トヨタ ヴィッツ

トヨタ自動車

ヴィッツ

平成17年2月14日

≪ヴィッツ試乗レポート≫

 日本にコンパクトカーブームをもたらしてから6年。ヴィッツがついにフルモデルチェンジを行った。新設計のプラットフォームを初め、内外装とも大きな進化を受けた新型ヴィッツは、先代同様ヨーロッパ市場への投入を前提としたトヨタの世界戦略車。親しみやすいエクステリアと使い勝手の良さが女性ユーザーを中心に大ヒットした先代に比べ、新型は自身の存在をアピールするような強さを感じるフォルムへと変身。「より幅広いユーザー層に訴えるため、男性にも受け入れ易いデザインを採用した」という真意は、走りにも現れているのだろうか? 興味のある人、少なくないと思います。

○世界戦略車であるが故のクオリティ

1.0Fのライトブルーマイカメタリック。15インチアルミホイールはOP。

山崎(以下:山) 発表会で新型ヴィッツを見たときは正直衝撃的でした。ヴィッツで「ここまでやってくるか」ってくらいどこをとってもクオリティに溢れてると思います。
国沢(以下:国) あんまり格好いいとは思わないけど……。ずんぶりむっくりしたイメージは旧型とそんなに変わらないし、何かに似てる気もする。
山 確かにリアスタイルなんかはニュースイフトに似てます。でも、無闇にホイールベースを伸ばして大きくすることは、「運転しやすい」というヴィッツの大きな特徴をスポイルしてしまうという理由で、このフォルムに決まったという話です。それでも、旧型に比べ全長が110mmプラス(3750mm)され、全幅も5ナンバー枠ギリギリ(35mmプラスの1695mm)まで拡大ましたけどね。
国 ドッシリとしたスポーティな印象のシルエットって意味では、スイフトとキャラクター被るかも。おそらくデザインナーの中にはスイフトが出たとき「似てるかも」って思った人もいたんじゃないかな。でも悲しいことに販売面で影響受けるのはスイフトの方だと思う。スズキの販売力も凄いけどトヨタはそれ以上だから。
山 コンパクトカーの基本に忠実なクルマというコンセプトでいくとスイフトかもしれませんが、旧型で指摘されたリアシートも格段に広くなってますし、フィットやノートといった“大きめコンパクト”とも十分に競合できると思います。
国 リアシートに関しては決してゆったりって感じじゃない。座ってみるとやっぱりノートやフィットの方が広い。旧型が「厳しい」なら新型は「我慢を強いられなくなった」ってとこかな。
山 使用頻度から考えれば十分だと思います。現実的には1人で乗ることが多いわけですから。となると気になるのが、ドライバー(オーナー)の視点から見たインテリアなんですけど、ボクがいちばんビックリしたのはその斬新さと質感の高さです。

立体的な造形のダッシュボード回り。各接合部の樹脂パネルのチリ合わせが見事。

国 その点は凄く良くできてる。手触りの良いドアトリムや特徴的なアームレストなど、それだけ見ると一見冒険したかに感じる造形が全体として実にシンプルにまとまっていて居心地がいい。こんな凝ったデザインは今までのコンパクトカーじゃ見たこと無いし、それを上品に仕上げてくるあたりは、さすがトヨタって感じ。
山 フィットの質感の高さはよく言われるところですけど、ヴィッツの方が高級感では上だと思います。それに、旧型ではちょっと膝周りが窮屈に感じた足元スペースもセンターコンソール部を思い切って絞ったことによって上級セダン並になりました。ここまでくると、軽自動車とヴィッツとでスペース的に明確な違いを見出せなかった人でも圧倒的な差を感じるでしょう。
国 シートもしっかりと本物志向になったし、旧型と新型で比べると確実に2ランクくらい車格がアップしてると思う。それでいて新旧の価格差が1.3リッターのU(FF、CVT)同士で6.3万円(旧型132.3、新型138.6万円)。コストパフォーマンス高いよ。

