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イプサム
今までのイプサムも決して悪いクルマでなかった。ハンドリングいいし、サードシートの居住性だって新鋭ストリームにこそ負けるものの、5ナンバーサイズの乗用車型ミニバンじゃ最も広い。しかぁし! 唯一物足りないのが『車格感』です。同じ価格帯のライバルであるオデッセイと比べられてしまえば、明らかにワンランク下の車格に感じてしまう。「子供っぽい」と表現してもいい。このあたり、メーカーも解っていたらしく、宣伝で「イプー」なる幼児向けのキャラクターを使うなど、若いファミリー層がターゲットユーザーとした。それでも200万円するクルマとして考えれば物足りない。
オデッセイと比べてしまうと、やっぱり一クラス下に感じてしまうのだ。オデッセイをマークツークラスとすれば、イプサムはコロナクラスといった雰囲気。乗った感じも明らかにオデッセイの方が高級である。当然ながら売れ行きも伸び悩む。トヨタにもそういった意識があったらしい。新型イプサムを開発する際「全く新しいクルマにしよう」と決断したそうだ。真正面からオデッセイと勝負してやろうじゃないの!ということ。実際、スペックを見てもイプサムと思えないほど大きくなっている。従来型の車幅はコロナと同じ1695mmだったけれど、新型になってマークツーの1760mmと同等になった。
興味深いのはボディサイズ。オデッセイの4750mmに迫ってもよかったろうが、イプサムって日本とヨーロッパを主なマーケットとしている。新型プリメーラもそうだけれど、ヨーロッパのミドルクラスは全長4600mm台。そこで120mmの延長に抑え、4650mmとしたワケ。それでもクルマを見て明らかに「大きくなった」感じるほど。ボディだけでなくエンジンも完全にワンランク上。従来型は旧式かつシンプルな構造を持つ2000cc135馬力だったが、新型はトヨタ最新の技術を投入して開発された2400ccの160馬力。エスティマやハリアーなどラージクラスに使われるエンジンと全く同じである。
排気量上がっただけでなく、内容まで上級になったということだ。1回のモデルチェンジでこんなに大きくなった例は少ないんじゃなかろうか。ちなみに専門家筋から高く評価されているのが車重。ボディサイズでふた回りくらい大きくなり、エンジンも20%排気量上がった。さらに従来型イプサムより高いレベルの衝突安全性を目指したたため、ボディの補強もタップリ行っている。なのに70〜80kg(おおよそ5%)しか重くなっていないのだ。5%の車重増加分は20%もの排気量アップによって、むしろ動力性能的に評価すれば向上している。興味深いことに燃費は従来型より良くなった。
ボディサイズが大きくなれば、必然的に室内スペースだって広くなるというもの。従来型はオデッセイと比べ、ハッキリ「狭い」と感じたけれど(特に室内幅)、新型なら「同等」レベル。衝突安全技術の進歩により、ボンネットを短くしてもクラッシャブルゾーンの確保が可能になったせいだ。もはや大人6人乗車でも2時間くらいの移動なら、クレーム出ないくらいの居住空間といってよかろう。こうなるとエスティマまでライバルに入ってくるかも。3列目シートを除けば、上級モデルのエスティマと比べてもいいくらい。「エスティマやオデッセイだと少し大きく感じる」という方にすすめておく。
凄いのは価格。イメージとして20%程度の車格アップをしたのに、ほぼ同じ装備内容を持つ従来型から7万円しか値上げしていない。トヨタの場合、普通なら400mm違えば25〜40万円程度高い価格設定になることを考えると、思い切った戦略だと言えよう。とは言えナビゲーションを付けようとすればイッキにイプサムが割高になるから商売上手。
ウンチクはこのあたりにして試乗といきましょう! Dレンジをセレクトし、ナビ画面見たら「あらららら!」。左右の景色が見えてるでないの! これがウワサのブランドコーナーモニターね。ワタシの家の近所にはアタマを突き出さないと全く安全確認出来ないようなブラインドのT字路がけっこうある。というより自宅の駐車場からバス通りに出る時も、左右の見通し悪いのだ。こら凄い! 思わず走り出すの忘れ、しばらく使い勝手のチェックなどしてみました。こんな装置あれば、全く安心してT字路も走れるというモノ。便利な新兵器が出てきたもんだ。けっこう欲しくなってしまいます。
気を取り直してスタート。アクセル踏んで走り出すと「今までのイプサムと全く違うね!」。従来型イプサムは「ごく平均的なファミリーカー」だった。4ドアセダンに例えればコロナやブルーバードのようなクラス感である。カローラクラスより乗り心地や質感高いけれど、マークツーに届いてないな、といったイメージ。新型の乗り味はハッキリとワンクラス上のクルマに感じた。そういえばイプサムの開発親方が「出来ればイプサムというネーミングにしたかったんです」と言っていた。開発に着手した段階から、ワンランク上のクラスのクルマを作ろうとしたのだろう。
ということで最初は動力性能。従来型より車重が若干重くなったものの、1500kgに160馬力は必要にして十分なパワー。前述の通り重量増よりパワー増の方が勝る。アクセル踏み込めば、ストレス一切なく走り出す。0〜400m加速はオデッセイの2,3リッターより若干速いということなので、17秒台中盤は確実か? テストコースで試乗した時は180kmに届いた。常用回転域の使い勝手を重視したバランサー付きの2,4リッター4気筒はさらにスムースさを増しており、普通に使う回転域だと気になる振動や騒音もない。4WD仕様も90kg増に収まっているため、動力性能の低下もミニマム。ただ一般的に言えるコトながら、FF仕様より4WDの方が騒音や振動レベル大きくなる。もし雪道を走る機会が少なければ、燃費や乗り心地、動力性能などで有利なFFを選ぶべきだ。
例によってワザと事故直前のような危機的状況に追い込んでみると(アンダーステアやオーバーステア出してみる、ということです)、今までのイプサムの良い部分をキチンと残した上、さらに安全性側に余裕持たせたハンドリングに仕上げてある。急ブレーキ掛けても前輪だけ沈み込む、というかツンのめる感じは全くなく、クルマ全体が沈み込むようなフィール。これ「アンチノーズダイブ」というサスペンションのコンセプトなんだけれど、ここまで上手にセッティングするのは難しい。絶対的なコーナリングスピードも高く、これまでならタイヤを鳴らしてしまうような速度でカーブに飛び込んだって、何事もなく通過してしまう。
そうそう。高く評価したいのがブレーキ。以前本誌で定員乗車テストした時に書いたけれど、エスティマ最大の弱点はブレーキ。昨今の国産車の中では比較的早めにフェード(ブレーキのオーバーヒート。効きが突如悪化する)してしまう。イプサムの開発チームはこの弱点を認識していたようで、エスティマよりブレーキ容量を大きく取ったそうな。今回、意地悪なテストを行ってみたが、効きが低下するようなこともなく信頼性高し。ABSの制御は優秀。これなら雪道も安定した制動性能を発揮してくれるんじゃなかろうか。
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