クルマを買う時は「カッコいい」とか「安い」などの理由が必要だ。ワタシらのようなクルマ好きとなれば、その要求レベルは一層高くなる。中途半端じゃ絶対に買わない。逆に考えるなら、強烈な魅力を持ってれば売れるワケやね。さて、プログレはどうだろうか? このクルマの特徴を聞くと「小さな高級車」とのこと。何でもセルシオに負けない乗り心地や品質感を持っているらしい。スタイルについちゃ大いに問題を抱きつつも、とにかく試乗してみましょう。
Dレンジをセレクトしてアクセルを踏むと、トヨタの言うことはウソでなかった。ブッタマげるくらいいい! 走り出した途端「普通の日本車と全く違うね」と感じるほど。ベンツやポルシェに乗った時と同じような高級感があるのだ。しかも荒れた路面を走ったってボディは微塵も揺れず、サスペンションだけで全てシャットアウト。騒音は車室への進入を全面的に許していないらしく(エンジン音はイヤな音域を全てカットし、気持ちよさだけを残した)、どの速度域でも静粛そのものである。
どうしてこんなことが出来るのか?おそらく”必要以上の品質”を持っているためだろう。ファミコンでもパソコンでも、気持ちよさを感じるのはレスポンス。人間の感性以上の反応を持ってないとイラつく。プロの使う道具は、スキーでも自転車でもレーシングカーでも強烈に硬く、その割にしなやか。骨格が岩のごとくガッシリしているのに、本当に必要なトコロはしっかり動く。ただそういった高品質の道具を作ると、トンデモナイくらいのコストになってしまう。普通のセダンにゃ必要以上なので、ソコソコのレベルで諦めるのだった。そいつを諦めなかったのがプログレだと思う。
例えばサスペンションは単にソフトなだけでなく、一定の横Gが掛かり出すと後は粘る。もっとタマげたのは、ワインディングロードを攻めた時。コーナーに進入すると、一定のロール角に達した後、そのままビシッと姿勢を崩さない。さらに速度を上げ「もうアンダーステアになるだろう」と思ったあたりからフロント内側のタイヤにブレーキ制御が入り、アンダーをスコンと消す。何と! VSCが働き、コーナーで限界を高めている。試乗日はイヤらしいウエットで、普通のFR車であればアンダー出てもアウト。オーバーになってもアウトという状況。つまりワタシでも怖くてビビる。
プログレときたら一切不安な挙動を見せず、スポーツカー以上のハイペースを保てるのだ。きっと一般的なドライバーなら、どんなに攻めたつもりになってもコースから外れることはないだろう。こんな安全へのアプローチもあるんだな、と感心してもうたがね。もし事故が起きるとすれば、物理的に曲がれない速度でコーナーに飛び込んだようなケースだけだろう。こらもう単に無謀なだけ。FFでもFRでもVSCでもカバーしきれまい。
といった具合で、ハードの仕上がりに関してはモンクの付け所ナシ。セルシオに匹敵するレベルである。しかし!それなら欲しいかとなれば「いいえ」だ。良いと思うけれど魅力を感じない。もし同じ予算で高級車が欲しいなら、素直にクラウンを選ぶ。プログレよりカッコいいし、外から見ても偉そうに見えるから。小さなクルマを買うならBMWの3シリーズやベンツCクラスを考えるだろう。ワタシなら迷わずプジョー406あたりにするな。確かにプログレは凄くいい。でも普通のクルマ好きは、多少完成度が低くてもカッコ良いモデルを選ぶんじゃなかろうか。読者諸兄はどうだろう。
音楽のジャンルで言うと、ワタシは演歌を好まない。演歌そのものは高く評価しており、好きなヒトがいるのも理解できる。でも自分で聞くなら大ヒットした演歌より、好みのポップスを選ぶ。同じく凄い性能を持つスノーボードより、普通のスキーを選ぶ。一体プログレのどこがダメかとなれば、やっぱりスタイルにトドメを刺す。徹底的にアカンのだ。もしスタイルがOKであれば、もう迷うことナシに買ってよかろう。ドレスアップすると意外にカッコ良くなるかもしれないし。