未完の大器? レクサスIS
新:もうすぐ国内デビューして1年のレクサスですけど、何故今になってまたISに乗ろうと思ったのですか?
国:なんか乗りたくなったんだよ。
永:乗ったことないので楽しみです。
国:今回乗るのは3,5リッターエンジンを搭載してさらに装備を充実させた「IS350 versionL」ね。
実物を見て! エクステリア
永:何となく「目立たない」といったイメージのあるISでしたが、現物を見ると結構いいですね。
新:全長は4575mmとベースの同じレクサスGS(4830mm)やクラウン(4930mm)、マークX(4730mm)よりだいぶ短くなっています。ホイールベースも短く上記の3車が2850mmあるのに対し、ISは120mm短い2730mm。逆に全幅はワイドで、1795mmもあります。良く言えば「控えめ」、悪く言えば「目立たない」と言われるレクサスのクルマですが、そこかしこに良さを感じさせるデザインだと思います。
永:オーバーハング、すごく短いです。
新:よく見るとフェンダーが大きく張り出して、何ともグラマラス。ISってどうも目立たないイメージでしたが、いい意味で裏切られました。全体として控えめな印象を持たせながらも、随所随所に色気を感じさせるデザインを盛り込んでいる。これってレクサスの狙い通り?
国:そうとも言えるかもね。
永:レクサスのデザインコンセプトは「L−finess」。先進性と精妙さを兼ね備えたデザインを目指したそうです。
新:先進性と精妙さ……。そ、そこまで僕には分からないッス。僕の印象は「控えめだけどグラマラス」です! だから写真で見るとあまり印象的でないけれど、現物を目の前にすると結構いい印象を受けるのではと。それからクルマのフロントは低く、そしてリヤの部分を高めにデザインされているので、なんか前傾姿勢に見えますよね。クラウチングスタートするみたい。ところで洗車した時に強く感じたのですが、塗装にもかなり気合い入ってますね。輝きが違うし、塗装の厚みも感じる。
国:塗装のクオリティは素晴らしいと思うよ。
永:僕はレクサスの中で、ISが一番カッコいいと思います。
新:後ろから見ると、キャビンがいかに絞り込まれているか分かりますね。気になる人は、一度現物を見てみるのが1番かと思います。
キャビンが絞り込まれているエクステリア
改善の余地アリ! インテリア
永:せ、狭い。
新:「狭い」と表現するか「包まれ感がある」と表現するかは難しいところ。けれどもISの場合はやはり「狭い」と表現したくなりますね。
永:運転席なんて、頭がルーフに届いてしまいそう。
新:これ、師匠だったら頭がつっかえてしまうのではないですか?
国:残念ながらオレは君たちと違って座高が低いので、頭はつかない。
永:横方向も結構タイトです。
身長160cmの弟子永田でも頭上空間に余裕ナシ!
国:BMWの先代3シリーズは同じくらい狭かったから、トヨタもこれでいいと思ってしまったのだろう。現行3シリーズは大型化して中も広くなった。ISにとって狭いのはかなりマイナスなポイントだな。
新:後席なんてもっと厳しいですよ。やっぱりエクステリアデザインを優先した結果こうなったのでしょうか。それともタイトにしてスポーティ感を出すために、わざとこうしたとか。
永:多少タイトな感じを出そうとは思ったかもしれないけれど、やはりこの狭さは厳しいと思います。
新:ドライバーズシートを身長173cmの僕の位置に設定して、その後ろに座るとかなりキツイです。頭上空間もギリギリ。これ、正直カローラより狭いのでは……。
永:加えてフロントシートの下に足が入らないから、これはかなり厳しい。
国:狭いよなぁ。4人乗って長距離移動は、ちょっとお断りしたいくらい。
後席空間厳しい〜
新:背筋をキチッと伸ばして深く腰掛けても足元空間に余裕はないし、横方向も頭上空間もタイト。購入を考えている人は後席も確認してほしいです。
永:まぁドライバーズセダンだからこれでいいと思う人もいるかもしれませんけど。
新:それから、ダッシュボード周りのプラスチック(ドアパネル上部を含む)の質感も低い気が……。目に付く部分なので、もうちょっと質感を上げて欲しいです。
国:ちょっと頂けないね。
永:木目の質感が高いだけに、何とももったいない。値段も高いクルマなのに、これでプレミアムだとは正直言い難いです。そうそう、スマートキーをどこに置くかも迷いどころ。できれば専用のポケットなり置き場なりを作ってくれるとありがたい。
新:そうですね。
永:ただし本革の質感はとても高く、このクルマの大きな美点です。
新:無駄にピンと貼ってなくて、しっとりしているのがいいです。
永:荷室の容量はどうでしょう?
