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レクサスLS460試乗レポート
国:オーストリアでレクサスLS460に乗ってきました。
新:今年最大の大物と言われていますから実際のユーザー層とは全く関係ない僕たちも興味ありますし、クルマに興味のない一般の方からも注目を集めそうですね。
永:まず、LS460のコンセプトというか開発の意気込みのようなものからお伺いしたいのですが。
国:ここが今までのLS430/セルシオと一番違うところだと思う。3代目までのセルシオって5メートルくらいの全長を有し、4リッター級のV8エンジンを積んでいるということからすれば確かにベンツSクラス、BMW7シリーズのライバルだった。でも、実際にはSクラス、7シリーズの対抗馬というより「Eクラス、5シリーズくらいの値段で上級モデルに近いクルマが買える」というところが売りだったワケ。
新:言葉が悪いですけどある意味「お買い得ですよ!」みたいな。相当レベルの高い中での話ですけど。
国:まあそんなイメージ。いろいろなところで真正面からは勝負できなかった。でも今回のLS460はすべての部分で真っ向勝負をしようとしている。値段も日本ではLS460の方が安いけど、海外ではSクラス、7シリーズとほぼ同じ値段となるみたい。
新:今までなんだかんだと言っても結局は「値段が安い」ところが売りの1つだった日本車とは一線を画しているわけですね。
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内外装にレクサスの個性が出てきた
永:ではスタイル&インテリアから聞きたいと思います。
国:今まで3代に渡るLSって、どこか”ベンツ流”だったと思う。それが独自の路線というか”レクサス流”になったと思うね。
新:非常にクリーンな感じのエクステリアですね。
永:高級車を求めるユーザーにはベンツのような「強そうな感じ」を求める層も多いと思うんですね。その部分では先代のLS430も優れていました。でも、今回のLS460はそういう路線ではなく、「上品」とか「知的」という言葉が似合うデザインではないでしょうか。
新:ターゲットが「単なる高級感だけでは満足しない顧客」とありますからそんな方々に受けそうですね。
永:「強そう」なベンツ。「スポーティ」なBMW。「気品」のあるジャガー。「知的な」レクサスとうまく個性が分かれたと思います。
伸びやかなフォルムはたくさんの人から支持を受けそう
国:デザイン面で意外だったのはフロントグリルの上端がヘッドライトの上端より下なことね。
新:どういうことですか?
国:ベンツの場合、Cクラスではグリル上端が下、Eクラスではグリル上端とヘッドライト上端が同じくらい、Sクラスではグリル上端がヘッドライト上端より上という位置になっているんだよね。そういって上下関係をはっきりしているわけ。それに対し、LS460はグリルが下という形をとってきた。
新:僕はドッシリ構えている感じがして好ましく思います。
国:別に悪いとは思わなんだけど驚いたよね。しかし、1つだけ懸念事項もある。
低めのグリルは問題ない?
新:何ですか?
国:それはVWのフラッグシップ「フェートン」が同じようにグリルを下にして失敗していること。
新:確かに、世界的にもあまり売れず、日本へは導入されていませんね。
国:まぁ他にもブランド性とかクルマ自体の出来とか、売れなかった理由は色々とあるのだろうけど。で、LS460のデザインについては君らもなかなかいいという評価ね?
永&新:いいと思います。
永:ではインテリアにいきましょう。私はレクサス流の主要なスイッチ類が縦型に並んでいる使いやすい常識的なものと感じます。
国:そんなところかな。相変わらず質感は最高だし。
ライバルとは明らかにタイプの違うインテリア
新:Sクラスや7シリーズのような先進的な感じではないですね。
国:あれが先進的なの?
新:ダイヤル式の操作システムとか……。
国:確かに珍しいけど、ナビの縮尺を変えるにも日本車よりも操作が複雑。エアコンの操作にも悩む。ワンプッシュじゃ出来ないんだから。7シリーズなんか初めて乗ったら動かし方も分からないと思う。あれはベンツ、BMWが意地でも日本車の真似をしたくなからあんな風になったんじゃないかな。普遍性ではずっとLSの方が上。
永:LSのオーディオは初代から定評がありましたけど、LS460はどうでしたか?
国:乗ったクルマにはマークレビンソンが付いていたんだけどなかなか良かったね。今までのトヨタ車に付いてたマークレビンソンってボリューム上げていくとイマイチだった。
新:「なかなか良かった」くらいなんですか?
