されるなど、新型スイフトにはスズキの将来を担う重要な使命が課せられていると言っても過言ではない。
そんな入魂の1台を、開発担当の方のお話も交えつつ試乗レポートしてみようと思います。
○素直なハンドリング特性を示す高いシャーシ性能
ハンドリングは素直の一言! 最近の師匠はインカットがマイブームらしい・・・。
山崎(以下:山) (数時間前まで大雨が降っていた)ちょっと路面が濡れてますけど、素直にノーズが入っていく感じでハンドリングは名前通り(スイフト:swiftとは英語で速い、素早いという意味)の軽快さを持ってますね。
国沢(以下:国) それだけじゃない。ステアリングの支持剛性も旧型とは比べものにならないほど上がってる。正直それほど大きな期待をしていたワケじゃないから驚いた。ホンモノ! って感じ。
山 旧型はスピードののったワインディングロードを走ると、ちょっと足腰弱いかな〜って場面もありましたし、スポーツでもそれは変わらなかった印象があります。
国 そのあたりも全く問題無くなった。国産コンパクトカーの中でもトップクラスと言ってもいいくらい安定感ある。従来のスズキが作ったクルマとは思えない。
山 おそらく国内ではサイズの近さでパッソ/ブーン、キャラクター的にはイストやデミオ、それとフィットあたりが引き合いに出されそうですが……。
国 楽しさだったらパッソ/ブーンは全然相手にならないね。イストはレベル高いけど、(ハンドリングの)質感が足りない(基本設計が古い)。コントロールする楽しみはデミオやフィットに近いモノ持ってるよ。ただ、デミオより随分軽いからより思い通りに曲がる。
山 さっき路面が濡れていたところでアンダーステア出しちゃいましたけど、立ち直りも早かったですね。
これまでのスズキ車には希薄だった、強い“存在感”があります。
国 さっきのはトヨタのスーパーストラットサスペンションだったらアウトかもよ。スイフトはコントロールの幅が広いから特別な車両安定装置は付いてなくても安定した走りができる。アクティブセーフティ面も優秀。
山 ただ、最近のFF車にしてはタックインとか随分利きますよね。
国 でもスパーンと抜けないでしょ。あくまでマイルドに挙動が出る。一般的にクルマを楽しむならこれくらいがベスト。特に雨の日やスピード出てる状態だと単なる恐ろしいクルマになっちゃうからさ。全体的なハンドリングの味付けはニジュウマル。是非ともドライ路面で限界走行してみたい。
山 エンジンパワーは可もなく不可もなくといった感じですか?
国 いたって普通。1.3リッターだと急な登上り坂でもう少しパワー欲しいかなあって気はするけど、マニュアルで乗れば1.5リッターと同じくらいの動力性能あるんじゃないかな。
山 マニュアル車が用意されてなかったのは残念でしたね。でも、聞いたところによると、シフトフィールは現行のスイフトスポーツ以上にこだわったらしいですよ。クイックなタッチが自慢だそうです。
国 全体的に見てもかなり気合入ったクルマだよ。残るは、これまで所有満足度の高いクルマを作ってこなかったスズキのブランド力がどこまで通じるか? ってところにかかってくると思う。
○引き分けは“負け”に等しい
ここから先はスズキのチーフエンジニアの望月氏(なんと取締役!)と、ステアリング・サスペンショングループ長の竹内氏とのお話を中心に進めていきたいと思います。
斬新なまとまりのインテリア。旧型ではやや違和感のあったシートポジションも理想的です。
国 全体的には今度のスイフトはすごく完成度高いクルマだと思いました。
竹内氏 ありがとうございます。ハンドリングなどはいかがでしたか?
国 あえて聞いてくるということは相当自信があるんですね。確かに今度の電動パワステはなかなか良いと思います。電動パワステはステアリングインフォメーションの伝達が難しいですから。(新型)スイフトは上手に出来てますよ。
山 通常走行時の手応えも適当ですし、素早い切り替えしにもしっかりアシストがついてきます。アンダーステアが出たときも、その瞬間からタイヤの状況をしっかり伝えてきましたね。安心感高いと思います。
国 ただし、大いに気になる点があります。それは、乗り心地です。
竹内氏 具体的にはどんなところですか?
国 細かい入力に対してダンパーが反応してないんです。頑として動いてない感じです。縦バネ効果がタップリというタイヤ履いているワケじゃない(185/60R15のポテンザ080、1.3XE2WD車のみ165/70R14)ですから、路面の継ぎ目なんかを越えたときの印象が良くありません。
竹内氏 いろいろな条件を試した結果我々としてはベストだと判断したんですけど……。
山 ちなみにサスペンションサプライヤーはどちらですか?
竹内氏 フロントがトキコ(日立)さんでリアはカヤバさんです。
山 1.3リッターも1.5リッターも全く同じバネ定数で、同じ減衰力ですよね?
