クルマの試乗記というと、まぁ一般的にコーナーをハイスピードで走っている写真が使われる。極端な例だとテール流してるようなカットもあったりして。ソレ、ワタシですけど……。なんでそんなことするのか? クルマって、普通に走っている限りハンドル切れば曲がるし、ブレーキ掛けりゃ止まる。よって自動車を道具として割り切るヒトなら、どのクルマ買ってもいいということ。でも雑誌買うくらい興味あれば、やっぱり深く知りたくなるでしょう。食べ物と同じく、必ず「ウマい」と「マズい」があるのだから。栄養有るだけでなく、出来ればウマいモノ食べたい。
 も一つ重要なポイントがある。そいつぁ安全性。あるメーカーの調査によれば、事故を起こす直前の状態というのは、かなりの確立でクルマをコントロール出来なくなっているそうだ。特に単独事故のバアイ、90%以上がハンドル切っても曲がらなくなり、ブレーキ踏んでも止まらくなっているとのこと。そこで皆さんを代表し、ワザとコントロールを失わせているのがワタシです。ハンドル切って曲がらなくなるまで攻めたり、コーナリング中にブレーキ踏んでバランス崩したりすると、もう鮮やかにクルマの持ち味出る。
 簡単に限界に達し、滑り出すとコントロール難しくなれば、もはや落第点。事故となる確立高いということだ。逆に限界高く、しかも限界を超えてもマイルドに滑り出し、コントロール出来るようなら、かなり多くの事故を未然に防ぐことが可能。ということでクラウンである! このクラスになると、安全性対策にお金を掛けられるようになる。実際、今回テストしたクルマのウチ、ステージアを除く3車種はスピンを防止する装置(トヨタで言えばVSC。以下、便宜上他社もこの呼び方とする)がついていた。果たしてどんなアンバイか?

<一人乗りでの限界チェック>
●クラウン トヨタ自慢のVSCは第2世代に入ったようだ。今までのVSC、作動すると同時にエンジンパワーをガックリ絞ってしまう。『おしおきモード』と呼ばれる制御で「危険な目に遭ったんだから反省しなさい」という意味を持つ。しかしクルマ好きがコーナー攻めていて作動すると、全然楽しくない。だって走る楽しさを否定しているということでしょ? 第2世代になって、余計なおせっかいを止めた。おしおきモ−ド無くし、単純に「スピンしそうになると回復させる役割」としている。この判断、大正解だったと思う。
 コーナー攻めるとメチャクチャ速い。といってもスポーティじゃないのだ。写真見ていただければ解るとおり、激しくロールしてるし、挙動も大きめ。なのに強引にコーナー曲がってしまう! 4つのタイヤのグリップを全て引き出しているような感覚。アンダーステア出ると、おそらくイン側のタイヤにブレーキ掛け、アンダー消す。テール流れそうになれば、今度はアウト側ブレーキ制御し引き戻す。いろんなコトやってるんだと思う。結果、今回持っていったクルマの中で圧倒的に速いコーナリング速度となった。
 感心したのは「速いけど安全」だということ。けっこうホンキでテストコース攻めてみたが、全然危険な挙動にならず拍子抜け。繰り返すけど、走りの写真は目一杯に速いコーナリングなのだ。これだけ限界高くて平気なら、普通の人が危険な状況に陥ることもないだろう。もちろん雨の時は一段と威力を発揮してくれる。もしかすると現時点でクラウンが世界一安全なSWかもしれない。楽しさで評価すると厳しいですがね。