○仕様による乗り味の差

街乗り中心なら1リッターモデルで十分。すれ違いでインパクトを感じるクルマになりました。

山 今回は1リッター(F)、1.3リッター(U)のFF(全車CVT)と4WD(全車4AT)、それからスポーツグレードとなる1.5リッターのRS(5MT。CVTもあり)の4モデルに試乗しましたが、特にFFと4WDで随分乗り心地が違いましたね。
国 意外だったのは4WDよりRSの方が乗り心地が良かったこと。4WDモデルはちょっとバタバタした印象が強くて、洗練度に欠ける。ところが、RSはハードなサスペンションとオプションの16インチ(195/50R16。標準は185/60R15)タイヤを組み合わせている割にしっとりとして、ロードホールディング性が良い。価格も高い特別グレードだからダンパーなんかにお金かけられたんだと思う。
山 生憎の雨なんで詳細までは分かりませんけど、16インチタイヤを余裕で履きこなすシャーシ性能を持っていると感じました。サスペンションアームの取り付け剛性や、ステアリングロッドの支持剛性がしっかりしてるからこそ、足回りを固めて50というロープロファイルのタイヤを履いても、若い人にしか乗れないようなフィーリングになってない。まさにヨーロッパのスポーティコンパクトって乗り味です。
国 全体としての剛性感だって先代ヴィッツとは比べ物にならない。まあ、RSについてはマニアな人しか買わないんだから、シフトフィールやクラッチの踏みごこちなんかもっとしっかりしたフィーリングが好ましい。
山 チーフエンジニアの方は軽い操作性を追求したって言ってましたけど、走りの剛性感と感触に乏しい操作系がリンクしてない感じですね。言葉は悪いですが、ちょっと軟弱なスポーツモデルって気がしちゃうんですよ。ひとりのスポーティモデル応援者としては、もっとドライバーに挑戦的であって良いと思います。ただ、そういう点からすると、標準モデルの取り回しの良さが際立つことになりますね。
国 それはヴィッツの真骨頂だから絶対に譲れないところ。電動パワステのフィーリング1つとっても、細かなハンドル操作を要求される市街地を走らせると、明らかにアシストが増えて操作しやすくなるし、そこから速度を上げていった時のフィーリング変化も上手くコントロールできてる。これくらい自然だと、誰が乗っても違和感を覚えることが無いし、すぐにクルマとの一体感を感じられるんじゃないかな。今度のヴィッツはクルマを良く知るベテランドライバーやドライブ好きの若い男性にも積極的に乗ってもらいたいわけだから、運転しやすい上に本質的に良いクルマでないとユーザーからの高い評価を獲得できない。上級車種から乗り換えても落胆させない作り込みが絶対条件で、それをきっちり突き詰める必要があったってこと。このくらい上手くできていれば、旧型に比べユーザー層はさらに広がると予想できる。

ボディーカラーは旧型より少ない全11色。ホワイトはやっぱり営業車っぽい?

山 乗り心地の面で順位付けをすると、1リッターの「F」と1.3リッターの「U」がほぼ同じで、次にRS、1.3リッターの「U・4WD」の順になると思います。
国 新型ヴィッツ唯一の弱点は乗り心地かな。どんなクルマでも路面からの入力を完全に吸収することは不可能だから、その入力をいかにマイルドにするかがポイントになるわけ。タイヤが吸収しきれないゴツゴツをサスペンションで心地良い入力に変換することができれば、乗員は不快に感じない。イコール「乗り心地が良い」という評価になるわけ。といった観点から判断すると、新型ヴィッツは少々カドが立った入力を伝えちゃってる。ま、このことはカヤバ製ダンパーを使うトヨタ車全体が同じ傾向にあるけどさ。
山 ということはやっぱりダンパーの性能がよくないと……。
国 それ以外に考えられない。でも、カヤバのヨーロッパ工場製ダンパーを使うヤリスは日本仕様よりも全然乗り心地良かった。きっと新型も同じように部品供給を受けるはずだから、やっぱりヤリスの方が乗り心地の洗練度高いと思う。ヨーロッパ製と同じようなフィーリングがどうして日本製で出せないのか不思議。
山 高速道路を走っている時に接地感が希薄だって言ってましたけど、ダンパー性能の問題が関係してますか?
国 大きいね。車線変更やインターチェンジのコーナーみたいに、それほど大きなヨーが発生しない場面のときは、サスペンションストロークそのものよりも、(サスペンションの)動き始めのフィーリングが大事。この領域がスムーズじゃないとタイヤのグリップ状態が伝わらないままクルマが曲がる感じになる。飛ばしてナンボのクルマじゃないんだから、繊細なフィーリングにもう少しこだわりが欲しい。
山 でも基本的なハンドリング性能はなかなかレベルが高いものを持ってそうですね。意外にクイックなステアリング特性ですし。
国 晴れた日にテストコースに持ち込んでみないと確実なところは分からないけれど、思いのほかキビキビしてる。新設計のサスペンションの素性も良さそうだからコントロール幅も広いんじゃないかな。はっきりと言えることは、先代ヴィッツの初期型で問題視されたフニャフニャとした頼りない印象は一切無いってこと。