国:いいんだけど、飛びぬけた個性がない。例えば私が一番いいオーディオだと評価しているのはクライスラー300C。なぜかっていうとすごくパンチがあるからなんだけど、LS460にオーディオは飛び抜けて凄いところはなかったんだなあ。普通に凄い。
永:もしクライスラーが“パンチ”で勝負ならレクサスは“メチャクチャきれいな音質”みたいな部分を出して欲しいという話ですね。
国:そんなとこ。ちょっと厳しく聞こえたかもしれないけど、SクラスのBOSEや7シリーズなんかに比べたらずっといいからね。ドイツのクルマってあんまりクルマの中で音楽を楽しむっていう考えはないから。
新:室内空間はどうでしたか?
国:先代よりもかなり広くなった。座ると一瞬で分かる。車格もワンランク上がった感じ。
永:Sクラス、7シリーズと遜色はないですか?
国:遜色ないね。
見るからに広いリアシート
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走りではどこまでライバルに迫ったか?
新:内外装の次は走りですね。
永:今回のLS460はシャーシ、エンジンなどほとんど新設計ですね。サスペンションも形式が4輪ダブルウィッシュボーンから4輪マルチリンクに変わり、全車エアサス仕様となるようです。
新:まず気になる動力性能の面からいきましょうか。
国:普通に考えれば先代の4.3リッターでも十二分なんだけど、高級車っていうのはどんどん上を追求し続けることに意味がある。4.6リッターの直噴ツインインジェクターになった。それで「どうですか?」と聞かれたらまず「速い!」と答える。
仕上がりは上々。銀色のカバーはなんとマグネシウム製!
永:ベンツS500、BMW750iと比べて負けていませんか?
国:負けていないどころかLSの方が優勢。新しい8速ATもつながりはいいし、ショックもないし。ほとんど文句の付けどころはない。
新:ほとんどというのはホンの少しは何か改善ポイントがあるんでしょうか?
国:ヨーロッパの150キロ、200キロ以上というスピードレンジで走っていて「少しスピードを上げたい」とか「坂に差し掛かったのでアクセルも少しだけ踏んだ」と考えてちょうだい。そんなケースだと敏感にシフトダウンギアする傾向がある。せっかくスポーツモードがあるんだから、すぐシフトダウンするのはそっちに任せておいてDレンジではもっと変速を少なくするようにして欲しい。といっても日本のスピードレンジでは全く出ない症状だろうから大きな問題じゃないと思うけど。
永:資料によると0〜100kmが5.7秒、ゼロヨン13秒8ですからね。あんなに大きな4ドアセダンが3.2リッターの本格スポーツカーであるポルシェケイマンSに近い速さというのは強烈ですね。
国:最高速も250キロでリミッターに当たるようになっているけれど、カットしたら280キロ近くまで出るんじゃないかな。
アウトバーンで競争になってもまず負けないはず
新:ここまで速いと燃費がちょっと心配なんですけど。
国:燃費は正確には測っていないんだけどマルチインフォメーションディスプレイによると、大体先代モデルと同じような数値だった。LS460になって排気量が上がって、車重も100キロ以上増えていることを考えるとかなりいいと思う。
永:パワートレーン系に弱点はない、ということですね。
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さらなる進歩はユーザー次第
新:動力性能と来たので、次は「曲がる」と「止まる」をお願いします。
国:意外と知られていないけど、伝統的にLSってトヨタの中でというか日本車全体の中でもハンドリングのレベルは高かった。こんなに大きいクルマとは思えないほどグイグイ曲がっていくし、2代目の後期以降はVSCが付いたからパワースライドは出来なくなったけどVSCの付く前はパワースライドも自由自在なくらいコントローラブルだった。
永:LSってすごいクルマなんですね。
国:で、今度のLS460もこの伝統は受け継いでいてすごくいい。簡単に言ってしまえば今までのLSの正常進化版。おまけに今度はVSCのカットスイッチまでついたからテストコースやサーキットなら大迫力のパワースライドが出来そう。
新:ここまでの部分ではほとんどSクラス、7シリーズに勝っているということですね。
ハンドリングは文句なし
国:でも、ちょっとだけ劣っている部分もいくつかある。
新&永:何ですか?
国:乗り心地とブレーキ。
永:乗り心地はどんな領域で問題が出るんでしょうか?
