原稿書いてる時点では試乗していないのでハッキリしたことなど言えないのだが、とりあえず先行発売しているレクサスLS430の評価などチェックしつつ新型セルシオに迫ってみたいと思う。前置きナシで早速本題に入りたい。個人的に新型セルシオで最も気になっている点は「果たしてベンツSクラスを超えることが出来ているか?」というあたり。セルシオのメインマーケットであるアメリカでは、もはやカンペキにベンツを射程範囲に入れている。レクサスブランドのイメージたるや、抜群に高いのだ。
 当然のことながらLS430はデビューした瞬間、ベンツSクラスと比較されることになろう。これはどういうことを意味するか? 新型セルシオ、スタイル見てもインテリア見ても、エンジンの排気量見ても、偶然かもしれないがベンツSクラスと非常に近い。初代セルシオのように、ベンツと持ち味が全然違っていれば「違うタイプの高級車」として評価されるものの、今回ばかりは「そっくりだね」と言われても仕方ない。こうなると性能や仕上がりで負けてしまえば猛烈にカッコ悪い。安いSクラスというレッテル張られるからだ。

 クルマに限らず、高級品の世界というのはオリジナリティがイノチみたいなもの。高級品メーカーって、決してライバルのマネなんかしない。じゃなければライバルより良い製品を作り、完膚無きまでにやっつける。この二つしかないのだ。そっくりで、内容的に負けている商品など後から出そうモノならカッコ悪くてしょうがない。ロレックスはロレックスであり、決して軽くて薄い時計は作らないということです。ちなみに高級車ってベンツとBMWとジャガー、キャデラック、それにセルシオくらいだと思うけど、今までは違う個性で勝負してきた。
 簡単に紹介しておくと、ベンツ=圧倒的なクオリティ。BMW=ハンドリングと走る楽しさ。ジャガー=インテリアとソフトな乗り心地。ギャデラック=装備と性能を考えると非常に優れたコストパフォーマンス。セルシオ=猛烈に静かな走りと燃費&信頼性。といった具合。それぞれの得意分野で、ライバルを寄せ付けない優位性を保った上で、セルシオ以外はライバルと全く違う方向のデザインを持つ。しかし新型セルシオのコンセプトときたら、Sクラスとまるっきりキャラが被っていると思う。だったら圧倒して欲しい!

 そんなワケで、ワタシのテーマは「ベンツSクラスを超えたか?」に絞りたい。まず「なんでメッチャ速いの?」というあたりから攻めよう。LS430がデビューした時に公表された0〜60マイル加速(0〜96q)は、6,2秒とされた。この数字、ムチャクチャ速い!0〜100q加速に置き換えれば6,4秒くらいだと思われるが、ベンツS500で6,5秒。BMW750iが6,6秒。量産車のATでこれ以上速いの、SL600の6,1秒くらい。後はアルピナとかAMGの世界だったりして。
 ちなみに現行LS400の0〜100qが6,9秒。エンジン300t大きくなっただけじゃ、こんな速くならないと思う。どんな秘密があるのか? おそらくエンジンのトルクバンドに理由あるんじゃなかろうか。最高出力表示というのは、あくまで一定の回転数で出る馬力のこと。旧型は6000回転で280馬力出しているが、5000回転だと何馬力か不明(性能曲線でおおよそ解る)。ここで問題となるのは、表示されない回転数での馬力。言うまでもなく低い回転数から馬力出ていれば加速に有利だ。

 2速で6500回転まで回って3速に入ると4000回転くらいに落ちる。その回転数の馬力が大きければ、それだけ加速力良くなるという寸法。新しいセルシオは300tという排気量アップ分以上に、低中回転域のトルクが太くなっているのだろう。そう考えれば、ベンツの5リッターエンジンより加速力いいというのも理解できます。しかもこういった低中速トルク太いエンジンは走らせると本当に速い。伝え聞くハナシによると、トヨタがたまに使う袋井のテストコース(ヤマハが所有)で、最高速240qに達するという。
 長いと言ってもサーキットのストレート。コーナー立ち上がってから1qちょっとの助走しか出来ないことを考えれば驚くべき速さ。同じコースをS430で走ると225q程度。4,4リッターのV8搭載するBMW740iも225qくらいしか出ないそうな。S500と比べるとどうかと聞いたら、トヨタはS500で袋井を走ってないみたい。この情報から推察すれば、S500と同等の動力性能だろう。排気量少ないエンジンで同等の性能を出せるなら、燃費的にも有利。きっとエンジンの性能からするとベンツと同等以上だと思われる。少なくとも燃費やパワーじゃ負けていないということです。

