新しいカルディナを見た瞬間「あれれれ?」と思った。予想してたよりずっとコンパクトだったからだ。ライバルであるレガシィの全長は、5ナンバーワクをほぼ一杯に使い切った4680o。アベニールも大きなマイナーチェンジでラゲッジスペースを延長。4610oまで延ばしている。なのに新しいカルディナの全長を見ると4520oとなってるじゃないの。サイズからすれば、MクラスとSクラスの中間といってよかろう。興味深いことに新型カルディナのライバルになるプリメーラワゴンの全長は、期せずして4***oと近い。
 なぜか? おそらくヨーロッパの市場を意識しているからだろう。ヨーロッパのMクラスは日本車よりやや短い。ベンツCクラスワゴンで4487o。ベクトラワゴンが4477o。アウディA4は4479oとなる。カルディナもプリメーラもヨーロッパ市場で主力となっているモデルなので、日本のMクラスより少し短くしたという寸法。ただ実用性からすれば、必要にして十分のユーティリティを確保出来るサイズだと思う。大人が4人キチンと座れ、遊ぶ道具もタップリ積める。



 さてGT−Tだった。今までのカルディナは走りを重視したグレードをラインナップしていない。GTという165馬力のG系(ハイパワータイプ)ツインカムを搭載するモデルもあったけど、残念ながら高性能とはいいかねた。スポーティなSWが欲しい、というユーザーは、全部ヨソに取られてしまったワケね。トヨタも旧型カルディナにターボエンジンを搭載するべく頑張ったようだが、ボディ剛性に問題を抱えており開発を断念したというウワサ。高性能エンジンを積むためには、それなりのボディを持っていないと難しい。商用車仕様と共通設計だった従来型じゃ対応出来なかったに違いない。

「コレじゃアカン!」ということで企画されたのが新しいカルディナである。搭載する3S−GTEはバリバリのスポーツモデル、セリカGT−FOURやMR2をも凌ぐ260馬力を発生。トヨタ最強の2リッターなのだ。GOA規格にグレードアップしたボディは剛性も十分といったところ。そいつに加え、フロントにスポーツカーに使われるストラットタワーバー。リアにもトノカバーの役割を果たすパフォーマンスロッドを入れている。これでカルディナ最大の弱点となっていたボディ剛性不足はカンペキに解消したと言ってよかろう(リアのトノカバーを取り去るとボディ剛性は若干落ちる。ただ荷物満載で全開走りなんかしないでしょう)。



 前置きはこのあたりにして試乗といこう。まずAT仕様から。GT−TのATはトヨタ初のスポーツシフトタイプ。Dレンジをセレクトし、そこから横方向に動かすとハンドル部分に付けられたボタンに電気が通じる。あとはハンドル裏側をプッシュするとシフトアップ。表面でシフトアップという具合。新しいシステムに敬意を払い、早速スポーツシフトモードに。1速でアクセルを踏み込むと、おおおっ! 速いぞ! 「どうしてこんなに速いの?」と、シートバックに身体をメリ込ませつつ考えてみたら、レガシィもレグナムもATは260馬力だった。車重はレグナムより100s軽く、レガシィGT−Bとイーブン。速くて当たり前か。アッサリとレッドゾーンに飛び込みそうになり、あわてて表のボタンをプッシュ。ポンと2速に上がる。予想外に変速レスポンスはいい。

 2速をレッドゾーンまで引っ張り3速にシフトアップすべくボタンを押して驚いた! 強烈にシフトアップが早いのだ。ほぼ「瞬時」と表現しても大ゲサでないぞ。後で聞いてみたところ、2速と3速は従来の旧式な変速システムでなく、油圧クラッチで強制的にギアを切り替えるタイプにしているそうな。理論的にはF−1のセミATと同じで、マニュアルミッションより早くシフト出来るほど。ワインディングロードで多様する2速→3速。3速→2速へのシフトは、マニュアルといい勝負だと思う。
 シフトボタンも好ましい。セレクトレバー横だと遠いし、ハンドルに付いているタイプでもポルシェみたいに上面だけでシフトダウン&アップするスイッチはミスシフトしがち。新しいカルディナのように、裏面アップ。表面ダウンがやっぱ使いやすい。F−1もこのタイプである。「シフトダウンのボタンが小さ過ぎる」という社内意見もあったようだけれど、シフトダウンは直進状態で行うもの。大きいボタンを付けてミスシフトでもしたら危険だ。逆にハンドルを切った状態で操作したいシフトアップボタンは大きくて簡単に探せる。よく考えられていると思った。



 シフトに慣れたところで限界チェックといきましょう。いつものようにコーナー手前でアクセルオフしてタックインをカマせると、あら。VSCが付いている。このシステム、コーナーでバランスを崩しそうになると、自動的に姿勢を立て直す。したがってテールを流そうとしても、勝手に真っ直ぐ向いてしまう。ま、テールを流さなくても十分に速いし、そんなモン公道で使うべきテクニックじゃない。ワタシはあくまで限界を超えた時の挙動をチェックするためにテールを流してみるだけ。VSCみたいな装置が付いていればソレでよろしい。
 ハンドリングはどうか? 面白いことにレガシィより短く、インプレッサより長い車体サイズがキチンと現れている。つまりレガシィよりシャープで、インプレッサより落ち着いているのだ。こう書くとレガシィやインプレッサよりいい、と思うかもしれないが、そうでもない。ドレも同じくらい楽しいと思う。気に入ったのがVSCのシステムを使ったタイトコーナーでのアンダー殺し機能。ヘアピンコーナー入り口でハンドルを切ると、前輪イン側のブレーキを細かく作動させ、曲がり易くしている。タイトコーナーで顔を出すイヤなアンダーステアの90%くらいを消しているのだから凄いな。

 興味深いことに乗り味もレガシィGT−BとインプレッサWRXの中間といった雰囲気。GT−Bは普通に走っている限り”ちょっとスポーティなクルマ”的乗り味。ヨーロッパ車みたいだ。WRXになると、もう乗った瞬間から「スポーツカーだね」になる。乗り心地からシートの座り心地、ハンドルを通して伝わってくる路面感覚までシャープ。GT−Tはその中間なのだ。普通のクルマと比べれば明らかにシャープながら、快適性までは犠牲にしていない。
 マニュアル仕様にも乗ってみた。やっぱり楽しさからすれば数段上! アクセルをオンオフした時の遊びがないので、思い通り走れる。マニュアルはVSCを装備しないため、テールのコントロールも自由自在。ウデさえあれば、コーナーを攻めまくってもコントロールを失うことはない。ヘタなスポーツカーなんて軽くやっつけられそう。もしハードな走りが好きなら、サーキットの走行会に行って、タップリ楽しんだらいいだろう。

 

 当たり前かもしれないが、使い方によっておすすめグレードは全然違う。元気な走りを好むならモンク無しにGT−Tながら(予想外にマニュアルが面白かった)、普通に使うなら燃費の良い量販エンジンの140馬力で十分走る。雪のない地域で使うならFFの『G』を。雪道を走る機会が多いのであれば、FFと80sしか変わらないビスカスタイプのフルタイム4WDをプッシュしておく。雪道で威力を発揮するだろう。エアリアル仕様はお好みに応じてどうぞ。