○動力性能のレベルアップは新開発CVTにあり

写真は2SZ−FE型エンジンを積む1.3U(FF)。4WDは2NZ−FE型となる。

山 動力性能についてですが、今回FFモデルが全車CVTになりました(RSを含む1.5リッターモデルのみシエンタのCVTがベース)。このアイシンAW製CVTは、新型ヴィッツに合わせて開発された、同社のラインアップの中で最もコンパクトな最新型とのことです。
国 CVTは凄く良くできてる。もうほとんど弱点ないね。アクセルのオンオフを極端に行っても全然ギクシャクしないし、エンジンブレーキの利き方も自然。トルクコンバーターの制御も緻密だから、しっかりとメリハリの効いた加速感がある。
山 エンジンの唸り音ほどスピードが伸びない感じのCVTもありますが、新型ヴィッツのCVTはエンジンパワーをロスなく伝えている手応えがありますね。ビックリしたのはパッソと同じエンジンを積む1リッターモデルに乗った時、ヴィッツの方が重い(ヴィッツ1.0F:980kg、パッソ1.0X:900kg)にも関わらずスピードのノリが良かったですから。
国 ミッションであれだけ違うってのは驚きだった。特に中低速域から加速していくような状況だと、CVTの恩恵を受けていること間違いなしでしょう。パワー的に厳しい状況でATが2速と3速をいったりきたりして、ただでさえ気持ち良くないエンジンがガーガーと苦しい音を発することもないし。
山 特に1リッターエンジンは3気筒ですから中間域から上になると音と振動面で一気に不利になります。そういった部分を補って走りの洗練度をアップさせるという意味でも、CVTの採用は大正解だと思いますよ。
国 ただ4気筒の1.3リッターと乗り比べちゃうと、やっぱり1リッター(ダイハツ製)のフィーリングは少々雑な印象が残る。それに、セルモーターが回る音からしてダイハツの軽自動車をと同じだから、こだわる人にとっちゃ苦笑いが出ちゃう。“良いクルマ”としての完成度の高さに浸れるのは1.3リッター。エンジンのスムーズさは誰が乗っても分かるくらい違うし、絶対的な動力性能だって申し分なし。高速道路の右車線の流れに乗って走っても全然余裕ある。
山 アイドリング時の振動もかなり違いますよ。1リッターはプルプルというエンジンの鼓動がはっきり伝わってきますが、1.3リッターはいたって平穏。まあ、比べること自体無理がありますが……。それでいて、1.3リッターと1リッターの価格差は、6.3万円(F、税込み価格)ですよ。燃費もほとんど変わらない(1.3リッター:21.5km/L、1リッター22.0km/L)んですから、ボクなら迷うことなく1.3リッターを買いますね。
国 私もそうする。でも、この考えかたってどうやら男性特有みたい。岩貞さんは「6万円あれば沖縄旅行できるしブランドバッグだって買える」って言ってたから。さらに「男性は168円と198円のカップラーメンで迷うくせに、クルマとなると金銭感覚が変わるでしょ」って言われて妙に納得してしまった。
山 確かにその言葉はグサッ! ときますね。触媒機能が活性化して間もないうちにエンジンを止めるような、いわゆるチョイ乗りの繰り返しメインで使うと1リッターの方が断然燃費良いでしょうし。そうなると実生活において1.3リッターモデルの方が優秀な燃費を記録する領域をたくさん走るユーザーじゃなければ、1リッターモデルの優位性が際立つ結果になると思います。多分、1リッターモデルの購入を考えるユーザー層だと、3気筒と4気筒のフィーリング差にこだわる程のクルマ好きは少ないと思いますから、それならばむしろ積極的に1リッターモデルを選ぶ意味が大きいと言えます。