竹内氏 そうです。車重はほとんど変わりません(1.5リッターの方が10kg重い)ので同じです。
国 どうして前後で違うメーカーのダンパーを使うんですか? 同じメーカーのダンパーを使う方が、コストだって抑えられるはずです。セッティング面でも「ここをもっとこうして欲しい」という要求だってしやすいんじゃないですか?
竹内氏 スイフトを開発するにあたっていろいろなメーカーさんのダンパーを持ち込んで頂いたところ、トキコさんとカヤバさんが我々の求めるスペックに合った製品を持っていたということです。
国 ホントは他に何かワケがあるんじゃないですか? 例えばエンジニア側はコレを使いたいんだけど、「均等に仕入れないと困る」などという購買部の思惑があったりとか。
竹内氏 開発側としてはしっかりとデータを取って、同じ性能ならコストパフォーマンスの高いメーカーさんの製品を採用することにしていますから……。
ステアリングロッドやサスペンションの支持剛性は相当高い。
山 ちなみにヨーロッパ仕様も同じダンパーなんでしょうか?
望月氏 ヨーロッパ仕様は前後テネコのダンパーにコンチネンタルタイヤを履いています。テネコはヨーロッパでは一般的なので調達しやすいですから。当然私も試乗してますけど、かなり良い仕上がりだと思います。
国 それは興味深いです。想像するに、私もきっと良いだろうと思います。どうして国内モデルにテネコを使わないんでしょうか?
望月氏 やはりネックはコストです。国内メーカーさんと比べるとやっぱり高くつくんです。
国 でも、マツダのデミオやアクセラはテネコのダンパー使うことで、しっかりとダンピングの効いた乗り心地を追求しています。事実ヨーロッパ仕様に採用しているなら、コスト面などのハードルもそれほど高くないのではないでしょうか。おそらくテネコなどヨーロッパのダンパーメーカーを使えば、国内モデルと同じスペックでも印象の違う乗り味になると思います。せっかくほかの部分がすばらしいのに、ダンパーひとつで少なからず評価を落としてしまうのは非常に惜しいです。
望月氏 確かにおっしゃる通りです。新しいスイフトにはスズキの将来がかかっていますから。早速ヨーロッパ仕様を日本でテストしてみましょう。ジャーナリストのみなさんにも乗って頂きたいですし。もちろん私も1セット買って装着してみます。
国 スズキは軽自動車では不動の地位を気付いていますが、コンパクトカークラスでは“後出し”です。当然ながら、評価する側としては後から参入してきて“普通”の出来では盛り上がりません。先程も申し上げました通り、現状でも完成度は高いんです。でも、圧倒的に良いか? と聞かれればそこまではいきません。ライバルと同じレベルの範囲で収まっていたのでは厳しいと思います。「引き分けは“負け”」ではないでしょうか。
望月氏 そうですね。お客さんが持っているブランド力からしても、「スズキ」は他社さんとは違う“安いクルマ”のイメージを持たれているでしょう。そのイメージを払拭するためにもスイフトは今までのスズキ車らしくない、所有する満足感のあるクルマでなくてはなりません。
決して広くはないが4名乗車の実用に足るスペース。ホールベースは旧型比プラス30mm。
山 話は変わりますが、3ドアモデルは作らないのでしょうか?
望月氏 実はヨーロッパにはあるんですよ。やっぱり、向こうでは売れる土壌がありますから、発売開始からラインアップします。
山 日本での販売予定はありますか?
望月氏 マーケットから判断して今のところその予定はありません。ただし、3ドアが欲しいという要望が大きくなってくれば無視できませんね。
○新型スイフトスポーツへの期待
きっとこれを読んでくださっているみなさんの多くは、「新型スイフトの“スポーツ”はいつ発売されるのか?」ということに関心があると思う。その思いはボクも同じ。前出の望月氏にも伺ってみたところ「考えてはいます」と、明確な回答は得られなかった。しかし、そのにこやかな表情からは「いずれ出しますよ」というメッセージめいたものが受け取れた。考えてみると、現行スイフトスポーツで組み合わているのに、1.5リッターモデルにマニュアルミッションの設定がないというのも、走りをアピールするキャラクターとして不思議。
“スポーツ”はどんな出で立ちでデビューするのか? ホンキで楽しみです。
断言しよう。新型スイフトスポーツは現在商品化に向けて熟成中だ。詳細は分からないが、新型スイフトの基本性能の高さを考えると相当走り好きの心をくすぐるモデルになると思って間違いない。登場時期はズバリ! とはいかないけれど、来期WRCの中盤戦以降と予想しておく。いかにWRCファンと言っても、普通の人にとってインプレッサやランエボは高嶺の花。でも、スイフトなら世界の桧舞台で凌ぎを削るマシンと同様のクルマが現実的な価格で手に入る可能性は高い。チャレンジング・スピリットを纏ったクルマは、たとえ安くて小さかろうがカッコイイと思う。ひとりのスズキ車オーナーとして言わせて頂きます。「スズキさん。期待してますよッ!」。
Text:山崎 裕正
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