新:はっきり言って不足気味です。ゴルフバッグは4つ入らないので、4人でゴルフ行くのは厳しいでしょう(ゴルフバッグ3つなら何とかなるかも)。
永:なかなか厳しいですね。
新:室内空間を見ても思ったのですけど、ISはクーペバージョンがあってもいいと思います(雑誌等で登場がウワサされていますね)。思い切ってクーペにすれば、例えば短めなリヤオーバーハングも、もう少し長くできるし……。そうすればエクステリアデザインも伸びやかさが出ていいのでは。
分かりづらいですけど、ザラザラして質感低い部分です
いろんな意味で”トヨタ風”な乗り心地
新:こうして乗っていると、路面のある程度いい所では乗り心地もいいです。
永:それはトヨタのクルマ全体に言えることかもしれません。
新:問題は大きなギャップを乗り越えた時どうなのかですよね。僕が個人的に美点と感じるのは、路面のザラザラ感をしっかりと遮断していること。先日アウディA6に乗る機会があったのですけど、結構路面のザラザラ感を遮断できていなくてとても気になった。路面のザラザラ感って、上質感を大きく損なう要素であると思うのです。その点ISはよく遮断しているので評価できます。
国:確かにISはよく遮断できている。ただ、大きなギャップを超えた時の衝撃は厳しいな。
永:やはりダンパーがいけないのでしょうか。
国:ダンパーだろうね。路面のいい所ばかりならともかく、色々な路面の存在する日本では、積極的に乗り心地のいいクルマとは言えない。
新:でも例えば、エスティマでは不快と感じたギャップもISではちょっと改善されている気がします。「不快と感じるギャップ」のレベルが、ISはエスティマよりちょっと高いような……。
国:まったく同じレベルだと思うよ。エスティマで不快と感じたギャップは、ISでも同じように不快。
課題はやはり「大きなギャップ」。技術よりメーカーの意識の問題
永:そこまで大きなギャップではなくても、ギャップの続く路面ではかなり揺すられますね。
国:それもやはりダンパーがきっちり動いていないからだと思う。路面のある程度いい、つまりブッシュでショックを吸収できる場面なら、かなりいい乗り心地を確保できている。けれどもダンパーが仕事しなければいけないような大きなギャップでは、まだまだ改善の余地がある。
新:全体的には悪くないと思うのですが。
国:そうだね。積極的に乗り心地いいとは言えないけれど、決して悪くもない。例えばディーラーで試乗した時、試乗コースが路面のいいところばかりだったら、試乗した人は「乗り心地いいクルマだ」と感じてしまう。もし試乗するなら大きなギャップも体験してほしい。安い買い物ではないのだから。
新:最寄りのディーラーへ行って、自分の知っているコースを試乗できるといいですね。
永:話は変わりますが、静粛性は高いです。
国:トヨタの得意とするところだけに、十分なレベルだと言える。
永:アイドリング中なんか、プリウスかと思うくらい静かですよ。
新:今回搭載されている3,5リッターエンジンはクラウンやGSにも搭載されるエンジンですから、静粛性もスムーズさも抜群。ロードノイズも満足いくレベルに遮断されています。スポーティモデルとしては、静かすぎるくらい。
走りのレベルはクラストップ!
国:このエンジンはパワー出てるね! さすが新型のD−4Sエンジンだよ。
新:ポートインジェクションと筒内インジェクションの2つを持つ、トヨタの最強エンジンですね。回すと思わずアクセルを戻したくなるくらい速いです。特に70km/h以降なんて、ワープする感覚にも似た、何とも言えない加速感であります。
永:この加速は豪快。むしろ荒っぽ過ぎるかなと思うほど。もしかしたらS2000より速いくらいなのでは。体感的にはそれぐらい速く感じます。
新:パワーウェイトレシオもS2000とそんなに変わらないから(ほぼ5kg/ps)、場合によってはS2000より速いかもしれません。
国:スペックの分だけきっちりパワー出ている感じ。
パワフル! 世界最高の3,5Lエンジン。
新:ただ2000回転までのトルクは、排気量から想像されるより薄いと思います。停止状態からの加速がかったるいと思っちゃいました。
国:そうかぁ? オレは逆にスタートが唐突になりすぎると思うよ。
永:僕も低速トルクは思ったより薄いと思いました。絶対的には十分なのですけど、もっと力強さを感じさせてもいいと思います。
国:そうかなぁ。よく分からない。唐突に繋がるISのようなトルコンの設定のまま低速トルクの厚いエンジンを組み合わせるとスタートの時の”G”がコントロールしづらい。大事な人を乗せてジェントルに運転しようとすると、スムーズなスタートがしにくいよ。
新:スタートは唐突になるかもしれませんが、でもそれは最初のホンの一瞬で、そこからの力感がないと思うのです。
永:もしかしたら、スタートが唐突になるのは電子制御スロットルによるものではありませんか?