○総合評価

コチラはStyling Package ver.CやTRDサスで武装したRS。まさに弾丸の雰囲気です。

国 1リッターのF(115.5万円)に15インチアルミホイール、スマートエントリー(プッシュボタン式スタート/ストップシステム付)、電動バックドアオープナー、イモビライザー、運転席・助手席サイドエアバッグ&カーテンシールドエアバッグ、CD一体型AM/FMラジオ付きボイスナビ(ワイドマルチAVステーション2、ヴィッツ専用デザイン)、それにETC車載器まで付けて145万4250円だもん買い得感高いよ。

山 アルミホイールとETC車載器は車外品もたくさんありますから、それらを除けば9万2400円安の136万1850円。値引きも含めて130万円ってとこでしょう。個人的にはU(1.3リッター)やX(1.5リッター)とインテリジェントパッケージ(1リッター、4月追加予定)に標準装備される花粉除去機能付き湿度コントロールオートエアコン(プラズマクラスター)が付けられればさらに魅力的だと思いますが、残念ながら設定なしです。
国 現状でも十分「参りました」って感じ。トヨタの本気度を見せつけられた気がする。これで乗り心地がもう少し良かったら言う事なしに100点。
山 開発者が奥田会長に「利益出ませんがいいですか?」と直談判に行ったら、「ここまでやれば仕方ないか」と納得してくれたという話ですね。トヨタの勢いを見せつけるようなクルマだと思います。

国 ライバル勢にとっては脅威だよ。月間販売目標1万台って言ってるけど、年度末商戦の時期だから2万台を軽く越えるんじゃないかな。先代はどんなにマイナーチェンジされて良くなっても「買ってもいいな」とは思わなかったけれど、新型は結構心動かされるクルマになった。当然、ヨーロッパ市場に新型ヤリスとして投入するにあたって、改良するところもあるだろうから、今後の熟成にも期待大。さっきも言ったように、旧型(ヤリスはまだモデルチェンジされていないが販売好調を維持)はヨーロッパモデル(インターネットで限定販売されたユーロではない)の方が乗り心地良かったから。

注:写真のナビはG-BOOK対応モデル。

山 旧型の本筋はヨーロッパ市場にトヨタブランドを広げることにあったわけで、新型はそれを受けて揺るぎないブランド地位の確立を狙ってきているはずです。どことなく最新のアウディに採用される大きなグリルを思い起こさせるフロントフェイスの造形ひとつをとっても、日本人よりもドイツ人により受ける感じがします。ただ、ヴィッツのもう1つの役割はファンカーゴ、プラッツ、bB、イストといった多用な価値観に合わせた派生車を多く生み出すところにあると思います。ベースの完成度を踏まえると、将来的にヴィッツファミリーの市場占拠率が今以上に拡大しそうな気がしますね。

