「3列シートのあるミニバンが欲しいのだけれど、大型車並の車幅を持つオデッセイやシャリオじゃ奥さんの手に余る。かといって5ナンバーのイプサムは、3列目シートのスペースに物足りなさを感じてしまう」というユーザーも多いようだ。確かにオデッセイの車幅は1m77pあって、セドリックやクラウンより広い。イプサムの場合、シート自体の横幅などはオデッセイと比べて勝るとも劣らないものの、いかんせん3列目シートの使い勝手に欠ける。トヨタはこのあたりの事情を分析したのだろう。ライバルと戦えるクルマを作るべく決心したのだった。
ただボディ幅まで広げると、日本で使いにくくなる。幸いなことに室内寸法からすれば、イプサムだってオデッセイに決定的な差を付けられているワケでもない。トヨタはサードシートの居住性と、ホンの少し高級感で負けているだけだと判断。かくしてイプサムをベースとするガイアが企画された。5ナンバーサイズに収まる全幅1m69pはそのまま、長さを9p伸ばした上、サードシートのヘッドスペースを確保。さらにイプサムよりインテリアやエクステリアのグレード感をアップさせ、ちょっと高級な雰囲気に仕立ててきたのである。
ハード面でのトピックは新しい4WDの採用。初期型イプサム(マイナーチェンジでイプサムもガイアと同じ4WDに変更された)で採用していた従来の4WDは、センターデフにビスカスLSDを組み合わせたフルタイム式。カルディナやカリーナEDといった乗用車と同じ方式を使っており、ゴトゴトした乗り心地や、顕著に感じる遅さ(100s重いのだから無理もない)、10%以上悪い燃費、最小回転半径も5、9mとFFより0、4m大きい等々、雪道での走行性能と引き替えにしなければならないことが多すぎた。こらアカン!
トヨタ御自慢の新4WDシステムはどうだろう? 従来のフルタイム4WDの場合、通常の走行時から文字通り前後に50%ずつの駆動力を伝達している。ところが雪道などの滑りやすい路面でない限り、4輪に駆動力を与える必要などない。つまり後輪への駆動力はムダなのだ。この分をカットすれば燃費の向上が期待できる。FFより100s重かった重量も問題の一つ。新しいシステムは減量化を行っており、FF+80sに抑えた。結果、10・15モード燃費でFFより0、2q/リッターのダウンに留めている(高速燃費はそれほど良くなっていない)。
トヨタによれば「予想より売れていないんですよ」なのが、ディーゼル。先行販売しているイプサムのディーゼル比率は10%以下に留まっている。このクラスのミニバンを買うユーザーは環境に対する知識レベルが高いため、売れないのも当然か? 参考までに書いておくと、ガイアのディーゼルはこのクラスで最高レベルの低公害タイプながら、人間に無害な二酸化炭素の排出量が10〜15%低いだけで、その他有害な物質をクリーンなガソリンエンジンより10倍以上出す。
ただ排気ガスのことを一切無視すれば、決して悪くない完成度を持っている。アイドリングから巡航まで騒音レベルは予想外に低いし(さすがに早朝深夜のアイドリングは厳しい)、走行性能も十分満足できた。特に2千回転前後のトルクが太いので、街中でアクセルを踏んだ瞬間の力強さなどはガソリンに迫るほど。テストコースでの最高速は140qに届くそうな。ディーゼルにしちゃ黒煙の排出量も少ない。これで排気ガスがクリーンになればディーゼルだってイケると思う。
ハンドリングや乗り心地については基本的にイプサムと同じだと思ってよかろう。ミニバンということを考えれば、手放しでホメてしまえるレベルだ。一言で表現するとすれば「シャープ」なのである。ベースになったイプサムは、高い走行性能を要求されるヨーロッパでガンガン走れるように作られた。その良い部分をガイアもキッチリ持っているのだ。ミニバンのなかでこれだけのダイレクト感を持ってるクルマは存在しないと思えるレベル。それでいてピョコピョコしないのが凄いところ。乗り心地も良好。