 二つ目は「ホントにCD=0,25なのか?」というもの。高速域での燃費を改善させるため、昨今の新型車は少しでも空気抵抗を減らすべく必至になっている。Sクラスで0,27。新型Cクラスなんか0,26まで削ってきた。LS430のCD値は0,25と発表されている。いくら気合いを入れて空気抵抗減らしたとはいえ、空力実験車みたいなカッコしたインサイトと同じ数値! 空気抵抗少しでも減らすため、インサイトは2シーターとしリアトレッドまで狭くしてボディ後半を絞ったのだ。
 LS430のCD値はインサイトと同じ。「4ドアボディで実現できるとは考えられない」というギョウカイの関係者が多い。このCD値はトヨタの風洞で計ったものだろうけど、若干甘い数値になるのではないか、と指摘するライバルメーカーもある。まぁワタシも若干疑問です。先日、プラッツについて以下のような質問した。「1名乗車状態のプラッツはリアの車高が上がってますけど、空力はあの姿勢のまま計るんですか」と。そしたら「違います。トヨタが定めた姿勢で計ります。プラッツの場合、オモリ積んで前後同じ車高にセットします」。

 そうだよなぁ、と思った。あれだけリア上がった姿勢なら、むしろ抵抗になる。ライバルメーカーに聞くと、エスティマのCD=0,30も信じられないとか。そんなハナシをしてたら、違う情報が入ってきた。0,25はエアサス仕様だけだという。確かにプレスリリースによればエアサス仕様車のみ0,25だと書いてある。調べてみると、エアサスは高速域で車高低くする制御が付いており、そいつを機能させた時のCD値ということが判明した。金属サスのCD値は0,26くらいらしい。
 とはいえ0,26という絶対的なCD値も凄いと思う。先代セルシオの最高速、CD=0,28で250q台後半だった(初期型は北海道のテストコースで実測259q出た)。おそらく速度リミッター無いとすると270q近く出るんじゃなかろうか。4ドア車でも、ここまで空力良くして高性能エンジン積めば速いということ。同時に燃費も向上させられるのは言うまでもないこと。100q巡航なら、リッター12〜13qくらいまで伸びるという。160q巡航だとリッター8〜9程度か? いずれにしろ立派なデータである。

 次にハンドリングを予想してみたい。従来型セルシオはトヨタのFR車の中でダントツにハンドリング良かった。トヨタの典型的FR車は、最初強めのアンダーステアに終始。流れ始めのコントロールが難しく、ドッと流れると今後はとても扱い易くなる、という変わった特性である。解説すれば「なるべくテールは流したくない。特にパワースライドさせたくない。でも万一流れてしまったらキチンとコントロール出来るようにしたい」というもの。つまり楽しいハンドリングでなく、危険を避けるためのハンドリングなのだ。
 しかしセルシオだけ違う。リアサスの横剛性が高くベンツのようにリニア。アンダーも極めて軽く、ほとんどスポーツカーに近い挙動だった。それでいて決してトリッキーでない。セルシオのハンドルを握るために「やっぱり良くできてるなぁ」と感心しきり。途中からスピン防止装置VSCが標準装着されてしまったため、豪快なテールスライドは楽しめなくなってしまったけれど、VSC作動するまでの挙動は相変わらず好ましいものだった。興味深いことにヨーロッパ仕様のLS430にはVSCのカットスイッチ付く。

 ベンツがカットスイッチを付け始めたためだと思う。改めてヨーロッパのユーザーの気合い感じるハナシです。だってベンツに「テール流したいからカットスイッチ付けてくれよ!」と要求したワケでしょ? そいつを「それもそうだな」と聞くベンツもエラいが……。S500に乗ってASC(トヨタのVSCにあたる)スイッチ切ると、もう凄いぞ! コーナーの進入でハンドル切ると、ほとんどアンダー感じさせずノーズはインを向く。そこからアクセルをばガバッと踏み込めば、真横だもの!
 しかもコントロールしやすい! 低速から160qくらいで曲がるようなコーナーまで、アクセル開度パーシャルなら文字通りニュートラルのオンザレール感覚! 少し開ければ若干テールスライド気味に。がばちょと開ければ深いドリフトアングル取って轟然と立ち上がる。セルシオの開発陣は、そんなSクラスをしっかり意識してるだろうから、負けないようなハンドリング目指したろう。どこまで仕上がっているか、非常に楽しみだ。出来ればヨーロッパに行って、VSCカットしたLS430のハンドルも握ってみたい。

 アメリカのレポートを読むと、LS430のハンドリングは極めてSクラスに近いとある。「へぇ?」と思ったのがハンドルの操作感。バカでかい先代Sクラスからカジュアルな現行Sクラスになった際「ハンドル軽くなったなぁ!」と驚いた。言うまでもなくセルシオの影響を受けまくったのだろう。そして新しいLS430もSクラスと同じくらいの軽さだと書いてある。ということは、ハンドルの重さからコーナリング特性、パフォーマンスまでSクラスに似ていると言うことになる。
 ここで最初に戻りたい。「高級車というのはオリジナルティがイノチ。同じタイプのモノを作るなら、トコトン性能で凌ぐ」。Sクラスと似ていることは間違いないだろう。となると気になるのが性能差。Sクラスを圧倒してくれるだろうか? もしハッキリ勝てていなければ、単に「安いSクラス」ということになってしまう。ワタシも初代セルシオを衝動買いしたが、最大の理由は「安いSクラス」じゃなかったからだ、セルシオならではの個性を感じました。新型セルシオもSクラスを圧倒していたら、買ってしまうと思う。