国:基本的にはものすごくいい。小さい入力はブッシュなんかでカンペキに近いくらい抑えてるし、大きい入力でもちゃんとダンピングが効いてる。だけど、道路の繋ぎ目みたいな中くらいの入力だとダンパーが滑らかに動いていない感じなんだよ。
新:ブレーキというのは?
国:ブレーキは絶対的な効きそのものとかフェード性ではなくて、タッチ。微妙に踏力を変化させた時のリニアさが物足りない。
永:このあたりはパーツの寿命との関連ですか?
国:大きいと思う。開発の方にこのことを指摘してみたら、十分認識していると言っていた。だけど日本のユーザーには「ダンパーやブレーキローターはクルマの寿命と同じ」という変な常識があるからどうしても長い寿命を持たせなくてはならない。おのずとパーツの質感は寿命を長くした分落ちる、となるわけ。
新:ここまでよく出来たクルマがホンの少しのことでベンツ、BMWに見劣りしてしまうのはもったいないですね。いっそのことレクサスがこの常識を変えればいいんじゃないですかね。
永:輸入車から買い換えるユーザーを狙っているんだったら、輸入車に乗っている人は消耗するのを分かっているんですから「減るけど性能のいい部品」を付けてもいいと思います。そんなに金額は変わらないでしょうから、その分フィーリングが良くなる方がレクサスの評価も上がるでしょうし。
日本仕様はエアサスのみになるようだ
新:レクサスを買うようなユーザーだったら、例えば5年に一回ブレーキ系のパーツ交換5万円、ダンパー交換10万円くらいそんなに気にしないと思うですが。どうせ整備はディーラー任せでしょうし。
国:あるいは新車を注文する時に「寿命は長いけど性能が落ちるパーツ」と「寿命は短くなるけどその分性能のいいパーツ」をお客さんが選択するようにしてもいいと思う。そうすれば後から文句もでないだろうし。
永:なんかクルマのオーダーメイドみたいですね。
新:小さなものだったらスーツ。大きなものだったら家なんかが当てはまると思いますが、一番お客さんが嬉しいのはオーダーメイドです。だったらレクサスがクルマでも可能な部分だけでいいからオーダーメイドに近いことをすればステータスも上がるんじゃないですかね。
国:ついでにオーディオの音質なんかも好みの合わせてロムの書き換えなんかしてくれてもいいと思う。
永:なんか「オーダーメイド」というのもレクサスの言う「おもてなし」の1つになるかなと思えてきました。ついでにヨーロッパ勢が定評あるシートはどうでしたか?
国:300キロ近く走ったんだけど、ちょっとライバルより劣るかな。でも決定的なレベルではない。日本だと長距離といっても大体は300キロくらいだから、その範囲だったら何ら問題は出ないと思う。
新:セルシオ時代からの売りだった静粛性は良くなりましたか?
国:良くなったねえ。全域で静かになった。
永:私には今まで以上に静かになったというのが驚きです。
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ハイテク装備がLS460の売りになる?
新:最新技術はどうですか? ドライバーモニターなどはともかく、レーンキーピングアシストとかで何か変化はありましたか? もっときちんと介入してくれるようになったとか。
国:レーンキーピングアシストは従来から大きな変化はない。介入の仕方もそうだけれど、完全に車線の中央をキープするよう制御するにはダンパー含むサスペンション自体がもっとしっかりしていないと難しいと思う。
新:それはどういうシチュエーションにおいてですか?
国:例えば路面が左斜めに傾いているところだと少しだけ右にハンドルを切らないといけない。そういった状況となった場合、人間だと先を予測しながら微妙な舵角を与えて修正しながら走る。けれどLS460はダンパーの弱点をカバーするためブッシュの容量を大きく取っている関係上、電子制御では舵角の修正が間に合わないんじゃなかろうか。でもヨーロッパにこういう電子デバイスはないから、仕上がれば強い武器になる可能性はある。
新:ブレーキホールド機能はどうですか? 強くブレーキ踏み込めば自動的に停止状態を保ってくれるそうですけど。
国:便利。ヨーロッパよりも渋滞の多い日本の方が有り難味はあると思う。
新:個人的に心配しているのは、アクセル踏んでブレーキホールド機能が解除された時、飛び出すような出足になってしまわないかということなのですが。クリープで穏やかに走り出すところが、「ドン!」と出てしまって高級車らしからぬスタートになってしまいそう。
国:それは電子制御スロットルのセッティング次第でどうにでもなる部分。実際、全く違和感なかった。
永:プリウスやエスティマにも付いているインテリジェントパーキングアシスト(自動バック装置)は変わりましたか?