国 そういう意味では“本命”が出ちゃってるんだから、ライバル勢が今後どんな“対抗”を作ってくるかという楽しみが一層膨らみますな。

10万2900円の激安プライスが魅力のワイドマルチAVステーション2を装着した1.0F。

 今日(建国記念の日)、ネッツ店の前を通ったらいつもの休日に比べてお客さんがたくさん入っていた。そのほとんどの人が新型ヴィッツを見に来ていたと見受けられ、3台あった展示車の周りではセールスマンが忙しそうに対応に追われていた。ネッツ店というと上級車種の専売モデルはアリスト、アルテッツァ(ジータ)、アベンシス(ワゴン)など、決して台数を稼げるとは言えない商品ばかり(その他ではbB、MR−S、ラウム、アレックスなど)。独占的に取り扱っているヒットモデルと言えば、ウィッシュやヴォクシーといった5ナンバーミニバンと、ヴィッツしかないのだから、新型ヴィッツは売り上げを稼ぐ上で「期待の星」なのだ。
 特に全てを一新したヴィッツについてはトヨタ系ディーラー同士の競合がない(ウィッシュはトヨタ店のアイシス、ヴォクシーはカローラ店のノアが引き合いに出されやすい)ため、「ライバルはトヨタ車」という関係が成立せず非常に売りやすい状態にある。おそらく今日ボクが見掛けたお客さんの中にも近所のネッツ店だけでクルマ選びを完結させてしまう人も少なくないだろう。果たして新車効果と年度末商戦を通じてヴィッツがどこまで数を伸ばすのか?興味津々です。

Text:山崎 裕正   

平成17年2月1日

≪新型ヴィッツ発表速報≫

グリルに輝くシンボルマークは販売チャンネルであるネッツの「N」がモチーフなのだ。

 1999年の誕生以来6年。日本のコンパクトカー市場拡大の火付け役とも言えるヴィッツが遂にフルモデルチェンジを迎えた。トヨタ史上歴代2位となる70万台(1位はカローラシリーズの115万台)を売り上げ大ヒットモデルとなった初代に対し、2代目となる新型はどんな進化を果たしているのか? 特徴的な部分を紹介しよう。
 新型ヴィッツの車両コンセプトは「MY PROUD COMPACT」。乗る人が誇りを持てるコンパクトカーであるというこのテーマを具現化するため、そのエクステリアは小さくても存在感を際立たせるデザイン処理となっている。写真で見ると初代のイメージを踏襲しているようにも見えるが、実車を前にするとボンネットからグリルの両脇を通る大きな縦のラインにより、一体感のあるフロントフェイスが非常に印象的。ヘッドライトもシャープなデザインとなり、自信に満ちた“顔”となったと思う。

こういう色でも質感を損なわない(色名はレディッシュパールマイカメタリック)。

 また、サイドビューは傾斜させたAピラーからなだらかな曲線を描くモノフォルムシルエットとなり、初代では見られなかったフェンダーアーチの大きな膨らみが躍動感を演出。リアもワイドトレッドを強調するバンパー形状となり、全体として筋肉の塊を連想させるような力強さに満ちている。
 全長3750mm×全幅1695mm×1520mm(4WD車1540mm)に、2460mmのホイールベースを持つボディサイズは、初代に比べ110mm長く35mm幅広なのに加え、全高も20mm高くなった。さらにホールベースも90mm伸ばされ、室内長は55mmアップの1865mm。ちなみに、スペース効率に優れた設計の代表選手であるフィット(1.3A:全長3845mm×全幅1675mm×1525mm))は2450mmのホイールベースで1835mmの室内長、また先日発表されたノート(15S:全長3990mm×全幅1690mm×全高1535mm)においては2600mmのホイールベースで1835mmの室内長なのだから、新型ヴィッツがいかに理想的な室内空間を確保しているのかが分かるだろう。実際、初代ヴィッツの弱点であったリアシートの狭さは完全に克服され、膝前、頭上ともカローラクラスに匹敵するレベルの居住性を持っていた。

リアシートのスライド(一部グレードを除く)&リクライニングも可能になった。

 そしてこの高効率な空間確保の元になっているのが、新型ヴィッツのために開発されたトヨタの次世代コンパクトクラス用プラットフォーム。もしかすると、PSAとの共同生産車となるアイゴもこのプラットフォームを使っているのかとも考えられたが、チーフエンジニアの方によると「まったく別です」。また、「シャーシ関係はサスペンションからブレーキまで全て新設計しました」とのこと。新生ヴィッツはまさにトヨタが超本気モードで作り上げたクルマだと言える。

