セールスマンというのは微妙なポジションに居る、と思う。以下つらつら説明したい。最初に確認しておくが、言うまでもなくセールスマンってメーカー側のニンゲンである。しかしユーザーにとってみると、メーカーから値引きを引き出してくれる重要なヒトだ。セールスマンが「じゃあと3万円引きましょう!」と言えば、即座に3万円トクするのだから。3万円稼ぐの、大変だぞ! したがってセールスマンとは仲良くした方が絶対イイ。少しでも良い条件を引き出すべく、コーヒー出したりケーキ出したり、少なくともケンカ状態じゃないワな。
セールスマンにしても、値引きを多少増やしたトコロで自分のサイフは傷まない。台数さえ稼げば成績上がるのだから。それにお得意サンのトコロに行けば、大切にしてもらえる。中にゃヘンな雑誌参考に、ひたすら値引きにこだわるようなイヤな客だっているだろうけど、そのあたりは仕事割り切るしかない。いずれにしろ基本的に正義の味方的ポジションだと思って良かろう。慣れればセールスマンの仕事も楽しいんじゃなかろうか。いや、実際、仕事の出来るセールスマンは楽しいと言う。
ワンプライスだとどうか? お客からみれば純粋にメーカー側のニンゲン。いくらおだてても譲歩してくれないから、ナンの得にもならない。会うのもムダ。むしろ電話かなんかで注文し、ファクスで見積もりを送ってもらうだけで十分だ。ワタシは始めてワンプライス値引き無しのプリウスを買った時、そう思った。もうディーラーなんかいらない、と。だったら遠くてもいいので、知り合いがトヨタに居ればそこから買い、近所でメインテナンスだけしてもらえばいいもの。
ワンプライス値引き無しの販売方法について、も少し具体的な例を出してみよう。たまたまワタシのHPにヴィッツを買おうと思っているヒトがいた。そいつぁ好都合、ということでネッツ店に飛び込んでもらいましょう。もちろん彼は買う気満々である。せっかくネッツ店に行くのなか、ということで、候補じゃなかったアルテッツァの条件も聞いてもらうことにします。以下、突入レポート!
−−お店に入ると、営業のお姉さんがうるわしい営業スマイルで「見積もり等、必要でしたらお出しいたします」。好感が持てました。「それじゃ、ヴィッツとアルテッツァの見積もりいただけますか?」というと、すぐ見積書は出来上がり、交渉を始めました。値引きは、と聞くと「当該車は、ワンプライスとなっておりまして値引き等行っておりません。諸経費以下の通りとなっておりまして総支払額はこうなります」。
ワンプライスってなにか聞いてみたらトコロ、お姉さんの説明では「従来あった値引きいうものをすでに行った状態のものがワンプライス価格といったものになっております。今までのようにお客様によって販売価格が異なるといった不公平を排除することができ、お客様側からいたしましても値引き交渉という労力の必要がなくなります」とのお答え。
つまりいきなり限界の値引き額が提示してあるんですか、と返したら「はい、そういうことでございます」だって。さらに「従来から見ましてもこちらにおける車両価格自体が安くなっておりますので、よくご覧になっていただければ、納得できる金額ではないかと思います。値引き額、ヴィッツ4万円でアルテッツァはゼロ。
HPにはファンカーゴを考えているヒトもいたので、カローラ店に行ってもらった。
−−出てきたのは営業畑20年以上といった感じのベテラン風おじさん。ファンカーゴの見積もりを前に「値引きは?」と尋ねると「ワンプライスってことで1銭も値引きはできねえんだよ。もうこりゃ上のほうからこれで売れってことで来ちまってるからしょうがねぇんだ。まぁ、クルマ自体人気あって売れてるから、みんなこれでも買ってくからよう。がはは」
なんか威勢がいい。「まぁ、今どきのお客は、値引きなんてさっさとすましてぇみたいだから、おおむね好評みたいだけど、俺は前のほうが儲けたり損したりでよかったし、おもしろかったなぁ。若いセールスはこっちのほうが楽でいいって言ってるけどよ」。なるほどある意味頼もしいお言葉。ベテランにとってみるとワンプライスは逆に戦いづらいらしい。
「長い付き合いの客と飛び込みで来た客が、同じ値段っても困るよなぁ。ワンプライスだから値引きゼロです、って言っても十年以上付き合いがある客は、何でいきなり値引きゼロなんだって納得しねぇだろ」。そりゃそうですね、と言うと「なんなら、ワンプライスじゃない車種もあるから、そっちを買うってのもアリだよ。いいのあるよ、あんちゃん(にやり)」。
でも値引きしないんなら儲かるでしょ、と聞いたら「ワンプライスの前と後だったら、以前のほうが儲かっていたんじゃないんかなぁ」という。ワンプライスのクルマは仕入れ価格そのものも高いのだそうだ。ちなみにファンカーゴは車両価格から値引きなし。ディーラーによてはオプションからの5万円くらい引いてくれるバアイもある。