国:去年の11月にマイナーチェンジされたプリウスと同じで、初期のプリウスよりグッと使いやすくなった。大きいクルマだからプリウスなんかよりも利用価値はありそう。しかし本当に気合い入ったクルマだよ。今トヨタが持っている信頼性ある技術を全部搭載したって感じ。もしかすると将来、LSの持っているハイテクデバイスがライバルに対する大きなアドバンテージになる日が来るかもしれない。
LS460からプリクラッシュセーフティは追突にも対応
新:それだけ新型LSに対する意気込みが強いのでしょう。
永:なんといっても新生レクサスの本命車種ですからね。
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どんな販売戦略を取るか楽しみです
新:師匠はLS460、売れると思いますか?
国:う〜ん、ハード面では負けていない。それどころかむしろ勝っている部分も多い。最初は間違いなく売れるだろう。でもベンツSクラスやBMW7シリーズのユーザー層を引っ張ってこられるかと聞かれたら「少し難しいかもしれません」と答える。
新:それはどうしてですか?
永:伝統みたいものですか?
国:Sクラスなんかを従来からある高級な料亭。LSを新しく開店した高級な料亭だとしよう。
永&新:はい。
国:どちらも高級な食材、おいしい料理、素晴らしい雰囲気を持っている店だとする。これ、クルマで言えばハード面のことね。では、違いは何か。それはもう「イメージ」でしょう。
新:ふむふむ。
国:高級な料亭って、味や雰囲気を比較しても優劣つけがたいワケ。となればどちらに行くかは、その店が持っている伝統やステータスで決められるよね。こういった伝統があるとか、こんな人(例えば芸能人など)から「いいお店として知られてますよ」とかさ。
新:なるほど。それってブランドイメージですよね?
国:そう。だから、仮に同じクオリティの味、雰囲気などを実現していたとしても、ブランドイメージで負けていたらお客さんは来ないワケだ。
新:そういった点でまだLSは厳しいと。
国:そうだなぁ。だから、後発って「少し勝っている」くらいじゃダメ。伝統ある高級な料亭に対する大きなアドバンテージが無ければ真っ向勝負できない。
永:「圧倒的な何か」があれば、ということですね。
国:それはレーンキープアシストに代表されるハイテクデバイスでも後から出るハイブリッドでもいいと思う。
新:やはり「ブランドイメージ」なのですね。
国:高級品っていうのはやっぱりイメージが第一だから。
まとめ
師匠のお話を聞いていると、ブランドイメージの部分で多少の不安を感じるものの、クルマの出来には相当な期待を感じた。考えてみるとここまで入ったクルマは考えてみると久しぶりだと思う。LSとしては初代で感じた以来の衝撃を感じた。このLS460の市場からの評価、売れ行きもすごく気になるけど、LS460投入によってレクサス店自体にも活気が出るか? ということも非常に興味深い。何かと興味の尽きないLS460の発売は約1ヵ月後である。9月後半にはレクサス開業から始まった高級車市場の争い 第2ラウンド開始となりそうだ。
レポート/永田恵一
追記
クルマの仕上がりについちゃトヨタ渾身の作であることは間違いなかろう。気になるのは宣伝戦略。おそらく日本で最も優秀とされる広告関係者を使うに違いない。もしアメリカでのレクサスの如くTVとかの宣伝にチカラを入れてくれば、けっこうガックリきます。日本やヨーロッパの場合「ブランド」と呼ばれる商品はTVのCMと対極の存在。やればやるほど大衆色が出てしまう。イメージ広告さえマイナス効果になると思う。かといって「クラスマガジン」と呼ばれる高級そうに感じる媒体で行うミエミエの宣伝もブランド構築のためのステップとしては不適。というか「広告」という行為そのものからしてカッコ悪い。ブランドの多くは「良い物を売っているのだから宣伝など必要ない」という姿勢を打ち出してます。「良い」とか「優れている」といった一般の宣伝コピーはもちろん「気持ちよい」とか「圧倒的な質感」みたいな表現すらするべきじゃありません。といったようなことは商売下手の自動車ヒョウロンカでも解ること。したがって前出のようなことは絶対やってこないと思う。どう展開するのかホントに楽しみです。 (国沢光宏)
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