国:そうだな。電子制御スロットルの制御がイマイチなのかもしれない。それはシフトタイミングにも関係してくる。
新:そうですね。例えばコーナーを曲がった後直線に入りかけた時、穏やかに加速しようとアクセルを少し踏んでも、シフトダウンしてちょっと唐突な加速になってしまうことがあります。電子制御スロットルとシフトプログラムがうまく噛み合っていないのかもしれませんね。
国:こういったエンジン関係のマネジメントを、もっと煮詰めてほしいと思う。ただ、エンジンのパフォーマンス自体は3,5リッターエンジンとして世界最高と言い切れるよ。
新:エンジンも素晴らしいですけど、コーナーリング性能も驚くほど高いですね。ノーズがスッと入ってその後グイグイ曲がっていく。クルマが自分から曲がりたがっている感じもします。限界だって驚くほど高い。
永:コーナーリングについては文句のつけようがありません。少なくとも僕たちには過剰なほどの性能を備えていると思います。
国:BMW3シリーズやベンツCクラスと比べても、限界はISが圧倒的に高いね。スタビリティも高いし、本当によく曲がると思う。普通の道ではVDIM(車両姿勢制御装置)を作動させることさえ難しいんじゃないかな。
永:パワーもあるから、その気になればパワースライドを楽しめそうですね。パワステはどうですか?
国:う〜ん、最初はちょっと不自然に感じるけど、慣れると気にならなくなるかな。ただ、気持ちいいと言えるレベルではない。
永:なるほど。ちなみに僕は、パドルシフトのカチカチ感がとても気に入りました。
凡人新美には、限界高すぎです
国:走りについてはこのクラストップであることに間違いない。ただ、ブレーキは要改善。踏力に対して効きが不自然だよ。ちょっと踏んだだけでも急に制動力が立ち上がるし。やはり寿命を意識するとこうなっちゃうのだろうね。
永:ISを購入した人は、自分でダンパーとブレーキを性能重視のものに交換してほしいです。そうすればかなりいいクルマになるはず。
国:そうだね。ただ、トヨタはブレーキについてもダンパーについても、寿命を長く取ることによって生じるデメリットは十分承知しているよ。もう考え方の違いなんだろう。「これくらいの性能を持っていれば、日本ではOK。寿命を優先させた方が多くのユーザーに喜ばれるのではないか」と考えているんだと思う。
新:ちなみにスポーツサスペンションを装着するバージョンSに、師匠は試乗したんですよね? どうでしたか?
国:固い。ガチガチの乗り心地が好きな若い人でない限り、あの乗り心地は厳しいかもしれないね。ノーマルサスペンションであれだけ限界高いのだから、スポーツサスペンションである必要はないと思う。
新:ハリアーハイブリッドのスポーツサスペンション装着車でも思いましたけど、トヨタって「スポーツサス」を作るのがあまり上手ではありませんよね。限界高いながらも、もっとしなやかな乗り心地にしてほしいです。
永:そう思います。
試乗後記
師匠曰く「LS460は完成度高いけど、ISはまだまだ。これから完成度を上げていってほしいと思う。ただ、買うなら350ではなく250かな。250ならライバルに比べて価格も安く、絶対的なパフォーマンスだって十分」とのこと。
実際、IS250を選べば400万円ちょっとで装備を充実させたグレード「バージョンL」が買える(ナビは全グレード標準で、バージョンLでは本革シートまで奢られる)。ただ師匠は、「相手がBMWの323iだとちょっと厳しい」とも。323iはナビなどの装備がつかないで480万円。ISのベースグレードが390万円だから、その差は90万円。ナビなどを付けたとして、その差は100万円ちょっと。100万円の差は小さくありませんけど、でも100万円出せば「323i」が買えるとなると、何とも悩ましい選択となってしまいます。乗り心地など、BMWの勝っている点はまだまだありますから。
それから弟子永田は「逆にクラウンが気になる存在になってしまった」と述べています。クラウンの方が中は広い。走りのレベルも同じくらいだし(ちょっぴりISの方が限界高いけど)、乗り心地はクラウンの方がいいくらい(ロイヤルの場合)。それにクラウンは国内で伝統あるブランドとして認識されていますし、値段も似たようなものだから(2,5アスリートなどは安いくらい)、クラウンも当然ライバルと成り得ます。
最近、若い人の間でレクサスのイメージはどんどん上昇中。それは師匠も言っていたし、僕も感じていることです。となると、もしかしたら5年後くらいにレクサスは大成しているかもしれません。ブランド力はクチコミで確立できるものでもあるから、若い人から一気にブランドイメージ向上が果たされる可能性もあるのです。個人的に驚いたのが「あの入りにくいようなディーラーがいいよね」という意見。高級さを前面に押し出しているディーラーは、レクサスの国内デビュー前に色々とウワサされたものだった。「ジーンズを穿いた若者は入れてもらえない」とか。もちろんそんなウワサはウソだったのですが、でもそんなウワサが流れるような雰囲気を持っていたわけです。もちろんレクサスにとってそれがいいのかどうかは分かりません。ただ、「敷居の高さ」がうまい具合に働いているという側面もあることは事実であります。
もうすぐ旗艦車種「LS」が発売される。そこで世間のレクサスに対するイメージがどう変化していくのか。楽しみにしているのは、僕だけではないはずです。
レポート/新美瑛生
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