エンジンは135馬力の2リッター4気筒で、オデッセイの150馬力2、3リッターと比べれば劣るような気もするものの、ガイアの車重は売れ筋グレード同士の比較で140s軽い。加速性能の目安となるパワーウェイトレシオからすれば、ほぼ同じ数値だ。二酸化炭素の排出量を考えれば200t小さい方が有利だし……。燃費はキッチリと勝っており、10・15モードでオデッセイより10%くらい高いデータ。ガイア11、6q/リッターに対し、オデッセイ10、6q/リッターとなる。
イプサムとイチバン違う部分が3列目シート。とは言えシート自体の横幅やレッグスペースなどはオデッセイと比べたって勝るとも劣らなかった。しかしヘッドクリアランスに欠けるのが難点。イプサムのスタイルを見て貰えば解る通り、ボディ後端はなだらかに落ちた形状。イプサムというクルマ、ヨーロッパ市場も重視したので、少しでも空気抵抗を減らそうとしたんだろう。高速での移動が多いヨーロッパの場合、空力はヒジョウに重要なスペックなのだ。
ガイアはどうか? 実車でチェックしてみると、明らかに快適である。身長183pある筆者でも、ガイアなら長時間サードシートに座れるほど。理由は簡単。イプサムなら完全に頭が屋根にくっついてしまうため、ダラけた格好で浅く座ることに。当然ながらヒザの位置は前に突き出さねばならず、2列目シートの背もたれに突き刺さる。ヘッドスペースに余裕があればキチンと深く座れ、ヒザの位置もググッと手前で収まるという寸法。イプサムなら身長165pまで。ガイアだと180pだって座れると思う。
個人的にゃ納得してないものの「インテリアの質感も上がった」と評判。ワタシはクルマに関しちゃスレてるらしく、インチキ木目を見ると冬の海辺的寂しさを感じてしまう。ガイアの木目”調”パネルも明らかに大インチキ調なので、大いに見苦しい。ただ他のヒトに聞くと「いいじゃない!」と言う。ま、一般的にはいいのかもしれぬ。木目調パネル以外の素材感は確かにイプサムよりワンランク高く、オデッセイやシャリオと比べても負けていないレベルになった。
ラゲッジスペースもイプサムと違う。ガイアは全長を9p伸ばしたが、そのうちの7pをラゲッジスペースの拡大に使っている(3列目シートの位置はイプサムと全く同じ)。イプサムのラゲッジスペースはオデッセイと比べれば負けていたものの、シャリオよりはやや広かった。ガイアでオデッセイに相当迫り、これまた乗用車型ミニバンとして必要な容量を確保したと評価してよろしい。
3列目シートはステーションワゴンと同じく左右独立で背もたれを倒せるようになった。この方式だと最大6名乗りつつ、3列目シートの半分をラゲッジとして使えるようになるから便利。長距離ドライブなら5人+ラゲッジを積むことが可能だ(ロングドライブだと2列目シートは2名までが快適)。両方倒しておけばフロアがフラットになり、これまたステーションワゴン感覚で使える。
さらに大量の荷物を運びたくなったなら、2列目シートの背もたれも前に倒せばよい。これまた左右独立で倒せるので、スキーのような長尺物を収納する際は2/3列目の片側だけ使える。ステーションワゴンでスキーを室内に積むと3〜4人乗りになってしまうが、ガイアだと4〜5人までOK。また、2列目シートがキャプテンタイプになる6人乗り仕様も設定されており、これを選ぶと2列目シートの快適性と引き替えに、ラゲッジ容量を少しだけ失ってしまう。
なんだか気に入ったのがラゲッジスペースに設けられた床下収納。けっこう大きなトランクBOXになっており、3列目シートのピラーなどもキッチリ収納してしまう。フタの部分は”つっかえ棒”を装備し、落ちてこないようになっているのも凝ってて楽しい。釣り道具だの工具だの洗車用具などをしまうのに便利だ。その他、2列目シートを倒すとテーブルになる、とかテクニックの割に狭い駐車場を使っているヒト用のバックモニターを装備出来るなど、必要と思えるモノは全部装着してあるか、オプションで選べると思ってよかろう。