RV車に求められる”性能”のなかで、相当大きな割合を占めるのが「たくさんの人と荷物を運べる」ということじゃなかろうか。そう考えたとき、一番ピッタリなのが1BOXカーだったりする。でも1BOXカーはデメリットが多すぎる。まず運転しにくい。車高が高く安定性が悪いため、コーナーが嫌いになる。動力性能だって低く、商用車の足回りを流用するため乗り心地だってよくないのが普通。ようするに広さを第一にし、快適性を犠牲にしているわけだ。
 しかもカッコ悪いから困る。1BOXカーに乗っていると、間違ってお金持ちには見えない。シティホテルに乗り付けるには気が引けるし、スキー場に行ったってリゾート気分は味わえだろう。唯一カッコよく見えるのが背の高い4WD車だけど、余計運動性能が落ちてしまい、駐車場でも苦労する。そんなこともあって、ややスペース効率は悪くなるにもかかわらず2BOXワゴンが人気になっているのだ。そこにイキナリ登場するのがエスティマである。このクルマ、元来アメリカで売ることを想定した大陸志向の1BOXワゴンなのだけど、日本のニーズにもピッタシはまりそう。



 試乗レポートを書く前にスペックだけ紹介しとこう。エンジンはツインカムの2400tをミッドシップし(エンジンを寝かしドライバーの直下に押し込んである)、基本は後輪駆動となる。フルタイム4WDも選ぶことが可能だ(ちなみに2、4リッターの自動車税は2リッター車の5500円増しで年に4万5千円。任意保険も7月の改正で2リッターと同じになったので、エスティマは3ナンバーながらサイフの負担は少ない)。
 サイズはさっすがアメリカン。全幅1、8m。全長4、74mとなる。ちょうどディアマンテのサイズに近く、このあたりが『国際感覚』なのかもしれない。実車を見るとさすがにボリュームがあって、高級感も漂う。スタイルについては先月号でも書いたように、個性的。トヨタはタマゴの形だといってるけど、白いボディにヒゲでも描けばハツカネズミのようでもある。アメリカのデザイン(エスティマはアメリカにあるキャルティがデザインした)にしては珍しく”可愛らしさ”が感じられた。
 RVを買うときにけっこう迷うのが、1BOXカーにするか、2BOXワゴンにするかという点であろう。1BOXカーは広さの面では非常に優れているけれど、運転しにくく動力性能も低め。4WDを選ぼうとすると、車高も相当高くなってしまう。また、ノーズの部分が短いから、事故の際の安全性も気になるところだ。一方2BOXワゴンの方は性能や安全性こそ乗用車並だけれど、肝心のスペースユーティリティもあまりかわらないとくる。これではRVとしての魅力も半減してしまう。
 そこに登場したのが、新世代のRV車であるエスティマだ。車室寸法は1BOXカーに匹敵するくらい広く、それでいて車高はあまり高くない。運転感覚も乗用車に近く、安全性だって確保されている。すでに同じジャンルに入るMPVというモデルも出ているが、なかなか気になる存在だ。ところが日本での発売は5月30日。試乗出来るのは6月中旬という。とても待ちきれないのから、先行販売されているアメリカで試乗してみることにした。ちなみにアメリカでは『プレビア』というネーミングとなっており、売れ行きは順調とのこと。

 エスティマの特徴はというと、やっぱりスタイルだろう。最近のトヨタ路線をキチンと取り入れており、従来このクラスが持っていた「商用車イメージ」を完璧に無くしている。MPVと比べても大幅に新しいと思う。なかでもフロントの丸さと、Bピラー(前から2本目のピラー)のラインはきれい。個人的にはかなり好きだ。
 デザインはアメリカにあるトヨタデザインセンター『キャルティ』によるもの。セリカもここの作だから、CDはエアロパーツを付けると0、34という優秀な値をマークしている。
 エンジンは驚くことにフロントミッドシップ。前輪直後に、2、4リッターの直列4気筒が75度に傾けて搭載されている。もちろん床下だけでは補機類(発電機やエアコンのコンプレッサー、ラジエターといったもの)が納まらないから、エンジンからシャフトを出しボンネット部分で機能させている。少しでも車室スペースを広くしたいということなのだろうが、よく実現したものである。

 駆動は後輪。FFではないのが面白い。アメリカで乗ったクルマは「オールトラック」と呼ばれるフルタイム4WDバージョンだった。これはセンターデフ+ビスカスLSDというオーソドックスなシステム。エンジン自体も新開発ということで、2TZ-FEと呼ばれるハイメカ系のツインカム。排気量は2438ccとなり、最高出力は138馬力だ。売りはトルク特性。トヨタの資料によると、1200回転から5500回転の間は最大トルクの90%を発揮するとある。
 試乗車はプレビアで最も高い4WDのLE。装備は非常に充実していて、ツインエアコンからパワーウインドウといったものまで標準。その他、18万円のABSと(1ドルを160円に換算。以下同じ)、20万円するCDを含む9スピーカーオーディオが装着されており、価格は378万円とけっこう高い。こちらではボルボ740GLワゴンと同じ。参考までに2輪駆動のLEはというと、1万8698ドル(同300万円)となっている。

 ではいよいよ試乗だ。コラムタイプのレバーを動かしDレンジを選ぶ。サイドブレーキは全席と後席が自由に行き来できるウオークスルーをより完全にさせるため、運転席のドア側にあった。走り始めて最初の印象は「まあまあパワーがあるな」ということ。車重があるため、動力性能はあまり期待していなかったが、カローラ程度の元気はある。最近はパワーのある1BOXカーもあるが、スタート時の挙動は(フロントがピョコンと持ち上がる)ほぼ乗用車だ。
 しかしペースを上げようとすると、やや苦しくなる。1気筒当たり600ccもある4気筒エンジンのバランスがよくないのか、振動が出るのだ。このあたりは3リッターのV型6気筒を搭載するマツダMPVを支持したい。パワー自体も高回転まで回したところで盛り上がらず(フラットトルクでは当たり前か)、やや残念だった。

 実は昨年の東京モーターショーの時、プレビアの横にいた年配の技術者に「3リッターくらいは必要なのでは?」と聞いたのだが、そのときは不愉快そうに「充分走ります。乗ってみてから判断してください」といっていた。きっとトヨタでは本気でパワーがあると思っているだろうが、やはりこの価格ならもう少し走って欲しいものだ。タコメーターがついていないので詳しくはわからなかったが、4千回転くらいまでが気分のいいところだろう。
 乗り心地は素晴らしい。ハーシュネス(細かい上下動)が上手に押さえこまれているから、高級感があるのだ。アメリカの道はコンクリート舗装が多いため、けっこう凸凹がある。したがってハーシュネスの多いクルマだと、常にゴトゴト揺すられる。
 プレビアは路面からくる細かい振動をかなりカットすることに成功しているようだ。もちろん、これはブッシュと呼ばれるゴムをソフトにすれば実現出来るのだが、今度はハンドリングまでふにゃふにゃになってしまう。このバランスが高度に取れているというワケだ。
 コーナーを攻めるとロールはするものの、不安感は少ない。というのも、背は高そうに見えるが、ロードハギングレシオは(タイアでいう扁平率みたいなもの。%が低いほうが平べったい)97%と、乗用車並みなのだ。
 というわけで、プレビアは室内スペースは1BOXカー。使い勝手は乗用車という新しい時代のファミリーカーなのかもしれない。