左から「プジョー107・トヨタ アイゴ(Aygo)・シトロエン C1」

 グレード展開とエンジンラインアップについて見てみると、サイズアップしたとは言えメインとなるのはやはり1リッターモデル。特に主要装備が揃って115.5万円のF(一番上の写真)はコストパフォーマンス高し。実はこの1リッターエンジン(1KR−FE型)には、本来なら新型ヴィッツに積むために開発されていたものを、パッソを出すことになり先行搭載したという裏話もあるのだが、パッソとの境界線については? と伺うと「ヴィッツはより本質を追求したクルマなのでキャラクターが違います」とのことなので、ヴィッツのモデルチェンジがパッソの販売台数に影響を及ぼすことはないと考えている様子。むしろ、その表情から察すると、コンパクトというジャンルにおいてエントリー的なモデルから上級モデルまで隙間のない商品構成を築くことができたという余裕があるのかもしれない。なお、1.3リッターエンジン(2SZ−FE型)は従来型を引き続き採用。Fグレードには1.3リッターモデルもあり121.8万円の価格設定。プラス6.3万円で300ccのゆとりが得られると考えて良いと思う。
 1リッター及び1.3リッターモデルのミッションは新開発のCVT(アイシンAW製)。超コンパクト設計かつロスの少ない駆動伝達力を持つこのミッションにより、重量増による実用域での加速性能や燃費の悪化は一切ないという。燃費スペシャル仕様となるアイドリングストップ機構付きのインテリジェントパッケージは、従来の1.3リッターモデルではなく1リッターモデルのみに設定。ただし、10・15モード24.5km/Lという燃費数値はサイズアップなどの影響により旧型に1km/L及ばない。登場はやや遅れて4月になる模様だ。

TRDやモデリスタなどからも続々とパーツがリリースされいる。

 このほか、初代では追加グレードだったRSが今回は初めからラインアップ。モデル中唯一の1.5リッターエンジン(1NZ−FE型)搭載車となりMTミッションの選択も可能となる。しかし、燃費は技術進歩の度合いの大きいCVT(シエンタのものを改良して搭載)が威力を発揮し、MTを1km/L(CVT車:18.6km/L)凌ぐ。参考までに書いておくと、例えRSと言えども新型ヴィッツに3ドアモデルの設定はなし。事実、旧型でも95%が5ドアだったということもあり、この決定は致し方ないところ。しかし、ヨーロッパで新型ヤリスとして販売する(現行ヤリスが売れ行き好調のためまだモデルチェンジの時期は未定とのこと)場合は企画していくつもりだという。まあ、それでも日本への導入は考えていないとのことなので、新型に関しては3ドアモデルの登場は期待できないと見て良いだろう。また、噂されるRSを超えるホットモデルの存在についても「今のところ予定は無い」とのことだった。

機能美を感じされるインテリア。純正マルチAV(ナビ付き)が10万2900円で付けられる!

 新型ヴィッツを見て最も驚いたのはインテリアの作りこみの良さ。各パネル同士のつなぎ目がビシッと決まっていて、どこにも“安さ”を感じさせるところが無い。従来通りセンターに配置されるメーターも全車オプティトロンタイプを採用し、高級感向上の演出に大きく貢献。エアコン(世界初の花粉モード付き!)等の操作系が縦に3つ配置されるセンタークラスター下部が極力絞り込まれ、足元空間は相当広くなった。視覚的効果を持たすため、基本カラーをブラック系としながらも、アームレストや天井など上方に明るい配色を施しているのも見逃せないポイントだ。

リアシート格納時にフラットラゲッジスペースが作れるデッキボードも用意(一部グレード)。

 ざっと印象を述べてみたけれど、以上は新型ヴィッツのほんの一部分でしかない。全てが新しくなったヴィッツには、この場では取り上げきれないほどのトピックスがまだまだ満載されているのだ。「主なターゲットユーザーを、若年層はもとよりミニバンからのダウンサイジングを検討する人や、シニア世代にまで広げた」というあたりからも、旧型では女性ユーザーの比率が3分の2を占めていたクルマの単なるモデルチェンジ版ではないことがうかがい知れる。近いうちにコンパクトカー購入の予定がなくても、月間目標販売台数1万台を掲げる「トヨタの自信」を是非とも実車でチェックしていただきたいと思う。

Report:山崎 裕正