セルシオが発売されて1年半。ほとんどの地域で、オーダーしてから納車まで1年以上かかる状態が続いている。アメリカでも大好評で、同クラスのベンツやBMWは青息吐息。販売台数を大幅に落としてしまった。セルシオはそんなにいいクルマなのだろうか?
その前にもう一度セルシオをチェックしてみよう。まずは外観だ。一時はベンツ的との意見も多かったけれど、これは大きなフロントグリルがついているためである。似てるというなら、この手のグリルをつけるとすべてベンツになってしまう。ベンツだってもとを正せばロールスロイス。それによく見るとベンツとはけっこう違う。
 なかでも”違う”と感じるのは、全体の丸み。フロントフェンダーの豊かなラインとリアピラーまわりの処理は完成度が高く、トヨタのデザイン能力を感じさせる。



 空気抵抗は極端に小さく、Cd値は0、29。クルマに詳しい人なら知っていると思うが、このくらい空力を重視すると、ボディがタマゴ形になってしまう。セルシオはそれを嫌い、高度なコンピューター解析を行い、デザインを活かしたまま空力をよくすることに成功した。
 その結果、ライバルより小さい4リッターのエンジンながら、最高速度はアメリカ仕様で240キロをマーク。ヨーロッパ仕様では250キロに届く。
日本車の弱点である高速燃費も、ベンツ、BMWといったライバル以上の好データをマークし、アメリカでは燃費の悪いクルマにかけられるペナルティの税金が不要。
アメリカで試乗したレクサスは、ロサンジェルスからグランドキャニオンの往復で(約1800キロ)最低リッター9、2キロ。最良では10、7キロをマークした。ちなみにこのときの平均車速は120キロ程度である。

 足回りの狙いは200キロを超える高速でも安定した走行性をもたせ、それでいながら乗り心地の良さを狙ったもの。ところが普通、この2点は相反する性質を持つ。
 というのも、高速域での走行安定性をよくしようとすると、堅めの足回りが必要で、乗り心地は悪化する。乗り心地をよくするためにソフトにすると、今度は高速でフワついてしまうワケ。
 そこでセルシオは従来とケタ違いに精度の高い部品を採用し、細かい路面からの入力にも追随するようにしている。しかも精度にバラツキがでないよう、セルシオに組み込むダンパーすべてを実際に事前テスト。規格内に収まっているものだけを組み込むという方法をとっているのだ。

 セルシオの大半はエアサス仕様だが、こちらは車載コンピューターを使った高度な制御をしており、いままでエアサスの欠点とされていたフワツキを見事にハネ返すことに成功している。実際に乗ると、非常に感銘を受けはずだ。ネコのようにしなやかで、路面に細かい凹凸があってもまったく気にならない。
 輸出モデルには高速向けの味付けがなされ、アウトバーンで260キロのメーターを振り切るまで加速してもビシッとした直進性を保つ。
 唯一の弱点は、限界のコーナリング時に少し不安定になること。これは乗り心地と騒音を減らそうとした結果だ。ただしトヨタもそれは承知で、日本仕様ではハンドリングを重視したBというグレードが設定されており、コーナーを攻めたい人はそちらをすすめておく。

エンジンはお金がかかっている。アルミで出来ており軽いのはもちろんのこと、驚くほどコンパクト。最も優れている点はバランスだ。今まで日本車のエンジンは、西ドイツ車に比べるとエンジン内部に使われる部品の精度が劣っていた。だから高回転まで回すと振動がでたり、騒音が発生したりする。
「では精度をあげればいいじゃないか」という人もいるだろう。ところがすでにグラム単位となっているエンジン精度を上げるためには、生産設備から変えなければダメ。
 しかしトヨタはセルシオのために膨大な投資をして、ベンツ以上の精度を持ったエンジンを開発したのだ。
 対策の成果はハッキリ現れていて、エンジンの良さは誰にでも解る。アイドリングではタコメーターの針を見るまでエンジンがかかってるのか体感ができないし、走りだしてもエンジンはどこか遠くの方で回っているような感覚。従来の日本車とはまったく別の次元にある。

 その他内装の仕上げも素晴らしく、オーディオは絶品。このセットを後付けで買えば、40万円はしそうだ。クルマの遮音もしっかりしているので雑音の進入はなく、音楽が好きな人はこれだけでこのクルマを選ぶ価値があるだろう。
 筆者は評価が辛口でメーカーから煙たがられているけれど、ことセルシオに関してはあまり欠点を捜すことが出来ない。当初は批判的だった世界中のジャーナリストも、今では世界で最も優れた上級セダンという評価を与えるケースが目立つ。
 ま、いくら誉めても、生産が間に合わないのでは販売増に結び付かない。ここで少し留飲が下がる。