トヨタ以外でワンプライスをやっているのは、三菱。となれば、コッチも探って見ねばなるまい! 早速希望者を募り、突入してみた。
−−「ディオンの見積もり欲しいんですけど。」受付のお姉さんにお願いすると。そのまま奥へ通される。受け付けのお姉さんはセールスさんでもあったのだ。ディオンは値引き一切なし。オプションをつけた場合も割引等は一切行っていない。「ほんとに1円も負かんない?」と尋ねても、かわいい笑顔で「だめです」ときっぱり。
「ディオンの場合、三菱自販が設定している新車価格自体が非常に低く設定されており、ここから値引きを行うことは事実上不可能です。値引きを行わないと申しましても、クラス最大級の室内空間、徹底された構造安全ボディ等、他社同クラスと比較していただいても非常にお買い得なものであると自負しております」。いわゆる立て板に水といった感じ。そこで「ワンプライスで文句いわれたらそう説明しなさいと言われてるんですか?」と聞いたら
「はい(笑)、上から」なるほどガチンコのガードだ。
ここで簡単に諦めず「どうしてもダメ?」と聞いてみたが、笑顔のまま「だめです。」だって。「ディオンの場合、ワンプライスは全国の三菱共通となっております。だからどこで買っても同じ価格のはずです。値引きはどうにもできないことになっているんです」。全国共通というのは、トヨタにおけるワンプライスと異なる。有無をいわせない絶対的なものらしい。ただ、下取りで若干高い金額をつけるということはできるそうだ。いろいろ取材してみると、三菱車からの乗り換えなら高く査定してくれる。
皆さんもワンプライスのクルマを買いに行くと、こんな対応が待っていることだろう。よっぽど欲しいクルマでない限り、ワタシなら即座に帰って、2度とのそこのディーラーにいかない(後で書くがトホホなことにプリウスを買ってしまったのだけど……)。ちょっと気になったのは三菱の「ディオンの価格は全国共通です」といった下り。現在日本では「同じ価格で販売するよう販売店に押しつける」という売り方が禁止されている。したがって「どこで買っても同じ」というセリフ、大いに問題あると思う。
もし三菱本社からの指導であれば問題。見積もりをもらいに行ったディーラー独自のマニュアルで決まっているならまだいいと思うが。三菱自販からの伝達文書でもあれば、けっこう騒ぎなるし、役所からも指導されるだろう。トヨタは決して全国同じと言っていない。アルテッツァなど見ると、やってることは同じですけどね。いずれにしろワンプライスの場合、セールスマンと交渉しても全く無意味。面白くもない。これだったら自動販売機で買った方がよかろう。もちろんセールスマンにしても、自分の裁量権ゼロ。
すなわちセールスマンもマニュアルで動くキカイなのだ。だって1円の値引きさえ出来ない、ということは1円の裁量権も認めらてないということ。アルテッツァやディンゴのセールスマンに告ぐ! ホンダやスバルのセールスマンはいいぞぉ! 決算期やキャンペーン期間だと40万円近い裁量権が会社から与えられているのだから。アルテッツァと競合したレガシィB4や、ディンゴと競合するであろうM−Xは、裁量権持たず値引きゼロのセールスマン相手にバンバン攻められる。
で、プリウスのハナシ。前回プリウス買った時は、納車待ち数ヶ月ということもあって、カンペキなワンプライスだった。今回も先方は値引きゼロの姿勢を貫こうとしたけど、コッチだって攻めまくる! フロアマットは買わず下取り車のプリウスについてたヤツを使い(だってフロアマット無くても下取り査定が変わらない)、車庫証明は自分で取ると言って見積もりに入れさせず、納車費用も取りに行くからと有無を言わさずカット。その上「月末までに登録したいんです」という声を聞かず、来月でいい、と言うと「用品サービスしますから」と6万円分付けてくれた。
しかしセールスマンも2年半の経験を積んだ。値引きゼロは自分も辛い、ということが解っているのだろう。結局値引きこそゼロだったものの、車庫証明はサービス。納車費用もサービス。6万円のオプションとフロアマットが浮き、実質10万円ほど支払い金額を削れた。そしてコチラも「あのセールスマン、けっこう頑張ったじゃないの」という評価が残る。やっぱり値引き商売を知っているセールスマンは、ワンプライスになっても生き残ると思う。
逆にワンプライスしかしらないセールスマン(昨年ネッツ店に入ったような新人)にとってみると、厳しい前途が待っているような気がする。全メーカーでワンプライスやれば条件も変わってくるだろうけど、やっぱり不人気車やモデル末期のクルマを売るには値引きという”武器”が必要不可欠。「黙っててもガンガン売れる」というクルマを作ればいいって? そりゃそうです。ただアルテッツァの売れ行きを見てると、そろそろワンプライスも終わりかな、と思う。
<CT9月号>