●ベンツC240 ベンツ全般に言えるコトながら、案外テール流れやすい。しかもVSC付いているのだけれど、作動遅かった。というか作動ポイント深いのだ。明らかにテール流れてから「こりゃ何とかせねば!」といったタイミングで姿勢を回復する制御に入るということ。レガシィのVSCに似ていると思う。ナニがなんでも機械で制御するのでなく、出来る範囲で人間も手伝って下さい、という考え方。個人的には人間性を尊重してくれるから好きである。すでにモデル末期(次期型モデルの写真が公表された)となってしまったこともあり、さすがに古さを感じさせるようになったのは仕方ない。
●BMW318i 限界をチェックする以前にパワー不足。絶えず全開で走れてしまう。328iだったら、もっとBMWらしさが出たろう。このクルマもVSC付いているけれど、ベンツ同様作動ポイント遅い。完全にテール流れてから制御が入ってくる。普通のドライバーだと十分「危ない!」と感じるに違いない。前述の通りVSC作動したならば、本来ならスピンモードに入りつつあるということ。何らかの警告を与えるべきだ。ベンツもBMWも流れ始めてから作動するため、警告効果大。コーナリング限界そのものはベンツより高く、スポーティ。
●ステージア 基本設計が古いため、多くを期待するのは筋違い。VSCも付いていなかった。だったらアカンかとなれば、そんなこともない。サスペンションのセッティングにより、ある程度カバーすることは出来る。ステージアはFRのハンドリングで頂点を極めた日産車の一員。280馬力エンジン積んでても怖くないのは立派。ややアンダーステア気味の基本特性になっており、ウデ自慢のドライバーが攻めても突如リア滑ってコントロール困難状態になることもなさそう。ただVSC無いため、ムチャするとスピンモードに入る。自制した走りをして欲しい。

<4名乗車での限界チェック>
●クラウン 今回、あえて100q以上出る高速コーナーを選んだ。しかも! 途中にバンプあって、ほぼサスペンションはフルストロークするという厳しい条件。完成度低いクルマなら、10回に3回はスピンするか対向車線(といってもテストコースなのでクルマはこない)に飛び出すだろう。そのコーナーへクラウン4名乗車で突入。するどどうだ! サスペンションが伸びきったり縮みきったりきてるの、解る。なのにハンドルを維持してるだけで車線キッチリとキープしてくれる。もちろん、VSC効きまくり! コーションランプ点灯し警告音も鳴り響く。
 でも平気で走ってしまうアンタはなんなの? 写真も決して安定してるように見えないし、外から判断すれば最も激しい挙動出ているらしい。もちろん絶対的な限界を超えれば外側に膨らんでしまうのだろうが、とてもじゃないが、そんなスピードで入っていく気にならなかった。おそらくクラウン乗ってて単独事故起こす可能性、極めて低いと思われる。ここでもクラウンが最も速い。レガシィと違う意味で究極のハンドリングかもなぁ。

●C240 VSC付いてなければ相当シビアな状態になってしまったと思う。一つ目のギャップ通過時にリアがパキ〜ンと流れ、二つ目のギャップでさらに挙動大きくなる。それでもボディ剛性あって、ステアリングのレスポンスも適当に穏やかだから、ウデさえあれば何とか立て直せるレベル。試してみたら、とりあえずVSC作動する前にコントロール出来た。試乗車にはVSCが付いており、普通レベルのドライバーは一つ目のギャップで肝を冷やす程度で安全性は確保出来るだろう。VSC無しの初期型Cクラスじゃ厳しい。
●318i パワー低いため助走距離不足となった。挙動が乱れるほどのスピードに達しないのだ。排気量少ないエンジン積んでいるクルマは、それだけで安全性高いと思う。ユックリだとテストにならないので、タップリ助走距離付けて再テスト。Cクラスより設計が新しいためか、基本性能そのものが高い。ギャップを通過した時の挙動も落ちついており、これならドライバーのハンドル操作でリカバリー出来そう。だったら、ということで速度上げて飛び込むと、やっぱり限界高い分だけ一度テール流れると挙動シビア。これまたVSCでカバーしてくれるから安心です。
●ステージア VSC無い分、しっかりと煮詰まっている。ジツは栃木にある日産のテストコースにココとよく似た厳しい条件のコーナーがあって(ワタシら三段跳びコーナーと呼んでる)、どのクルマもコーナリング中のギャップは得意なのだ。皆さん考えているより日産の足回りに対するセッティング能力は高いと思う。VSC装備しないクルマとしちゃ特上クラスの仕上がり具合であろう。それでもVSC有った方が、より安全であること間違いない。ステージアの不満はボディ剛性。基本設計古く、質感も低くなってしまった。

 以上、ザッと分析してみたが、今回の4車。ハンドリングや危機回避能力といった点からすると優等生だと思う。特に限界高く、限界超えても強引に車線をキープしようとするクラウンのVSCたるやタマげた。面白いとか面白くないといった評価をコッチにおいておけば「こら新しい世代のクルマだね!」と強く感じるだろう。とにかくコーナーに飛び込んでハンドル切れば、何とかなるんだから。今回の3車に限らず、安全性を重視するのなら、VSC装着したモデル選んで吉。コンパクトクラスにも手軽に装着出来たらいいのに!